JICA海外協力隊の世界日記

コンピュータと絵本

市役所とゴミ山見学

 市役所で環境教育に取り組んでいるJICAボランティアが、市役所の見学と、市が管理しているごみ処理場の見学を企画してくれました。上の写真は、「マプト市廃棄物管理・衛生局」と書いてある看板です。ゴミ問題は世界中どこでも大きな課題ですが、モザンビークの首都マプトでは、これに取り組む専門の部が設置されているのですね。

 市役所の中に、ゴミ山の写真が飾られていました。ゴミ処理場は、地上10メートルくらいのゴミ山になっているのです。その写真を「飾っている」のはおかしい、と思われるかもしれませんが、写真にはゴミ山だけでなく、そこで元気に働くおばちゃんたちが写っているのです。彼らは再利用可能なものを集めて売ります。写真のおばちゃんは、幸せそうに笑ってるのです。そして白黒の写真は、そこがゴミ山であるにもかかわらず、いいえ、ゴミ山だからこそ、おばちゃんのたくましい笑顔のおかげで、私には、芸術作品に見えました。

 ゴミ山は、マプト市の郊外にあります。近づくと臭いがしてきます。周辺には住宅が並んでいます。このあたりに住んでいる人たちはこの臭いが日常の臭いになっているのですね。それらの住宅は、ゴミ山が高くなる前からそこにあったのだと思います。

 トラックが次々とやって来て、ゴミ山にゴミを捨てていきます。捨てられたゴミをならすブルドーザーがいます。ペットボトルや空き缶、プラスチック、生ごみ、それらがいっしょに捨てられているところから、ゴミをえり分ける人たちは、朝昼夜の3グループに分かれているらしいです。彼らの中に入って、私たちはしばらくゴミ山を歩きました。カメラを向けてもちっとも嫌な顔はしません。市役所にあった写真のように、彼らはみんな、この現実をたくましく受け入れているのだと思いました。それでも、このままでいいはずがない、という思いもふつふつと湧いて、同時に、いったい何ができるのか、という苦い虚しさを呑み込むしかないのでした。私が出したゴミも、ここに捨てられているのだと思うと複雑な思いがしました。

 いつかこのゴミ山がきれいな公園になればいいのに、とのんきに思いながら、ゴミ処理場を後にしたのですが、その数日後、朝のテレビニュースで、このゴミ山が崩れて死者が出た、と言っているのを聞いて、あの日あのゴミ山で働いていた人たちの印象的な笑顔が思い出されました。2年間という短い期間ですが、私も一応、マプト市民です。だから、この問題はひとごとじゃないのです。何もできませんが、何かできないかと考えることはできます。こんな風に感じるのは、ゴミ山の見学に行ったからです。行ってなければ、ゴミ山崩壊のニュースを見ても、これほどショックを受けなかったでしょう。

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