JICA海外協力隊の世界日記

南太平洋の陽気な島フィジーよりBULA!

大地は見ている

首都スバからモアラ島へ行くフェリーはモアラ島の他にトトヤ島、マツク島を周ってスバに戻ります。場合によっては逆周りになることも。

私たちがモアラ島に到着後、フェリーはトトヤ島へ向かって午後出航しました。

ところが日が暮れた後、そのフェリーがリーフに挟まって身動きが取れなくなっているとの情報が入りました。私たちは初めてモアラ島を訪れた挨拶の儀式としてセブセブをチーフの家で行っているところでした。その場にいた警察官も急いで小さなエンジン付きボートに乗って現場へ向かいました。

画像 1.jpg

赤い丸で囲った珊瑚礁の間を通り抜ける途中で身動きが取れなくなったそうです。

その場にいた人たち、村の人たち誰もが最初は驚いていました。なぜならそのフェリーの船長はスバとモアラ地域をフェリーで何度も往復しているベテランで、その地域の地形をよく心得ている人だったからです。

一方で、周りの人たちがヒソヒソ話をしているのに気づきました。その誰もが言っていた言葉ー「大地には目がある」「大地は見ている」ーみんなフィジーの言葉でしゃべっているので内容がいまひとつつかめません。

大変大きなフェリーを牽引できるような力のあるものが島にはないため、結局、首都から他のフェリーを応援として呼ぶことになり、乗客はそのままリーフに挟まった場所で追加の一夜をフェリーの上で過ごすことになりました。

翌日、他のフェリーが応援に駆けつけて牽引し無事に次の島へ向かうことができました。

後日、同行していた人に「大地は見ている」ってなんだったの?と尋ねてみました。

すると彼女はあの夜のような囁く声でヒソヒソと話を始めました。

「実はね、あのフェリーの船長とこの島の女性が不倫関係にあるって前から噂だったのよ。それで今回船がリーフに挟まって動けなくなったでしょ。昔から大地は私たちの行動を見ていて、問題のある行動をとっている人には罰が下されるって言われているのよ、フィジーでは。」

「でもその後フェリーは無事にトトヤ島に行ったじゃない?」

「うん、夜の間に船長がチーフの家にヤンゴナ(挨拶に必要な植物の根)を持って挨拶に行ったのよ。それで無事に次の島に行けたの」

その土地が私たちの行動を見ているースバから訪れている仲間たちがいつもより慎重な行動をとっていることも不思議でした。実は彼女たちもそのことを信じているからこその行動でした。不用意にでもこの島のルールに反することをしてしまってスバに戻れなくなったら困る、という理由です。

大地は見ている

血縁や土地を大切な財産としているフィジー文化の新たな側面を垣間見ることができました。

モアラ島滞在から16日。私たちがこのフェリーでスバに戻る日がやってきました。

画像 7.jpg

美しい夕焼けを眺めながら出航を待ちます。フェリーに乗っている人の中にはお祈りをしている人もいました。彼らは例の珊瑚礁に今回は引っかかりませんようにと祈っていたのです。キリスト教徒が多いフィジーでは誰もが家族や親戚と共にクリスマスを過ごすことを楽しみにしているので、このフェリーで帰ることができなければ、クリスマスを逃すことにもなりかねません。

いよいよリーフの間を通る時がやってきました。船長が船員に指示を出します。乗客は船の進行方向の甲板の上に集まって息を呑んで見守ります。

画像 9.jpg

やがて進行方向を照らしていた照明が小さくなり、魔のリーフを無事に通過したことを知りました。集まっていた乗客もほっとした様子で散っていきました。

画像 10.jpg

月明かりが海を照らす穏やかな夜でした。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ