JICA海外協力隊の世界日記

タラワの宝

キリバスの水問題って?

今回のトピックは、キリバスでの水を取り巻く状況についてです。四方を海に囲まれた、サンゴ礁由来の島が多いキリバス。海抜が低く、日本のように、山や川というものがありません。ここで暮らす人たちは、どのように水を得ているのでしょうか。

答えの一つは、雨水です。上の写真のように、大きなタンクに降ってくる雨水を溜めておき、それを利用しています。この水を煮炊きに使ったり、飲み水としたりしています。また、大雨が降ると、建物の軒下に人がやってきて、屋根から滴る水で直接シャワーを浴びています。キリバスにとって雨水は、まさに恵みの雨であり、生活に欠かせない存在です。しかし、雨が降らない時期や、タンクを持っていない家庭は一体どうしているのでしょうか。

その答えは、井戸水です。キリバスの島々は、サンゴでできた島の中でも「環礁」という種類の地形で、上空から見るとドーナツのような形をしています。このような島では、地下に淡水レンズという真水を蓄えた層を持つことがあります。これは、地面を通してしみ込んだ雨水が、重さの違いによって海水の表面に浮かぶためです。

上の写真は、井戸水の汚染について啓発する環境省のポスターです。首都を有するここ南タラワ島では、人口密度が高く、人間生活によって環境に大きな負荷がかかってしまっているといわれています。井戸水の汚染は、その代表的な問題です。

ポスターでは、井戸水に悪影響を及ぼす行動の例が描かれており、ごみの放置や農薬の使用、不適切な場所にあるトイレなどが挙げられています。ポスター下部には、「これらの行動の結果が、あなたのポットの中に入ってしまいますよ」と書いてあります。

また、キリバスでの水を取り巻く状況は、天候の影響を受けるリスクが高いと言われています。もし干ばつが続くようになれば、雨水を利用することはできません。加えて、海水に浮かぶ淡水レンズの層も徐々に薄くなっていき、井戸水に海水が混ざってしまうことになります。実際に同僚の話では、雨が長い間降らないときに井戸の水がしょっぱくなってしまったことがあるということでした。

環境教育という職種で派遣されたボランティアとして、キリバスでの水問題を始めとした環境問題を無視して活動することはできません。やるべきことは山積みですが、いま目の前にある課題に対して前向きに、そして地道に取り組んでいるキリバスの人たちの姿に学びながら、一緒に活動を進めています。そして、残り約5か月の任期が終わって帰国した後も、こうしてご縁をもらったキリバスという国に対して、自分にできることを探し続けたいと思っています。

(おわり)

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