JICA海外協力隊の世界日記

みんなあのねのセネガル便り

みんなあのね、「おでかけ」

サンルイ島内にあるフランス会館で開かれていた美術展に

タリベたちと遠足に出かけてきた。

この美術展には、セネガルにおける広告や

セネガルに住むアーティストの作品が展示されている。

タリベたちは、

自分たちの描く絵のほかの作品に触れる機会がほとんどなく、

鑑賞の楽しさを知ってほしい、絵の自由さを感じてほしいと思い、

今回の遠足を企画した。

遠足の前にタリベたちと約束をしたことは、

遠足中、物やお金を乞うことをしないこと、

展示作品には手を触れないこと、

人の話をよく聞くこと、である。

タリベたちは元気よく「OKだ!」と返事をしてくれた。

しかし、である。

タリベたちは、普段、

路上で物やお金を乞うとき、缶も片手に持っていることが多い。

その缶にお米や砂糖などを入れてもらったり、

できあがったごはんを分けてもらったりするのであるが、

遠足当日、彼らはその缶を持ってきた。

美術展の会場に着き、会場内に入る前にもう一度約束事を確認した。

子どもたちはこのときも、「OKだ!」と言う。

サンルイ島は、植民地時代の都市構造や建造物が

西アフリカでの植民地の歴史を後世に伝える大事な役割を果たすとして

ユネスコ世界遺産にも登録されている。

そのため、欧米からの旅行者の姿が見られる。

遠足で訪れた美術展にも欧米の方の姿があった。

きれいな恰好をした人々が美術作品を眺め談笑している横で、

埃まみれであったり破れていたりサイズがあっていなかったり、

靴を履いていなく裸足であったりする子どもたちが

同じ美術作品を見ている。

そして、タリベの片手には缶。

タリベたちは、抽象的な作品を見て

「これは、ぐちゃぐちゃなだけだ」と笑い、

「おれでも描ける」と言い、

船やロケットなどの乗り物が描かれた作品を見ると

「かっこいいなぁ」と口にし、

お尻が大きく描かれた女性のいる作品を見ると

「これはやばい」と言う。

タリベたちの生活環境は決して良いものだとは言えず、

いっしょに過ごす中で様々なリスクの高さを目にしてきて、

彼らの境遇について考えることもあるけれど、

タリベたちも子どもなんだなぁと思った。

日本でも「やばい」という言葉があるが、

セネガルの若者の間でも「やばい」という言葉がある。

とても良い、とても悪い、の意味で使われるのだ。

「やお ぐりえ んが!」は、

現地の言葉で、「キミ、やばいよ」である。

良い意味か悪い意味かは、その時々による。

私自身、子どもの頃に遠足で美術館へ行ったことがある。

母親に美術展やビエンナーレへ連れて行ってもらったこともある。

そのとき、どう感じたかはいまいち思い出せないうえ、

それがどのように私自身に影響を与えたかということなど、

もっとわからないのだけれど、

「良かったな」と思い出す。

私が美術展への遠足を企画し、タリベたちを連れて行ったことが、

彼らにどのような影響を与えるかわからないけれど、

タリベたちも私のように「良かったな」と思い出を振り返ってくれたら

それだけで私は嬉しく思う。

タリベたちは、私との約束を守ってくれた。

遠足の帰り道も、缶は空のままであった。

今度は、彼らとどこへでかけようか、今から楽しみである。

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