2020/02/11 Tue
文化
お肉


東ティモールで新鮮なお肉を買うには市場か天秤棒で担いで売っている人を見つけて買います。
スーパーマーケットにもお肉は売ってますが、ほとんどが冷凍の輸入物の為、ティモール人はあまり買いません。
天秤棒で担いで売っているのは生きているので自分で絞めれないので私は買いません。鳥は絞めれるようになりましたが、
豚は一度大家さんが絞める所を見学させてもらい、その時の豚の鳴き声が今も忘れられず豚は絞めれません。


初めての見学の時は同期隊員のマサさんもいて。マサさんもブタを絞めるのを見るのは初めての事らしく
顔面は緑色になっていた。怖くて顔色が青白くなる人は見たことはあるが、緑色は初めて見た。どういう感情なのだろうか。
大家さんの家に着くと大人二人に両腕両足をつかまれた子豚が凄い声で泣き叫んでいた。
血を受けるバケツと包丁を持って来ながら大家さんが「先生がやる?」と聞いて来たので、「マサさんがやる」と答えた。
マサさんはテトゥン語が分からないふりをした。
大家さんが冗談冗談と笑いながら子豚の前に行き、スッと子豚の心臓に包丁を刺した。
凄いと思った。自分達で食べる分は自分達で殺して食べるのが当たり前の国の人達はこんなに普通に心臓を刺せるんかと。
何か自分は負けている気がした。私とマサさんはジッと子豚を見ていた。
子豚はずっと泣き叫んだまま全然静かにならない、大家さんが「あっ失敗」と包丁を抜いて照れ笑いを見せる。
マサさんが「ヘタクソ」と呟いた。大家さんがもう一度よいしょっ!と包丁を刺すと
今度は心臓に刺さったようで子豚はやっと静かになった、でもなかなか死なない。
心臓を刺されたらすぐに死ぬと思っていたが実際は違う事が分かった。
苦しそうに息をしているのをこれ以上見るのがつらくなり、子豚を捌くのは見ずに家に帰った。
その夜大家さんが昼間の子豚を油で揚げて持って来てくれた。
マサさんが手を合わせながら「これが命を頂くという事ですね」と言った。
私はええかっこ言うなこの顔面緑男と思いながら子豚の素揚げを一つ食べた。


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