JICA海外協力隊の世界日記

マレーシア日記・ザ・介護士ともあん

POWER OF CREATION

こんにちは!

前回の記事、「老师」 では VALLEY OF HOPE のコミュニティで暮らす私の老师(中国語で「先生」)方をご紹介しました。

今回は、その老师方の創作意欲と、それを伝えるボランティアガイドさんの情熱をお届けしますね。
見聞きしたことを反芻し、書くことを思い巡らせながら、このコミュニティに関わる多くの人びとが大切にしてきた「HOPE(希望)」に私も動かされています。

まず、冒頭の写真からご紹介を。

男性は老师の一人で、写真に写っている模型をたったお一人で作られました。
これは1930年から都市計画に基づいて整備された、かつてのハンセン病患者の皆さんが暮らしていた街。(現在は遺産として保存されています)
宿舎の一軒一軒、理容店や喫茶店など、コミュニティの環境を構成する一つ一つが緻密に作られています。

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芸術性もさることながら、冒頭の写真のように、作者ご自身が、作品を示しながら、かつての街の様子を訪れた人びとに語ることができるのも素晴らしいと私は思います。

ご自身の育った場所が、時代の移り変わりで風化していくことがないよう、語り継いでいくことを大切にされているのかもしれません。

上の写真の木は、和名で「大風子(だいふうし)」


この木の種子から得られる大風子油は、ハンセン病の治療に使われていたそうです。
( 詳しくはコチラを→ 大風子油 ハンセン病治療における日本の歴史も分かります )

有効性のある飲み薬が開発されるまでは、大風子の木が治療の頼りでした。
子どもたちは注射の痛さに耐えながら、病気が回復する希望を持ち続けたそうです。

そして、有効なお薬が開発されてからは、大風子の木は、希望のシンボルになりました。

「指があれば誰でも描ける」
とある美術の先生が、コミュニティの皆さんに描くことを勧めたそうです。
でも、中には病気のために手の指先を失って、「描けない」と言う人がいました。

そこで、希望のシンボル、大風子の木をペンとして使うことで、描く気持ちをかき立て、たとえ指がなくても、今ある機能を活かして作品を生み出すことに結びつきました。

IMG-20230702-WA0109.jpg

右の作品では、たくさんの木の棒が吊り下がっている球体に向かっています。
木の棒は、大風子の木で作られたペン。球体は、大風子の種子。
この作品から、希望に向かって上昇する力強さが感じられるかもしれません。



「POWER OF DRAWING」

写真の水彩画のうち、真ん中にある、二人の女の人とお花柄のお茶碗が描かれた絵が見えます。

右の女の子は、この絵の作者。左はお母さん。
お茶碗にいっぱいの温かいお粥は、お金が少ない生活の中で、お母さんがお米をたくさん使って炊いてくれた子どもへの愛情のしるし。

子どもの頃、ハンセン病のためにお母さんと離れ離れになってしまいました。
お母さんに会えないまま、大人になり、年老いてもお母さんへの寂しさは癒やされませんでした。
ですので、初期の作品では、お母さんとご自身が離して描かれ、寂しさが現れていたそうです。

何枚か描き続けるうちに、お母さんと引き離された寂しさは解放され、お母さんが与えてくれた愛情が温かい思い出となって表されました。

ボランティアガイドさんは、「POWER OF DRAWING」と作品一つ一つの思いを代弁します。
解説によって、作品そのものがもつ表現力に背景が添えられるという経験を経て、ボランティアガイドの皆さんもコミュニティを構成する重要な一員だと私は感じました。

VALLEY OF HOPEで暮らす皆さんの伴走者、ボランティアの皆さんの情熱に出会えるのも、このコミュニティの大きな魅力ではないかと思います。

それではまた。

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