JICA海外協力隊の世界日記

カリブ海の小国・セントルシアでの防災活動日記

私の活動紹介⑨ ハザードマップの舞台裏:いつもの課題を乗り越える

写真はバルバドス国でのUNESCO・CDEMA(カリブ災害緊急管理機関)加盟国ミーティング後の集合写真です。

何が本当か分からないことがよくあります。そして、いつまで経っても分からないままです。例えば、飲料水が軟水か?硬水か?ということがありました。通常、火山地帯(セントルシアは火山島)は軟水なのですが、水道公社のホームページには硬水と書いてありました。まさかと思って同僚達に聞いてみたら、全員が軟水だと即答します。水道公社の件を話すと、みんな「えっ!?」となりました。水道公社に確認してもらいましたが、結局、今でもどちらが本当か分かりません。

こういったことが仕事でも日常的です。 我々でしたら白黒をはっきりさせてから次に進むでしょうが、こちらではそのまま進んでいきます。その結果として、何がなんだか分からないものばかりになっています。私のミッションの柱の1つは「ハザードマップを作ること」でしたが、これが最大の障害でした。苦労しながら50個以上のデータを集めましたが、さて、使い物になるデータはいくつあったと思われますか?

苦労してデータを手に入れる話へのリンク

https://world-diary.jica.go.jp/otayuzo/activity/post_8.php

231003_Online-Hazardmaps for Saint Lucia.png

ハザードマップ説明資料130スライド(2023年10月末時点)

正解は1つでした(エクセルなど単純なもの含めて)。GIS(地理情報システム)とハザードマップに関しては、2008-2009年、2015-2016年、2021-2022年の3期間で国際支援を受けたデータ作成が行われていました。前の2期間のものはエラーだらけでした。最後の1つは期限を過ぎましたが、まだ完了していません。これに関連してたくさんの国際機関の方々と話しましたが、私も含めて全員がセントルシア側からのデータを待っている状態でした。契約期間は厳守ですので、こうして時間切れになってエラーだらけのものが出来上がっていくのだと分かりました。国際機関の方々も、ある程度のエラーを許容しないと何も進められないのが実情なのでしょう。

WB.jpg

ワールドバンクグループとのミーティング

さて、私も待ち続けたのですが任期内に終わりそうもなかったので、残り半年の時点で作業を始めることにしました。しかし、どこかで負の連鎖を断ち切らなければなりません。そこで私は、過去の国際支援を無駄にしないようするべく大量のエラーを直し、自分で作れるものは作ることにしました。過去の災害の記録もまとまっていなかったので、可能な限り集めてまとめました。 これによって、どのような災害がどれくらいありそうなのかを統計的に根拠づけられました。最後に、記録・解説・ハザードマップの3点と今後の課題をまとめた資料を作りました。 その説明を行って、私のハザードマップのミッションは終了としました。これでセントルシアにおける防災の基礎データができたことになったはずです。

CDEMA_ODPM.jpg

CDEMA(カリブ災害緊急管理機関)・ODPM(トリニダード&トバゴ国 防災局)とのミーティング

以下がそのハザードマップです(マップが表示されない場合はリンクをクリックしてください)。左側にレイヤーパネルを表示させれば、表示情報のONOFFを切り替えられるようにしています。ここでマップの詳細は説明はしませんが、各災害(洪水・土砂災害・津波・火山災害)に対して根拠づけてマッピングしてあります。また、学校を例として、それぞれの学校に対するリスクをGIS的に解析して学校シンボルに入れてあります。スマホで開けば現在地と各リスクが分かるので、現地調査や防災教育に役立てて欲しいです。

オンライン版 洪水・土砂災害・津波ハザードマップ

https://www.google.com/maps/d/edit?mid=1DTmOO6C2O8kci4tPSGlD9IWXqXbGkGQ&usp=sharing

オンライン版 火山噴火災害ハザードマップ

デフォルトでシナリオ3(過去に発生したと推定される規模)が表示。シナリオ4が最悪のケースを想定した場合。

https://www.google.com/maps/d/edit?mid=1Y8FkFFuqH4qku30XcHp96QVZ-4EG53w&usp=sharing

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