2020/12/15 Tue
文化 活動
パラグアイのチーズ
こんにちは!カルメン・デル・パラナ市役所配属の向井歩です。
突然の一時帰国から8か月以上が経過し、 パラグアイにいた時間より、
日本に帰国してからの時間の方が長くなってしまいました。
わたしたち2019年度1次隊は2019年8月に日本を出発し、
新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年の4月に一時帰国しました。
パラグアイでは春の初めから夏、秋を過ごし、帰国したとき日本は春。
たった7か月しか日本を離れていませんでしたが、感覚的には2年ぶりの冬です。
前回の森松隊員の記事にも出てきたテレレ(氷水で淹れるマテ茶)は、
早々にお湯で淹れるマテに切り替わりました。
寒い時に食べる温かい物はホッとしますよね。
わたしは寒くなると、とろけるチーズがたっぷりかかったアツアツのオーブン料理が食べたくなります。
というわけで、今回はパラグアイのチーズについてお話します。
チーズといえばフランスやイタリアなど、ヨーロッパの国々が有名ですね。
遥か昔、スペインが南米諸国を植民地支配していた時代がありました。
南米のほとんどの国の公用語がスペイン語なのはそのためです。
その時にきっとチーズも伝えられたのでしょう。
南米諸国でもチーズは日常的に使われており、もちろんパラグアイでも料理にチーズは欠かせません。
パラグアイを代表するソパ・パラグアジャやボリボリ、チパなどの料理にも、チーズが入っています。
ソパ・パラグアジャ(トウモロコシ粉で作るグラタン味のカステラのようなもの)
ボリボリ(トウモロコシ粉の団子が入ったスープ)
チパ(キャッサバ粉で作ったチーズパン)
パラグアイでチーズといえば、queso paraguayo(ケソ・パラグアジョ/パラグアイチーズ)を指し、
街の商店や市場、または知り合いの酪農家から直接買うものです。
都市部のスーパーマーケットに行けば
国内の大手乳業メーカーや輸入品のモッツァレラチーズなども購入することができますが、
あまり一般的ではないようです。
スーパーマーケットで購入したアルゼンチン産のモッツァレラ
わたしたちのプロジェクトの対象酪農家のほとんどが、
搾った生乳から作ったチーズを販売して生計を立てています。
農家さんからいただいたパラグアイチーズ
ではここで、パラグアイチーズの作り方をご紹介します。
①生乳をお鍋に入れて、40度くらいまで加熱する
奥にあるのが普通のサイズの鍋。これを毎日上げ下げする農家さんは本当に力持ちです。
温度計は使用せず、手で触った感覚で進めていきます。
余談ですが、パラグアイでは料理用の温度計
(ガラスの中に赤い液体が入っていて、1度きざみで測れる温度計)の
需要が全くないようで、地元はもちろん、首都でさえ見つけることができませんでした。
結局、日系移住地にある日本の100円均一ショップ売り場で見つけることができました。
②凝乳酵素を添加する
凝乳酵素(レンネット)
液体の凝乳酵素(レンネット)は、街の商店で手に入ります(日本円で約300円)。
使用量は、鍋一杯につきキャップ一杯。
本物の凝乳酵素を使用しているこだわりの酪農家もいます。
食肉処理場で子牛の胃袋を調達し、天日干ししたものを少しずつ切って使うそうです。
cuajo natural (cuajo=レンネット)と呼ばれ、一般の消費者にもその価値は認知されており、
ほかのチーズよりもすこし高値で売れるそうです。
上の写真の、農家さんからいただいたチーズも、cuajo natural製のチーズです。
③分離したら型に入れる
時間を測るでもなく、朝食を食べ終わった頃にちょうどいい感じになっている、という塩梅です。
型は木製またはプラスチック製で、形も丸や四角など酪農家によりさまざまです。
分離した状態と、それをざるで濾して型に入れる様子
④重石をして一晩から丸一日水分を抜く
⑤型から取り出し、常温で熟成
酪農家により、型から外した後の熟成の期間はまちまちです。
冷凍保存して、チーズの価格が上がるのを待ってまとめて売る人もいます。
さて、読者の皆様は、
作り方よりも味のほうが気になるのではないでしょうか。
このパラグアイチーズ、加熱すると柔らかくなりますが、
日本でよく使われるピザ用チーズのように糸を引くものではありません。
しかし、料理に入れるとコクが出て、味がまろやかになります。
お肉からのダシと塩だけの味付けが多いパラグアイ料理には、深みを出すのにピッタリの食材です。
出来立てのチーズは豆腐のようにさっぱりしています。
それが2~3日経ってくると、乾燥と熟成が進み、
表面が黄色くなって独特のにおいや味が感じられるようになります。
なんと申し上げていいのかわかりませんが「汗」のような感じのにおいです(※個人の感想です)。
日を追うごとに熟成が進み、酸味が強くなっていく印象です。
ただ、加熱することで酸味やにおいは緩和されるので、料理に使うと何ら気になりません。
写真の左から右にかけてだんだんチーズの黄みが増しているのがわかります
パラグアイチーズは、日本で私たちが普段食べ慣れているチーズとは少し違う味です。
それもそのはず、気候も、ウシの品種も、食べさせる飼料も、日本とパラグアイでは異なるので
原料となる牛乳の風味が違ってくるのです。
その地域の気候、植生、人や動物の暮らし…乳製品にはそれら全部がぎゅっと詰まっています。
さて、そんなパラグアイの特色が詰まったパラグアイチーズは、
現地ではおよそ1kg300円で手に入ります。
日本では、酪農家直営のチーズ工房で1kg5000~8000円ほどが相場です。
10倍以上も価格が違いますね。
その話をしたパラグアイの酪農家さんが、目を輝かせて
「ぜひともうちのチーズを日本に輸出して高く売ろう!」
と意気込んでいました。
日本でパラグアイチーズが手に入る日がいつか来るかもしれません。楽しみですね!
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