JICA海外協力隊の世界日記

音の風景 in Sri Lanka

♪8 教員養成校での授業

アーユボーワン! こんにちは。スリランカ音楽隊員の久保治代です。

私の活動先の一つである国立マハラガマ教員養成校ではどんな授業をしているのか、今回はそのうちのいくつかをご紹介します。

ピアノの個人レッスン

 音楽室には日本から送られた電子ピアノが30台ほどと生のピアノが2台あります。他にも生ピアノが講堂などにあります。授業時間内では一人10分程度の時間しかありませんが、「今日は指のトレーニングを」「今日は楽曲を中心に」というように目的を分けて行っています。自分の番が来るまではヘッドフォンを使って練習します。教員試験には様々なスケール(音階)や伴奏法、弾き歌いにカデンツ(終止法)などたくさんの試験が含まれているので、全部を網羅するには時間が足りませんが、どういう練習をしたらいいかを伝えるために、少しずつ取り組んでいます。ただ、スリランカでは西洋音楽の先生は英語も担当することが多いので、両方の勉強しなくてはならず、学生たちにとって楽器の練習時間が取れないのが悩みのようです。

リコーダーとソルフェージュ

 リコーダーがスリランカの学校に導入されたのはだいぶ前ですが、日本ほど長くはないので、教員の演奏力をもっと高める必要はあると感じています。今までも音楽隊員さんたちが普及に力を入れてくださったおかげで、特に若い世代はリコーダーに慣れ親しんでいますが、まだまだ上達できる可能性があると思っています。

 ソルフェージュは歌うことによって音感を身につけるのが目的で、「コールユンブンゲン」という教材を使って週1回行っています。その他、楽曲を紹介していろんな愛唱歌を歌えるようにレパートリーを広げています。音の感覚は幼少期に身につけると早いのですが、スリランカではそのような学習の機会があまりないようで、これから、という人もいて、これもまだ伸びしろがたくさんあると思っています。

 オンラインの時は、日本の大学が提供している練習ソフトを使って、リスニング・ディクテーション(聞き取り、書き取り)の練習しています。

 実技に関しては、演奏家を目指しているのではないので高度な技術を持っているとは言えませんが、音楽理論については日本よりも難しいことを学習しているので、理論と繋げて実技を教えると、理解しやすいようです。

音楽科指導法

 普段は私が日本で行ってきた授業の紹介をしていますが、この間は課題を出して、一人一つ10分程度の音楽ゲームを考えてくるように言いました。学生たちはあまり積極的に意見を言ったりしない印象でしたが、やはり教員を目指しているだけあって、先生になってデモンストレーションができるということで、びっくりするくらい張り切って準備していました!

 この日は私は後ろで見ているだけで、他の学生に生徒になってもらって一人ずつゲームをしてもらいました。おそらく自分で考えたというよりは、過去に教えてもらったやり方を少しアレンジして見せてくれたのだと思いますが、たとえば...

・「あなたは○○を歌います」「あなたは○○について説明します」という課題を書いた紙を人数分用意して、それをランダムに配り、受け取った課題をみんなの前で披露するというゲーム(できない!と思ったら他の人とカードを交換してもいい)

・カードを並び替えてリズムを作るゲーム

・リコーダーの運指カードを使って演奏するゲーム

・歌詞に合わせて楽器を演奏する動作を取り入れた歌

・音楽に関する穴埋め問題クイズ

などなど、先生役も生徒役もみんななりきって楽しく行っていました。それぞれの学生が書いたメモにはびっしりとセリフが書かれていて、一生懸命準備したということがわかりました。こんな風に、自分たちでアイデアを共有して、長い教員生活の中で継続してお互いを高め合ってくれたらなと思っています。

「実際はこんなに生徒が協力的とは限らないからね。」なんて辛口のコメントも添えながら、「作った教材は現場でも使えるから、大切に保管しておいてね。」といってこの日は終わりました。

インターネットがこれだけ発達して、しかも英語の教材は世界中から集められるというこの状況で、きっと学生たちは私よりもずっとたくさんのアイデアを使っていい授業をしてくれることでしょう。

このほかにも不定期で歌唱法や伴奏法、鑑賞曲の分析など様々な内容で授業を行っています。

以上、教員養成校での授業の一コマでした。

今回もお読みいただきありがとうございました。ストゥーティ!

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