JICA海外協力隊の世界日記

カリブ海の小国・セントルシアでの防災活動日記

セントルシアの自然災害(気象編)

1842年以降にセントルシア100km圏内を通過したストーム(NOAAより)貿易風に乗って東から来ます

熱帯気象では、世界的にハリケーンシーズンは6-11月とされています。NOAA(アメリカ海洋大気庁)によると、1842年以降、セントルシア100km圏内を通過したハリケーンは20あります。トロピカル・ストーム(ハリケーンの一歩手前の熱帯暴風雨)を合わせると86です(トロピカル・ストームになると名前がつきます)。トロピカル・ストーム以上は2年に1回、ハリケーンは9年に1回の頻度で接近する計算になります。以外と少ないように感じますが、国が小さいことと、低気圧が生まれて発達する場なので、そこまで成長していないためでしょう。

セントルシアではトロピカル・ストームが来る場合、暴風域に入る6時間前までに自宅待機になります。ハリケーンの場合は7時間前です。警報は36時間前、注意報は48時間前までに出すことになっています。これらの情報源は基本的にNOAAからのもので、カリブ災害緊急管理機関(CDEMA:在バルバドス)などの海外機関の情報も得て、この辺はしっかりとやっています。しかし、トロピカル・ストーム未満の場合などの時は、自国で気象レーダーを持っていないためか、後手後手になります。例えば、既に洪水になっていたり、雨が止んでから注意喚起が発出されたりします。隣のバルバドスとマルティニーク島(フランス海外県)の高性能気象レーダーを見れば、事前に大雨になると分かるのですけどね。。。

脱線しますが、防災活動上の課題として、このように受動的な点が挙げられます。伝聞のみで動くのが普通です。伝達経路が2-3以上あると、どこかで途絶えたり、大きく遅れたりすることもあります。インターネットで情報を取りに行くようなこともないので、後手後手になるしかないわけです。ハリケーントラッカー(台風の経路図・予想進路図みたいなもの)の存在すら知られていなかったほどです(赴任してから一番衝撃を受けた点です)。本当にすべてが課題です。どうやっても変えられないのですが、どうやってこれを変えていくかが課題です。

さて、過去最大の被害は、2010年のハリケーン・トーマス(カテゴリー2、日本の通常の台風に相当)により発生しています。このときの降水量は24時間雨量668mmで、洪水・土砂災害が多数発生し、暴風被害も深刻で、電力・水道や道路などのインフラが2週間ほどダメだったらしいです。ちなみに、カリブの建築様式は、風で屋根が飛ばされやすいそうです。過去2番目は20131224日のクリスマス豪雨で、降水量は3時間雨量224mmです。ハリケーンシーズン外でも、降るときは降るということですね。

そのほか、1900年以降で干ばつ(Drought)が1件記録されています。詳細は不明なのですが、熱帯気象下にあるとは言え、小さな島ですので十分ありえるでしょう。国の主要な水瓶(ダム)は、島の中央付近にある、ジョン・コンプトン ダムのみです。ここが干上がると、広範囲が断水になります。実際、このダムは老朽化しており、メンテナンスなどのため断水になることがあります。丸3日間、水が出ない生活を2年間で2回経験しました。事前連絡もなく、突然 断水になることも何度かありました。家に水を貯めておくことが大事です(常に60L用意しています)。

貴重な1948年の映像(1948年カストリーズ大火)

最後に、過去には火災による大災害も起きています。1948年の火災では、首都カストリーズの中心部が壊滅したほどです(後の1952年の地震でトドメ)。当時は木造建築で、最近の近代的な建築物ならば大丈夫かもしれませんが、以前、多くの集落では古い木造建築物が密集しているので、ないとは言えないでしょう。

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