JICA海外協力隊の世界日記

東ティモール的日常

お墓参り

東ティモールでは11月2日が日本でいうお盆にあたり、友人のジュリアオにお墓参りに連れて行ってもらうことになりました。 田舎や海外に住んでいるファミリーも1年に1度集まりみんなでお参りするそうで、私をファミリーに紹介したいと言ってくれ、喜んで行くことに。 東ティモールはファミリーの繋がりが強く、日本では親戚と呼ばないぐらい遠〜い親戚でも弟、妹、お姉さん、お兄さん、従兄弟、叔父さん、伯母さん、お爺さん、お婆さんと呼び、全てファミリーです。例えば自分のお爺さんの男兄弟の事はすべてお爺さんで、そのお爺さん(自分のお爺さんの弟)の奥さんの兄弟の事もお爺さん、お婆さんと呼び家を行き来します。 ジュリアオと町を歩いている時も至る所でジュリアオのファミリーに出会います。

ジュリアオ家のお墓は私の家の近くらしく自転車で行くことに。
しかし自転車を漕いでも漕いでも一向に着きません。着かないどころか道路から逸れてどんどん山の中に入って行き、自転車では進めなくなったのでそこからは歩いて山道を登って行きました。私は疲れてきて「全然近ないやんけ!」と怒りましたが、ジュリアオは「もうすぐもうすぐ、みんな待ってるよ」と嬉しそうにどんどん進んで行きます。
そしてしばらく行くと崖に突き当たりました。
ジュリアオは崖の上を見ながら
「ここ登るよ」
私は意味がわからず「えっ?」と聞きました。
するとジュリアオは、「ここ登ったらすぐ」と崖の上をずっと見ています。
私は信じられずジュリアオに尋ねました。
「親戚もみんなこの崖登ったんか?子供もお爺さんもお婆さんも」
ジュリアオ「うん」
私「嘘つけ!お前道間違えたんやろ!」
崖はどう見ても人が素手で登れる様な崖ではありませんでした。

結局のところジュリアオは墓参りに来るのが6年ぶりで道を完璧に忘れたと白状しました。
そこから山を彷徨わされた私は「6年ぶりってどういう事やねん1年に1回集まるんちゃうんか!」「毎年墓参りぐらい行けアホンダラ」「あんな崖登れる爺さん婆さん見てみたいわ」とずっとブツブツ言いながら歩いていました。
ジュリアオは「しょうがないね」と言うだけで絶対に謝りません。
暑さと山道とでクタクタになって歩いていると音楽が聞こえて来ました。
音楽の鳴っている方へ行ってみると、少し開けた広場みたいな所があり、そこに14、5人のガラの悪るそうな男達が大きなスピーカーで音楽をかけながら車座に座って酒盛りをしていました。
その中の一人がこちらに気づき手招きしました。私はジュリアオのファミリーか!と思いジュリアオを見ると、
ジュリアオは困った様な顔をして
「先生ダメ、彼ら悪い奴」
「彼らはArtes marsiais」と言いいそのまま立ち止まりました。(アルティ マルシアイスとは東ティモールのマーシャルアーツグループ、武術集団で元々はインドネシアから来た「SH 」「 Kerasati」「Setseti」 東ティモールで生れた「korka 」などいくつかのグループがありお互いに抗争を起こしたりする暴力集団です。※中には純粋に稽古だけをする人もいるそうです。)
私はジュリアオが「先生は先に帰って、私一人が殴られて来るよ」と言ってくれる事を願いながら「どうする?」とジュリアオに訊ねました。
ジュリアオは「しょうがないね、行こう」と歩き出しました。私はジュリアオについて行きながら、どうしようか考えていました。「あんだけようさん居ったら、絶対に勝たれへんやろなぁ、かと言って逃げても捕まるやろし、ジュリアオの前で情けないとこも見せたないし、てか殺されたらどうするんや、だいたい墓参りに誘っといて道を忘れるってなんやねん、ごっつい崖登らされそうになったり、めちゃくちゃようさん歩かされたり、「しょうがないね」ってなんやねん!ごめんと言え!なんやねんコイツ、あかん!俺がこいつを殴りたい」とだんだんジュリアオに腹が立って来ました。
そしてそいつらの中で1番偉そうに一人だけイスに座っているやつの所に呼ばれ、ジュリアオは何か凄く責められている感じで質問をされていました。ジュリアオは凄い量の汗をかきながら質問に答えてました。私は「うわ〜こいつこっわい顔しとるなぁ」とか「何発殴られたい?てかどっちから死にたい?」って聞かれとったらどうしよとか色々と思いながらジュリアオとこの怖そうな奴の顔を見ていました。そのうち座っている中の一人が私に紙コップを渡して来ました。そして飲め飲めと言ってきます。
私は笑顔でコップを受け取りましたが、彼は一切笑っていません。私は飲みたくないなぁと、でも断ったら怒るやろし、困ったなぁ。
あっ!手が滑ったふりしてコップ落としてこいつが落ちたコップを見た瞬間に髪の毛を掴んで鼻を蹴り上げて、よし!やっぱり笑顔で飲干そうと思った瞬間ジュリアオが「先生駄目!明日かわいそう」と強めの口調で言って来ました。
かわいそう?かわいそうって何?どういう事?明日かわいそう?誰が?何が?
意味がわからんぶん余計に怖いんですけどっ!
飲むのを躊躇っていると、「おい、中国人はよ飲め」と急かして来ました、私はとっさに「日本人!」と言うと、
少しその場が和んだ感じになり、色々と質問してきました。それにジュリアオが答えて行くと少しづつその場がまた和んでいき
ジュリアオが合気道という武道をこの人は日本から教えに来たと言うと、彼らは、「俺らもいっつも稽古しとるで」と中国拳法と猿のような動きをしました。ジュリアオが「ケラサティ?」(ケラサティはマーシャルアーツグループの1つで猿の動きを模した拳法を使う)「私の従兄弟もやってるよ」と言うと「従兄弟の名前はなんや?」お〜知っとる知っとるとなり、一気に場が和み、「お前ら墓探しとるんやろ?こんなとこに墓なんか無いぞ、墓はもっともっとずっと下や」とわざわざ地図まで書いて渡してくれました。
解放された私とジュリアオは、「怖かったね」「俺らが墓に入るとこやったな」とお互いに話しながらお墓をまた探しはじめました。

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