JICA海外協力隊の世界日記

エクアドルBOSAI日記

教員向け研修開始(2019年7月末~)

¡Hola! ¿Cómo está? (オラ、コモエスタ?)こんにちは。皆さんお元気ですか

8月に入ってすっかり太陽が出なくなった任地サリーナスです。寒い日は普段のシーツだけの睡眠から薄手の毛布と最近は寝袋をかぶっている日もあります。気温で言うと13度(海風が入ると体感で10度ぐらい)なので、シエラ(山岳地方)よりは温かいです。

今日は嬉しいことがあったので、久々に日記を書いています。

これまでは任地の教育機関(47校)で子どもたちと保護者向けの防災研修を主に行ってきましたが、7月の終わりからは各学校での教員向け研修を始めました。

というのも、これまで所属先(市役所危機管理部)で同僚が計4人いなくなりました。これは私のいる部署だけでなく市役所全体の傾向のようで、今年3月に行われた統一地方選挙の影響で人事配置の変更が断続的に続いています。そのため、これまで私が行ってきた防災研修を引き継ぐには市役所だけでなく、もっと安定的なカウンターパートを作る必要があると考えました。

そして、選挙で仕事が殆どなかった数か月に考えて出した答えが、「教員向け研修」でした。先生に向けて私が持っている防災のノウハウを伝えておけば、少なくとも子どもたちには伝えてもらえると考えたのです。

(写真1枚目:教員研修での一コマ。毎回同僚も一緒に来てくれます)

今日行った学校は、4歳から12歳頃までの日本でいう小学生の年齢が中心の小規模校です。観光地でもある海岸からはわずか100メートルほどの距離で、去年ボランティアとして赴任した頃から校長先生が危機感を持って防災と向き合っていたのが印象的でした。

去年から子ども向け防災教育教材ぼうさいダック(スペイン語版「パトぼうさい」)を使った教員向け・子ども向け研修を行い、今年に入ってからは保護者向け研修を行いました。主に地震・津波に対する防災対策となりますが、海から非常に近い場所に学校があるので、サリーナスから最も近い海溝プレートを震源とする大地震が発生した場合、津波予想到達時間わずか16分で避難できる場所は、付近のビルしかありません。これを「垂直避難」と呼びますが、この学校では避難訓練時だけでなく、通常の子どもたちとのお散歩の際にも目的を告げずに避難ビルとなっている高級ホテルへ向けて歩く練習をしているそうです。

教員研修では、子ども向け防災教育教材「パトぼうさい」を先生方が子どもたちに教えてもらえるようにレクチャーします。「暴風雨」の時はまわりの様子を観察して外に出るか判断してもらうためウサギになって考えよう、「洪水」の時は外出するとき水の中が見えなくて危険なので長靴を履いてゆっくりとカエルのように進んでいこうなど、その他「土砂崩れ」、「火事」、「地震」、「津波」といった災害と、その時に取るべき初動動作を本教材では学ぶことができます。

(写真2枚目:DIGのグループワークのあと、各グループの代表より作成した避難路についての発表)

その他、津波避難計画策定のためにDIGDisaster Imagination Game:災害図上訓練)という手法を使い、大地震発生時、学校から避難指定場所へ行くまでの避難路の安全性や避難にかかる時間などを予想して議論するグループワークとなっています。

今回の学校は、先に話したような背景から先生方の津波防災に対する意識が非常に高く、学校の正面にあるマンションがセキュリティ上、非常口をすぐに開けてくれなかった場合を想定して、普段から避難訓練に積極的に参加している200メートル先にある高級ホテルへの避難を想定しているそうです。また、そこへの行き方についても、小さな子どもたちとの緊急避難を実現するため、混乱した観光客や多くの車による事故の危険性の回避を検討すると、一旦海岸近くの舗装された歩道へ出てホテルへ向かうという案も出ました。

このDIGには正解はなく、結果も一通りではありません。しかし、皆さんがこのグループワークをきっかけにどのように避難することがより現実的で、発災時パニックになる中で命を守る選択ができるかという指標ともなります。

口酸っぱく市民へ避難の必要性を語っている毎日ですが、未だサリーナス市内では平和な空気が漂っていて、地震や津波が来た場合の想定が出来ている学校の方が少ないです。

今回は理想とも言うべき取組みと姿勢を見せてくれた学校の先生方に感動すら感じてしまい、嬉しくなって日記を書いてしまいました。教員研修はまだ始まったばかりですが、少しずつ頑張っていきます。

(写真3枚目:今日訪問した学校が避難する予定のルートとホテル、左手は海岸)

¡Hasta Luego! (アスタ・ルエゴ)それではまた。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ