2024/02/22 Thu
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懐が深いナイラ村の人々
フィジーを訪れていた日本の学生さんたちにJICAの取り組みの紹介の一部として、私の配属先と活動している村の一つを学生さんたちと一緒に訪れました。
彼らは日本の外務省が進める対日理解促進交流プログラムJENESYS(Japan East-Asia Exchange for Students and Youths)の一環でフィジーを訪れていました。ありがたいことに、この世界日記を通して私の活動に興味を持ってもらえたようです。
オファーがあったのは約2ヶ月前、私が配属先に着任して4ヶ月が経ったころ。すでに数カ所の村を活動を通して訪れており、フィジーの人々の生活や伝統にも馴染んできたころでした。日本の若い人たちにフィジーのことを少しでも知ってもらえるならと引き受ける事にしました。
私が信頼を置いている同僚には即相談。しかし、時は12月中旬。キリスト教徒が多いフィジーの人々はすでにクリスマスに向けてお祭り気分。しかもそのお祭りモードは子どもの新学期が始まる前の1月末まで続きます。元々ゆったりと時間が流れているフィジーではお祭りモードになるとさらに物事が進まなくなります。これは早くても1月中旬にならないとエンジンがかけられないなと覚悟を決めて、進められそうなところから少しずつ根回しすることに。
同僚も少しずつ、少しずつ、様子を見ながら村の女性グループに連絡を取ってくれて、承諾してもらいました。
2月に入り、所属する中央地域事務所主催のEXPOを3月初旬に開催することが急に決まり、急に慌ただしくなる中、大変な問題が発生。
今回の場合、女性局として受け入れて村に案内するため、フィジーの伝統的な村に外部からの客人を通すためには村の一部の人の許可ではなく、その村を管轄している地域の長とその地域を管理している部署の承諾が必要ということが2月になって判明。急いで関係各所に連絡を取ることに。それでも間に合わないかもしれないと危惧した同僚が直接足を運んで挨拶をしてきてくれた結果、なんとか学生さんたちを迎える準備が整いました。
当日。
まずは女性局中央地域事務所にて、女性省としての取り組みを説明。せっかく遠く日本から学生さんが興味を持って来てくれているのだからと、同僚も真剣に話をしてくれました。他の同僚たちもEXPOの準備で普段より忙しくしている中、にこやかに迎えてくれました。
いよいよ村へ。
道中のバスの中での学生さんたちの質問は専らカバ(KAVA)について。フィジーの伝統の一つとして胡椒科の根っこを砕いたものをタノアという桶の中で濾した飲み物を飲み交わすというものがあります。冠婚葬祭などの儀式やパーティ、親戚、友人との集まりなど、どんな場面でもカバは付き物です。
村に着いたらまずお祈りから。
そして諸々の挨拶が済んだらカバセッション。
初めてのカバを恐る恐る口にして、中にはむせてしまう人も。それでも皆さん、フィジーの伝統に敬意を表して飲み干してくれました。村の皆さんも喜んでいると思います。
その後は私の活動の一部であるこの村の女性グループのビジネスを視察。
フィジーではビジネスのノウハウもなく政府の補助金に頼ってビジネスを立ち上げたものの、すぐに経営が立ち行かなくなるケースが多い中、彼女たちは自分たちで資金を集めて小売店のビジネスを昨年10月に立ち上げました。私は8月からほぼ月に1回、帳簿の付け方やビジネスのヒントを伝えてきました。
しかし日本の小売店とははるかに様子が違います。レジもなければ陳列している商品の数も種類も少なく、中は薄暗く飾り気もありません。もちろん、エアコンもありません。日本のオシャレでクリーンなお店に馴染んでいる学生さんたちは何を思ったでしょう?何を感じたでしょう?
これでも彼女たちのお店は少しずつバージョンアップしているのです。2月に入ってやっと店内に電気が通うようになりました。彼女たちの1日の売り上げはまだ決して順風満帆ではありませんが、10月の開店から貯蓄も始め、冷蔵庫を購入することを目標に頑張っています。
一方どんな状況でも大切なお客さんが来ると盛大におもてなししてくれるフィジーの人々。
女性たちは朝からスイーツを焼き、サンドウィッチを作り、フィジー伝統の食べ物をたくさん準備してくれました。
そしてフィジーの音楽に合わせてみんなで踊り、盛り上げてくれて、最後はフィジーの伝統的なお別れの歌「Isa Lei」を全員で合唱してくれました。
きっと、この村の人々の温かい気持ちが学生さんたちに伝わったことでしょう。
最後には帰りたくない!と涙する学生さんもいました。
一日がかりで日本の若者たちを迎えてくれたナイラ村の人々。忙しかったよね、大変だったよね、と労いの言葉と共に感謝の気持ちを伝えると、私たちも楽しかったからいいんだよ!とにっこり。
私の残りの活動期間を通してこの村の女性グループの活動を支援していくことで精一杯恩返しをすると心に誓いました。
ご縁があってフィジーを訪れた日本の学生の皆さんにとって、この経験が単なる楽しい経験ではなく、国際協力について考える、興味を持つ一助になっていたらいいなと思います。
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