JICA海外協力隊の世界日記

音の風景 in Sri Lanka

♪16 思い出のコラージュ⑤スリランカの音楽教育

アーユボーワン!こんにちは。スリランカ音楽隊員だった久保治代です。

今日はスリランカのティーチャーズ・デイということで、学生たちから感謝のメッセージを頂きました。こんな風に任期を終えても送ってもらえて嬉しいです。

スリランカの学校教育ではセカンダリースクール(日本の小学校5年生から高校1年生に当たる学年)で音楽教育が行われています。学校以外ではコロンボ市内に町の音楽教室など個人レッスンを提供している場所がいくつかあり、そちらでレッスンを受けいている子どもたちもいます。楽譜などもそういった教室で購入できることがあります。(楽譜専門店も1軒あります)。

日本では幼児教育に始まり、小中学校では必修科目、高等学校では選択科目として音楽を学ぶ機会がありますが、スリランカの場合は情操教育科目のうちの一つで選択制です。しかも、音楽は東洋音楽(オリエンタル・ミュージック)と西洋音楽(ウェスタン・ミュージック)に分かれており、全く別のカリキュラムで進めています。割合としては東洋音楽を選ぶ生徒が多く、西洋音楽の授業は基本英語で行われています。理由は分かりませんが、西洋音楽科ができてから歴史が浅いということも原因の一つに挙げられると思います。

西洋音楽科の教員は英語教員も兼ねているため、両方の勉強が必要です。それと、英語が得意だけれども音楽はそれほどやってきていないという人や、その逆もあるので、個人レッスンをするときは、音楽実技に関しては経験の差を教員養成校でできるだけ小さくしようと考えて、課題を渡していました。

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カウンターパートとも常々話していましたが、スリランカでは理論中心の音楽の授業が多く、なかなか演奏や歌唱といった実技の時間が取れていません。極端な話に聞こえますが、実際1時間の授業で全く「音」が聞こえない音楽の授業を何度も見ました。そのたびに「もっと歌を」「もっと演奏を」とアドバイスしてきました。

スリランカでは入試制度の影響が大きく、筆記試験のための勉強に重点が置かれているのが、理論重視の原因の一つとして考えられます。

そういった課題意識をもって、実技に力を入れた指導をということで、音楽隊員が派遣されてきたのだと思いますが、徐々にその積み重ねが新しい世代を中心に、いい方向に変わってきていると感じました。実際に、今までの隊員さんたちが指導されたことを継続して実践されている先生方に、大勢出会い嬉しく思いました。

学校の音楽の授業だけを見ると、このように理論重視の傾向が見られますが、課外授業でピアノやヴァイオリンなど楽器の個人レッスンがあったり、学校行事でマーチングバンドなどが活躍できる機会があり、そういった場面で実技の時間を補っているようです。無料で楽器のレッスンを受けられるというのは、とてもいい制度だと思いました。

学校の試験とは別に、イギリスのトリニティ音楽試験や王立音楽検定ABRSMといった音楽のグレード試験の受験が盛んで、それらを受けるために練習に励んでいる子どもたちも大勢います。「試験のための音楽」と聴くと、あまりいい印象ではありませんが、音楽に触れるきっかけになるという点では、いいことではないかと思いました。

スリランカでは音楽科があるのはコロンボにある芸術大学のみで、高いレベルまで到達できる教育機関が殆どありません。また、聞くところによると、一度大学で勉強したら、その専門分野以外の職業に就くのはスリランカでは難しいそうです。そういったことも、音楽を専門に選ぶことに二の足を踏む人が多い原因の一つに挙げられるのかもしれませんね。

東洋音楽と西洋音楽という分け方ですが、スリランカでいう東洋音楽とは主にインドとその周辺国の音楽を指すらしく、日本や韓国、中国といった国の音楽は含まれていません。東洋と西洋とに分かれていますが、例えばヴァイオリンは東洋音楽でも使われており、弦楽器経験者の割合は鍵盤楽器のそれよりも高いです。

こちらの写真は学校視察をした際撮影したもので、隣の東洋音楽の授業で生徒たちが練習している様子です。楽器の構え方や奏法は西洋音楽のときとは多少違います。例えば左利きは左で弓を持つそうで、初めて聞いた時には驚きました。西洋のオーケストラではなかなか見られない光景です。(オーケストラでは右利きと左利きがいると、ぶつかるため)。

参考までにスリランカに持って行った音楽理論の本をご紹介します。写真は載せられませんが、一つ目はピンクの表紙で「The AB Guide to Music Theory(ABRSM出版)です。これはトンガの高等専門学校でも使用されていました。イギリス英語で学習するので、音楽隊員として行かれる場合はイギリスの出版社の方がいいと思います。例えば「♪」はアメリカ式では「eighth note」ですが、イギリス式では「quaver」と全然違う名前で呼びます。

もう一つは、緑色の表紙で「「音大生・音楽家のための 英語でステップアップ」(スタイルノート出版)です。こちらはアメリカ英語との言い回しの違いも掲載されていて役に立ちました。

今回はちょっと専門的なお話でした。

スリランカの知人や学生から連絡をもらうと、懐かしい思い出がよみがえります。本当にインターネットは物理的距離を縮めてくれる嬉しいツールですね。

前回に引き続き、今度は職場近くでスリランカ料理の店を発見しました。そこにはまだ行ってませんが、探せば他にもあるかもしれませんね。それと、大阪の中心にある心斎橋商店街から本町にかけて歩くと、途中アジアン雑貨のお店が右手にありますが、お店の人に聞くと、インドのものはあるけれどスリランカ製品はないそうです。残念!

今回もお読みいただきありがとうございました。ストゥーティ!

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