JICA海外協力隊の世界日記

みんなあのねのセネガル便り

みんなあのね、「とある金曜日」

新学期が始まったと言っても、

なかなかクラスが始まらないのがセネガルである。

シテニャフ幼稚園では、まだ園児登録が続いている。

入園式などの式典もなく、

ばらばらと子どもたちはお母さんに連れられてやってくる。

新学期が始まってすぐの金曜日、

子どもたちと黒板にチョークを使って絵を描いた。

シテニャフ幼稚園には、園庭の壁に大きな黒板が設置されている。

リュックも水筒も背負ったまま、

口を少しとがらせながら、真剣な目つきで

なにを描いているのかな。

黒板にチョークで色を塗ると、色鮮やかだ。

この黒板にチョークで絵を描くという活動は、

色を塗った後にぼかすという工夫の仕方があることを

紹介するためである。

紙にクレヨンで色を塗り、指先などを使ってぼかすよりも、

黒板にチョークで色を塗り、ぼかす方が子どもにとって簡単だ。

先生方にとってもぼかしたものの変化が見てとりやすいと思う。

両手いっぱい使って、塗った部分をぼかしていく子どもたち。

顔にチョークの色がついてもお構いなしの様子だ。

黒板には、子どもたちが描いた動物や船、クルマがならび、

空には太陽や星が輝き、すてきな作品になった。

乾季に入ったセネガル、しばらくこの作品を楽しむことができそうだ。

シテニャフ幼稚園での活動は、世界日記をご覧いただいている方には、

穏やかに順調に進んでいるように思われるかもしれない。

しかし、新学期は戦いである。

笑顔ばかりの子どもたちだけではないのだ。

枯れてしまうのではないかと心配になるくらい

涙する子どもたちも大勢いる。

登園し、お母さんに「いってきます」を言うとき、

「おかあさぁぁぁあぁぁぁぁんんん」と涙する子ども。

「行かないでぇぇぇぇぇぇ」と叫ぶ。

そして、登園したばかりなのに、

「もう帰るぅぅぅ」と涙。そして鼻水も止まらない状態。

けれど、かわいいものである。

先生方も「新学期はいつもこうよ」と慣れた様子であるし、

日本の幼稚園でも目にする光景である。

しかし、私の戦いはこの涙ではない。

一番の敵は、お母さんへの涙ではなく、私への涙だ。

変な人がいる!と涙する子どもたちだ。

外国人の私を見て恐怖に襲われているのだ。

泣き叫ぶ子もいるし、しくしく泣き続ける子どももいる。

私は完全にお手上げ状態となる。

泣きの連鎖が起これば、私はいたたまれない。

シテニャフ幼稚園で居場所を失ったような気分になる。

金曜日は、午前中の幼稚園の活動が終われば、

孤児院でアトリエ・ジビだ。

この前の調理活動のマッシュポテトが不評で、

鍋に大量に余っていたものを、この日スイートポテトに変身させた。

マッシュポテトの入った鍋を見ると、

また「ネーフル ダーラ」と何人かの子どもが口にする。

まったくおいしくないという意味の現地語だ。

アトリエ・ジビは強制参加の活動ではない。

「ネーフル ダーラ」と言った子どもには、

「あとで食べたいって言ってもあげないから」と

子どものようなことを口にして、

調理活動に参加したいと言う子どもたちとスイートポテトを作り始めた。

オーブンで焼き始め、いい匂いが台所からしてくる頃、

「ネーフル ダーラ」と言った子どもたちが集まり始めた。

スイートポテトは以前つくったことがあり、大評判だった。

ちょっと意地悪な私は、乳幼児が台所に入れないようにする柵を出し、

子どもたちに「あげないからね」と言うと、

子どもたちからブーイングの声が上がる。

私は、一生懸命料理を作った人がの言葉を聞いたら

悲しくなるということを伝えた。

すると、子どもたちは柵の前で、

「アトリエ・ジビは本当に楽しい」とか

「日本食はすべておいしい」とか

「ジビは本当にかっこいい」とか

私を持ち上げ始めた。

もう、途中からなんだかよくわからなくなってきてしまって、

子どもたちも私も笑いがとまらなくなってしまった。

結局、最後には、みんなでスイートポテトをおいしくいただいた。

子どもたちに持ち上げられ、まんざらでもない私なのだ。

次の調理活動では、何を作ることにしようか。

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