2015/12/05 Sat
活動
国立リハビリテーション病院


私は作業療法を指導するためにミャンマーの国立リハビリテーション病院に派遣されています。作業療法士とはリハビリテーションを担う3つの専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の一つです。ミャンマーではまだ作業療法士の養成機関がないので理学療法士に教えています。
国立リハビリテーション病院は、全体は平屋で一部2階建てになっているヤンゴンの中でも小さな病院です。場所は空港に近い北部のマヤンゴン地域という所にあります。また、病院の斜め向かいに障害者職業訓練所と障害児学校があります。


門を入って正面玄関まで坂道を少し登ります。(写真1)正面玄関といってもひっそりしています。入ると左に立派な仏間(写真2)があります。正面が院長室になっていて、そのまま右に看護師詰め所、病室、そしてセラピー室が続きます。セラピー室は切断者専用の理学療法室、物理療法室、電気治療室、小児の訓練室そして作業療法室となります。理学療法士(PT)は全部で16人います。各部屋に2-3人くらいの専属のPTがいて、4か月ごとに交代で各部屋を担当するのだそうです。ですから現在一緒に働いているPTは12月いっぱいで交代ということのようです。研修生(卒業後数か月研修するようです)が各部屋に1人ずついます。それに作業療法室には看護助手のような方がいて、患者さんの介護やセラピーの準備や後片付けをしています。そして外来専用の診察室には医師が5-6人います。中央の大きなテーブルで4-5人の医師が一緒に面接・評価をして小さなノートに記録をつけてPTに処方を出します。その大部屋の周りに各医師の個室があります。どのように使い分けているのかはわかりません。医師は内科医とリハビリ医です。その他にワークショップと言って義肢・義足・装具の作製室があります。そこは作業所と歩行訓練室を兼ねていて、切断者専用室の理学療法士はそこでも訓練や評価をしているようです。そこはアジア地域で連合して義肢装具士(PO)を教育する機関にもなっているようで、カンボジアやタイなどから指導に来たりインドネシアやラオス、ベトナムなどからの研修生もいました。ここの義肢装具マネージャーは英語が堪能で、一見いかにも職人気質のような雰囲気の方で20人くらいの義肢装具士、職人や研修生を束ねています。病室は50床ということです。月曜日には院長回診があるのでついて回ったところ、全部で40数人が入院しているようです。女性は11名、30数名は男性です。そして女性も男性も半分以上は下肢切断です。そのうち両下肢切断の方が、4-5名いました。原因は事故と糖尿病が多いです。


OT室の様子ですが、治療時間は午前9時から12時と午後2時から4時前までです。午前も午後も入院患者さんは来て訓練しており、その間に外来の患者さんが通っています。OTに来る患者さんは、脳卒中、脊髄損傷(完全頚損が一人、その他は不全麻痺や対麻痺です)ギランバレー症候群の方々です。午前中は8時過ぎぐらいには患者さんがOT室にやってきて、介助人や家族が手伝って立つ練習をしたり、上肢を動かしたりしています。立位は下肢装具の代わりに板と弾性包帯で足首と膝関節を固定して立たせます。頚損の人も同じように立っています。そして約1時間。その間何をするでもなく立っています。何をするでもないことを、PTは気にならないようです。PTが来るのは8時半、働き始めるのは9時、入院患者さんは決められたプログラムを自身で黙々とこなしています。片麻痺の上肢訓練は輪投げと滑車などを使い、みんな同じように患側を健側で介助して行っています。外来は発症後6か月以上経過している人が多く、入院の人もほぼ回復期を過ぎた方々です。ADL(日常生活動作)の中でできるようになりたいことはと聞きましたら、食事や着替えがほぼできる人はロンジーを自分で着たいと言います。経過の長いCVA(脳卒中)の患者さんに、洗濯ばさみをつかって患側を補助手として使う方法を一緒にしたのですが・・・。その後練習している様子はなく、いつもと変わらない訓練をしています。とにかくこれからです。全体の様子をもう少し観察し、リハビリ医やPT主任が何を望むのかを話し合いたいと思います。右がOT室と言われている全景です。手前にあるエルゴメータは写っていません。
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