2022/06/03 Fri
活動
センターの直面する問題
センターの手漉き紙は、日本の伝統技術「流し漉き」で漉かれています。「流し漉き」とは、四角い道具を水槽の上で前後に揺すって紙を漉くあの技術です。皆さんも映像で一度は見たことがあるのではないでしょうか。ラオスの伝統的な「溜め漉き」とは異なり、薄くて透け感のある手漉き紙をつくることができます。
JICAの技術協力プロジェクトで派遣された和紙に詳しい専門家が 約20年前、ビエンチャン県の村人たちに「流し漉き」の技術を伝えました。
でもなぜかつてのプロジェクトはラオスに「流し漉き」を導入したのでしょうか。過去の資料によると、紙の原料となる「ポーサー」に付加価値を加えることで地域振興を図る、目的があったそうです。当時はラオスに自生している「ポーサー」は紙の原料としてタイにそのまま輸出されていたそうです。そこでセンターの手工芸品グループ「Vangvieng Posa Handicraft」は、ラオスに古くから伝わる織物の技術を生かし、手漉き紙からつくる紙糸を草木で染め、紙布(しふ)を織ることになった、と。
おかげで紙布は現在、ラオス国内でユニークな存在となっています。ラオスの首都ビエンチャンでもいくつかのお店で購入することができます。
手漉き紙の準備から完成まで様々な工程がありますが、傍から見ていると「流し漉き」はもっとも華やかな工程であるように思えます。でも生産者にとっては重労働のひとつのようです。紙を漉くために何度も何度も道具を前後に振る姿は確かに大変そうです。紙料をかき混ぜるときなどは毎回、「ふぅ…」と息を整える姿を目にします。
しかも「流し漉き」は技術的に難易度が高いです。私も「流し漉き」を体験しましたが、道具を前後に振るとき、両腕の力が均等にならないので、うまく紙をつくることができませんでした。
そして「Vangvieng Posa Handicraft」は現在、日本の伝統技術を取り入れたことで様々な問題が表面化してきています。例えば日本独自の道具を使っているため、老朽化しているにも関わらずラオス国内で購入できない。修理の訓練を受けた男性は高齢化しており、現在は適切に修理できる人が一人もいないなど。
日本からラオスに「流し漉き」が伝わって20年、センターはなかなか難しい問題に直面しています。
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