JICA海外協力隊の世界日記

音の風景 in Sri Lanka

♪17 思い出のコラージュ⑥東洋音楽と西洋音楽

アーユボーワン!スリランカ音楽隊員だった久保治代です。

前回はスリランカの音楽教育についてご紹介しましたが、今回はその続きでスリランカでの東洋音楽と西洋音楽の関係についてお伝えしたいと思います。

スリランカに赴任する前、「西洋音楽教育の推進」ということで一番懸念していたのは、スリランカでは伝統音楽が軽視される傾向にあるのかどうかということでした。例えば日本だと、一時期学校の音楽の教科書も西洋音楽に偏り、自国の音楽についての記述が殆どなくなった時期がありました。私が物心ついたころには既にピアノなど西洋楽器がスタンダードで、琴など昔はポピュラーだった楽器を習う人は少数派になっていました。しかし20年ほど前から日本の音楽がまた多く取り上げられるようになり、現在に至っています。

そのような経験から、海外の音楽教育に携わるときは、その国の人々に自国の音楽を大切にしながら西洋音楽を取り入れていってほしいなという思いがありました。

けれども、スリランカに来てそれは杞憂だと分かりました。むしろ、東洋音楽が主流で、それは西洋音楽科のモジュール(教科書のようなもの)に東洋楽器の記述があることからも分かります。

一方、東洋音楽ではヴァイオリンなど西洋からもたらされた楽器が、伝統楽器の一つとして奏法を独自のやり方に改良して使われていたりします。そしてそれがまた世界に「東洋音楽」として知られ演奏されたりして、文化は双方向性なのだということに気づきます。

それでは、トンガもそうですが、なぜスリランカでは西洋音楽教育を進めようとしているのかという疑問が浮かびます。カウンターパートには直接的な質問はしませんでしたが、トンガの場合は国に一つもオーケストラがなかったので、新たに創ったオーケストラの技術向上を目指していました。スリランカでは学校教育に取り入れたものの、東洋音楽教育に比べて歴史が浅いので、指導者が少ないことなどの課題があり、これから西洋音楽教育をもっと進めていきたいという思いがあったからではと思います。

決定的な理由は推測でしかありませんが、グローバル化の波が音楽界にも押し寄せているからではないかと私は捉えています。

東洋楽器4.jpg

ゴールという町の学校を訪れた時、隣の教室で東洋音楽の実技のグループレッスンが行われていました。

東洋音楽では基本このように床に座り、演奏します。編成は色々ですが、オーケストラのように同じ楽器を2台以上使う場面はあまり見たことがないです。

ヴァイオリンの構え方は独特で、かなり低い位置まで下げて、角度をつけて体の前の方で構えます。西洋音楽では肩に乗せて大体床と水平に構えるのでだいぶ違いますね。左の先生が演奏されているのはタブラという打楽器で、伴奏に用います。それから右の生徒が演奏しているのはハルモニウムと呼び、アコーディオンのように風を送って鍵盤を弾く「手漕ぎオルガン」のようなメロディー楽器です。また、前回の日記でもご紹介したように、左利きの人は左手で弓を持ち演奏します。チェロなど他の弦楽器も同じようです。ですから、そのように構えるイメージで青年オーケストラに入ってきた初心者に教えるときは、構え方が違うということから指導をしました。(個人で楽しむのには左利きでも構いませんが、オーケストラではぶつかるので)。

専門的なお話になりますが、日本を含め西洋音楽を演奏する楽器は442ヘルツに合わせる傾向にあります。しかし、スリランカではオーケストラも学校のピアノも大体440ヘルツで合わせていました。電子楽器も大体440ヘルツが標準なのですが、世界的傾向として特にクラシック界は高めに設定しているようです。ですからスリランカの学校を訪れてピアノの音を調べたとき、どこのピアノもやや低いのでおかしいなあと思っていたのですが、440ヘルツと聞いて合点がいきました。わずかな違いですが、442ヘルツに比べてやや暗めな印象があるとも言われています。

スリランカの伝統音楽はインドの音楽の影響を受けているので、日本に帰ってからはその研究をしています。マハラガマ教員養成校で教えていた時は、東洋音楽や東洋舞踊の先生もいらっしゃって、教員控室でお昼休みなど誰かが歌いだしたり、踊りだしたり手拍子したりと楽しい雰囲気でした。その時、「ああ、伝統音楽はここの人にとってとても身近なものなのだなあ。」ということを感じました。

一方で国立青年オーケストラやそのほかのオーケストラの活動も盛んで、これからうまくバランスを保ちながら、いろんなジャンルの音楽がこの国でも愛されるといいなと思いました。

日本は朝晩冷えるようになりました。ずっとスリランカで夏を経験していたので、久しぶりの寒さで体がびっくりしているようです!

今回もお読みくださりありがとうございました。ストゥーティ!

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