2016/04/17 Sun
活動
伝える、伝わる。~環境教育インタープリテーション研修の報告~
こんにちは。尾崎です。
今回は、3月中旬に実施した「環境教育インタープリテーション研修」の報告をしたいと思います。
インタープリテーションについては、前回の記事でもお伝えしたので、
興味のある方はご覧いただければと思います。
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インタープリテーションをする人=インタープリター=自然の解説者。
自然・文化・歴史(遺産)を分かり易く人々に伝えること。自然についての知識そのものを伝えるだけではなく、その裏側にある「メッセージ」を伝える行為。
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2016年3月15日~18日、首都リマと沿岸地域の自然保護区パラカスの2か所で4日間の研修が実施されました。参加者は、計45名。(日本からの講師2名、通訳2名、JICA調整員1名、中南米の協力隊員とその同僚たち計40名)。ペルー以外からは、ボリビア、エクアドル、コロンビア、コスタリカ、グァテマラ、ドミニカ、ニカラグアの計8か国から参加者が募りました。この研修を通じて、インタープリテーションを体験的に学び、参加者の各地域の活動における現状と課題の情報共有をしました。半年後、この研修が各隊員の任地でどう活かされたのかをテレビ会議にて全参加者と共有する予定です。主催:JICA。協力:SERNANP(ペルー国立自然保護区管理事務局)
以下、詳細です。
1日目。
開会式は、講師の先生方とパラカス自然保護区の所長の挨拶。その後、参加者同士の緊張をほぐすためのアイスブレイクと、4枚の絵を使った自己紹介を実施しました。夕方より、インタープリテーションの概論の講義と、野外解説版実習のグループワークを行いました。グループは、4人一組。各国の参加者が入り混じって話し合い、発表をしました。
2日目。
SERNANPとパラカス自然保護区についての解説のあと、ボートに乗りバジェスタス島視察。昼食後、パラカス自然保護区に場所を移し、フィールドワーク。ここでは講師たちによるインタープリテーションのアクティビティを全参加者が体験しました。夜には、ワールドカフェ方式の情報交換会を実施しました。6人一組で円になり、この研修の感想や、各地での課題などを話し合いました。
3日目。
会場を首都のリマへと移し、実習「一方向と双方向のコミュニケーションの違いを体感」を実施。その後、4人一組のグループに分かれて、与えられたテーマをいかに分かり易く解説するかの実習「一工夫実習」をおこないました。例えば、“アリクイが一日に35,000匹のアリを食べる”というテーマを解説する場合、みなさんならどのような一工夫を加えて、解説しますか?短い制作時間でしたが、どのグループも興味深い発表をしていました。
4日目。
最終課題計画と発表。用意された12テーマの中から、各自興味のあるテーマを選び、グループで1つのインタープリテーションのプログラムの開発をし、発表しました。例えば、「低予算で実施できるプログラム」「川のゴミを減らすプログラム」「言葉を必要としないプログラム」などなど。
閉会式では、JICAペルー事務所の次長、講師の方からお言葉をいただき、会を締めくくりました。最後に、この研修を参加した証として、オリジナルポロシャツの配布。そのポロシャツとともに全体集合写真をとって閉会となりました。
またこの研修の空き時間中、参加者が各国からのお菓子や飲み物を、ペルー各地からも特産品を持ち寄り、みんなで共有しました。参加者同士の交流を深める場、ペルーの魅力をアピールする場を設けることができました。各国の参加者のみなさま、そして、ペルー国内の協力隊員のみなさまも、お忙しい中、本当にありがとうございました。
そして、この研修会の運営に関わっていただいたすべての方々、
たくさんのご迷惑やお手数をお掛けした部分もあったかと思いますが、
この研修会が無事に終わったのもみなさまのおかげです。
心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。
最後に、私が研修をとおして感じたことを述べさせていただきます。
活動において重要なのは、
「自分がどれだけ伝えたか」よりも、「相手にどれだけ伝わったか」
私の場合、活動をしていると
「1か月に何回実施して、何人の参加者がいたのか」などの、
「何回、何人」などの数字に注目しがちでした。
上司への報告も楽ですし、自分も活動を(とりあえず)した気分になりますからね。
「自分がどれだけ伝えたか」という観点で見れば、
こういう数字は立派ですし、職場的にもハナマルな活動です。
しかし、「相手にどれだけ伝わったか」という観点で見たときには、
テストでの赤点状態の活動です。
例えば、「ゴミを浜辺に捨てないようにしようね!」
という啓発活動をしたあとでも、
会場にゴミが落ちていたり、「保護区の生き物を大事にしよう!」というメッセージを伝えたつもりでも、保護区の立ち入り禁止区域に侵入し、動物たちに接近し写真を撮りまくる人がいたり。
自分では、伝えたつもりでも、
伝わっていないことが、ほとんどだったのです。
そして、今回の研修をとおして、
伝わるインタープリテーションとはどういうことかを学びました。
それは、対象者(参加者)のことを常に考えて行う
インタープリテーションだと私は思います。
計画段階から実行まで、
「どうしたら子供たちに理解してもらいやすいのか」
「参加者がこれをやったら絶対楽しいはず」
「対象者はどういう気持ちになるかな」
など、活動対象者のことを考えること。
今まで、私の職場では、口達者な同僚が、同じテーマ・内容を繰り返し喋るだけの活動をしていました。
活動の実施前に、活動の対象者はどんな人なのかなどを考える時間もなく、出たとこ勝負で始める。また、6歳の子供から40歳の大人までにも、つまり、年齢や属性を考えることなく同じ内容を話していました。
今回の研修では、アクティビティを実施する前の準備(=計画)の時間をたっぷりとりました。
このアクティビティのねらいは? 対象者はだれ?
どういう場所をイメージしている?
などのテーマを深く掘り下げ、話し合いをすることができました。
そのような、「考える時間と機会」を設けられたのが、
私たちにとって、また同僚たちにとっても良い経験になったと思います。
今後、実際に任地に戻って活動を計画し、実行してみたとき、
成功するかもしれませんが、失敗するかもしれません。
そんなとき、大きく肩を落とさなくてもいいと思うのです。
私が思うに、大事なのは、
相手のことを考えて、計画・実施をしたインタープリテーションであれば
「伝わる」インタープリテーションになっているのではないかと思います。
一度、しっかり立ち止まって、活動を見直してみる。
本当にこれは相手にとってわかりやすいものなのか?
自己満足な活動ではないか?
と、日頃から問いかけてみることで、
インタープリターとしての大事な一歩を踏み出していると思うのです。
最後に、私の好きな言葉を紹介します。
「人は人の伝えようとするその気持に感動する。」
では、また次回に。
おざき
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