2025/04/26 Sat
イベント 活動
3回目のイベント


私の配属先は女性省の女性局なので、普段はフィジーの女性たちにジェンダー平等やDVについて話をし、経済的地位向上、収入向上のためのヒントを伝えに行くのですが、男性や子どもたちの理解がなければ実現するのは難しい問題です。そんなことを配属先の同僚と語り合っている中から生まれたのが、包括的にコミュニティ全体を湧活するイベント'Entire Community Empowerment Program'です。
2024年に2回開催し、女性省内でも一定の評価を得ました。そして今回3回目を実施。
前回までは1つの村を対象にしていましたが、今回は同僚の提案で1つの地区を対象に実施することになりました。この地区には4つの村があります。政府機関から地区全体に働きかける場合、まず地方自治を司る人々に話を通すという手順があります。
私たちはその手順に従ってMata ni Tikina、Roko tuiと呼ばれる役職の方たちにプレゼンを行い、準備を進めてきました。そのプレゼンを行った時はどなたも、「いいプログラムですね」、「村の人たちに必要です」、「村の人たちに知らせます」と話し、次のステップに進んでいける様子でした。フィジー語での会話は私には理解できないため、同僚に感触を聞くと、同僚も、うまくいきそうだと言っていたので徐々にステップを踏んでいるものだと思っていました。
ところが、残念なことにこれらの役職の皆さんが何も動きを見せず、結果的にイベント開催土壇場で村の人たちに知らせることになってしまいました。
これがもし日本であれば、延期、中止になることでしょう。私もここフィジーに来たばかりの頃であれば、それを提案したかもしれません。しかし、今は以前よりもフィジーの様子を知っています。彼らが土壇場で決まったことでもとりあえず実施するということを。そして、面白いことに、まあまあ何とか形にはなるのです(笑)
それに、失敗から学ぶことはたくさんあります。だから私も、まあまあで終わるだろうという予測はあったものの、私自身も乗りかかった船、最後まで出来ることを精一杯やることにしました。そして一緒に反省し次に繋げる方法を模索していこうと心に決めました。


任期満了が迫ってきていることもあり、同イベントに私が携わることができるのは今回が最後。そのため引き継ぎとして出来るだけ多くのことを配属先の同僚たちに任せ、私は協力してくれる隊員仲間に主にオンラインミーティングで進捗状況を共有したり、どのように推敲するかを話し合ったり、フィードバックの準備、自分が担当するプログラムの準備を中心に行いました。
前回までだと、準備の一環として隊員の皆さんと現地の事前視察を行うのも早めに行えたのですが、様々な手順、ルールがあったため、今回の視察はなんとイベント開催日の2日前!一生懸命、村の人たちのためにと協力してくれている皆さんへの申し訳なさとこれが現実、という複雑な気持ちでした。
それでも、視察の際に村を案内してくれたTuraga ni Koroと呼ばれる村と外部を繋ぐ役割の方がとても親切で、キリスト教の信仰心が強いフィジーの人にとって大切なイースターの休暇期間中にも関わらず、私たちの準備を手伝い、村のことを丁寧に伝えてくださったことは救いでした。


そして迎えた当日。
私たちはイベント開始1時間前に現地入りし、準備に取り掛かりました。会場に向かって村の中を歩きながら、大きな声で住民に挨拶しつつ、イベントの案内をしました。このイベントのことを知らない住民がいることは明らかでした。
予定より30分遅れでイベント開始。参加者はまばらでしたが、JICAフィジー事務所の所長が開会の辞を述べてくださり、集合写真を撮影するころ、気づけば参加者の数は70人近くになっていました。
女性局として、私たちが一番伝えたいジェンダー平等、女性の地位向上を同僚が話しました。特に、男性、子どもたちに知ってもらうのが目的です。
そして今回のキャッチフレーズは'1 Family 1 Team'。私たち隊員のプログラムでは家族単位で座ってもらい、家族単位で考えてもらう、実践してもらう時間をとりました。
家族でヨガのペアワークを行ってもらったり、家庭でできるコンポストづくりをしてもらったりしました。
防災や貯蓄、環境問題、栄養と健康的な食事 ー 子どもたちにとっては少し難しいテーマでもあったかもしれませんが、協力してくれた隊員たちの工夫により、どのプログラムでも老若男女問わず村の人たちに興味を持って参加してもらうことができました。
最後は男女混合で行うスポーツ、Baseball5。子どもたちが最もイキイキと楽しんだ時間です。大人の人たちにも参加してもらえたら良かったのですが、少なくとも、子どもたちがゲームを楽しむ様子を見守ってくれていたことが微笑ましかったです。
女性局としての目標では4つの村で200名の参加者を想定していました。
結果は2つの村から112名が参加、フィードバックの調査結果によると回答数の50%が大人、残りの50%が20歳未満の子どもでした。そして男女比もほぼ同数。
フィードバックのコメントからは参加者のほとんどが高評価で次回の開催を希望してくれていました。そして男性や男児がジェンダー平等の話にも関心を持ってくれたことがわかり、色々と反省点はあるものの、実施した価値はあったと感じています。
帰りの車の中で、1回目の開催から一緒に活動してきた同僚が自ら、「このプログラムは今後も続けていく」と宣言しました。フィジーではビジネスにしても何でも、ちょっとうまくいかないとすぐに諦めてしまう、やめてしまう傾向をこれまでにも色んなところで見てきました。そんな中でのこの同僚の言葉に、引き継ぎできたな、と少しほっとしました。
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