笠戸丸の風

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清水 邦俊
千葉県

タイプ/職種
日系社会シニア・ボランティア
学芸員
派遣国
中南米
ブラジル サンパウロ州サンパウロ市
一言メッセージ
日系移民の歴史、アーカイブズ、サンパウロでの衣食住、はたまた日本の歴史の四方山話を綴っていきます。

 

第21話 アーキビストの仕事 その2

2019.09.02

アーキビスト

第14話に続いてのアーキビストの仕事シリーズ。

本話は調査についてです。

第14話のなかで(1)所有者(所蔵先)からの資料の受け入れ作業→(2)資料の整理作業→(3)資料を公開するための作業→(4)利用の4段階があるという話をしましたが、今回は(1)の話をします。

実を言うと(1)の受け入れ作業には前段階があります。

ただ単に資料を箱詰めして館に持ってくるだけではなく、その前に調査をします。

調査には、二段階の調査があります。

それらは所在調査・概要調査です。

それぞれに重要な意味があります。

所在調査

まず最初の調査である所在調査について説明します。

資料の所在を把握するために、まず所在調査を行います。

所在調査の目的は、個人宅や機関に訪れて、資料の有無を把握すること、そして、資料があった場合、建物内のどこに資料が収納されているのかを調べることです(もちろん許可は得ますよ)。

部屋にあるタンスやロッカー・箱等を開けて資料を確認します。

資料があった場合、タンスやロッカーが部屋のどこに位置するのか、引出しや棚ごとに調べて、何段目に資料が何点位あるのかを、部屋ごとの見取り図やタンスの全体図等を作成したり、写真を撮る等します。

蛇足になりますが、タンスやロッカー内を調べることを、アーキビストの間では「ガサ入れ」と言ってます(笑)。

併せて、資料の凡その保存状態(虫喰いや酸化の度合い等)も調べます。

このように保存状態や数量を調べておくことで、今後の整理の計画を立てることが出来ます。

ここで実例を挙げて説明します。

2018年10月に、私はサンパウロから約600㎞西にある、サンパウロ州ミランドポリス市第1アリアンサ地区の弓場(ゆば)農場へ調査に行ってきました。

弓場農場には「北原・輪湖記念館(←クリック)」という資料館があります。

同館を管理している矢崎正勝さんのご厚意で調査することができました。

同館の資料、特に文字資料は矢崎さんがアリアンサ地区の個人宅から譲り受けたものです。

これを今、整理して残しておかないとアリアンサ地区の歴史が失われてしまいます。

しかし、これまで全体的にどのような資料があるのかわからなかったので、まずは把握することが目的でした。

そしてその際、作成した見取り図が1枚目の写真です。

所在調査の時に注意することは、資料のまとまりや重なりを崩さないことですが、概要調査の項で詳しく説明します。

このように、所在調査では、資料が建物内の何処にどういう状態であるのかを把握します。

概要調査

続いての調査は概要調査です。

概要調査の目的は、タンスやロッカーの棚や引出しごとに、何年ごろのどのような資料が、どれくらいあるのかを調べて、データ化することです。

もちろんすべての棚や引出しについて調べていると、かなりの時間を要するので、一列や一棚につき6割から7割程度の資料について把握を目指せばいいと思います。

概要調査は、タンスやロッカーの棚や引出しごとにデータ化していきます。

【2枚目写真:北原・輪湖記念館のロッカー引出しの様子 】

データ化とは、収納容器・段数・資料概要・年代幅・概数等の項目を設けた目録に入力していくことです。

【3枚目写真:北原・輪湖記念館 概要目録】

この時に、気をつけなければいけないことは、資料のまとまりや重なり順を崩さないことです。

なぜなら、資料のまとまりや重なりには重要な情報が含んでいるからです。

まとまりとは、資料が封筒や袋に入っていたり、場合によっては紐等で複数点縛られている、またはクリップ等で一括している状態を指します。

当時の人が関連する資料同士をまとめている可能性があり、資料同士の関係性こそが重要な情報であるというです。

ファイル等でまとめた複数の資料に、異なったタイトルが付いている場合でも、全体を通して見ることで、どのような関係で作成された資料なのかが判明できる場合が多々あります。

現代の私たちも、資料をロッカー等に収納する時、関連する資料をファイルやクリアーファイルにまとめたり、重ねたりして入れますよね。

したがって、資料をまとめる・重ねるということは、資料同士に何らかのつながりがあることを意味します。

単独で見てもわからなかった資料も、まとまりで捉えることにより、どのような関係で作成されたのか、背景が見えてきます。

このような隠れた情報は、調査段階から把握しておかないと、今後作業を進めていくうちに消滅していってしまう可能性があります。

まとまりごとでデータ化することによって、次の段階の細目録作成の予備情報となります。

以上のように、調査は段階ごとに目的があり、各段階の調査でしか得ることができない情報があります。

もちろん、調査先の状況によっては、所在調査と概要調査を同時に行う場合もあります。

どんなに小さい情報でも、今後の整理を進めていく時に、重要な情報となり、やがて利用者が資料を見る時の予備情報として提供できることになるわけです。

それではまた

 ~笠戸丸の風を受けて~