JICA海外協力隊の世界日記

5Sでゴー 薬剤師マラウイ奮闘日記

私の活動要請の1つは5S-KAIZENなのですが...

私の活動要請の1つ目は「薬局における5S-KAIZEN活動を推進し、在庫探索時間の短縮、発注管理の効率化、薬剤の保管状況の適正化を目指す」である。なのでブログの題名も5Sをつけた。しかし正直言うと現在の私は「5S-KAIZEN活動をしています!」と宣言できるほど5Sを行えてはいない、成果を残せてはいない。5Sとは、作業行程にある「ムリ」「ムラ」「ムダ」を低減し、業務の円滑化、効率化を目的とした職場・現場の管理を行うための方法である、とガイドには書いてあった。カムズ中央病院ではすでに5S活動が導入されており、言葉自体を知ってるスタッフも多い。そしてマラウイの人々は「物をきれいに並べる」ことは大好きである。実際に薬局内も棚の上には医薬品が一見きれいに並べてあり、スタッフは整理整頓できていると思っている。しかし私から見ると実際には不要なものも保管してありスペースを無駄に使用しているし、並べることだけが目的なので並べ方に工夫はなく、逆に元箱から全部を出してしまうことにより労力を増やしていたり棚卸の際の数を数える作業が煩雑になっていたりデメリットも多い。本来の5Sの目的である業務の円滑化、効率化は5Sの目的となっていない。

活動をする上でやり方は3通りある気がしている。1つはすべての過程を現地のスタッフと一緒に行うこと。これは現地のスタッフに一番やり方を伝えることができるが時間がかかるし相手のやる気が大きく影響する。2つ目はまずは自分でやってみて、そこから誰かが興味を持ったり価値を感じてくれるのを期待する。3つ目はたとえ自分が居なくなった後に状況が元に戻り何が残らなくても今の問題点を解決するための5Sを強行に行う。医療現場に今いる患者さんたちは数年後の改善を待つことはできない。従って3つ目のやり方もあっても良いと思う。物事によってやり方を変えることは大切だ。薬局内での5Sに関しては、まずは5Sが業務の円滑化、効率化のために行うものであることを理解してもらう必要があると感じた。しかしこれが難しい… まず効率化しなくてはならないほど忙しくない!? 今のままで十分のんびり働けている、効率化して業務時間を短縮しても特にやりたいことがあるわけでもなさそうだし、今でも充分に休憩時間を確保し、時間通りに始まらなくても時間通りに帰宅できる。活動要請の在庫探索時間の短縮については、取り扱い物品が日本のように多くはないので整理されていなくても探すのにそれほど時間はかからない。発注管理の効率化は、発注は月1回でしかも発注したものがすべて入手できるとは限らない現状では、日本のように無駄なく細かく発注する綿密な作業は必要とされていない。そして薬剤の保管状況の適正化だが、一番の問題は冷蔵庫。1カ月分の在庫がまとめて納品されるとどんなに整理整頓しても冷蔵庫に収まりきらず室温に保管せざるを得ない医薬品もでてしまう。などなど、なかなかマラウイで5Sの価値を理解してもらうのは大変だ。

と言い訳ばかりしていても仕方がない。私は2つ目の方法、とりあえず私が円滑・効率的に働けるように、働きやすいように5Sを取り入れた改善を行ってみて、少しでも5Sの価値や必要性が理解してもらえれば良いかと思い5S活動をスタートした。具体的には棚の見取り図を作り、欠品中の医薬品に印をつけすぐに分かるようにしたり(マラウイは欠品が非常に多い、初めから欠品だと分かっていれば探す手間が省ける)、病棟への払出に使う錠剤は定位置と定数を決め補充が必要な医薬品を分かりやすくしたり、大量にまとめて納品される段ボールの置き方を変えたり(複数箇所に分けずまとめておく、中身が分かるように置くもしくは中身や個数を見えるように書いたり)。そしてことあるごとになぜそうしたか、それを使うといかに便利かを会話の端々に混ぜ込んでアピールし続けている! その成果は…。 私が活動している部屋には責任者のスタッフと、1カ月毎にローテーションで回ってくるインターンがいる。インターンは不慣れなので私の作った配置図が便利だとたまに見て活用してくれている。また医薬品の補充の際には定位置を決めたことで不足している医薬品がすぐに分かるので発注しやすそうだ(ただし定数に関しては突然の欠品が多いので入手できる時に確保しておきたいようで、私が定数2000錠と決めたものも、うれしそうに5000錠もらってきたよ~と入手してきて置き場所に困ることも多いが…)。そして先月から、それまで数日かけてのんびり行っていた棚卸を1日で行わなくてはならなくなった。薬局内に棚卸を行う部門が3つあるが私のいる部屋は余裕をもって一番に終了した。そして先月別の部屋で棚卸を経験したインターンが「ここは在庫がまとまっているし、中身が見えるようになっているからとっても楽に棚卸できて良いね!」と発言した。これを聞いて私の部屋の責任者はまんざらでもなさそうで、在庫の置き方を少しずつ改善してきた私は、ちょっとは5Sの価値を理解してもらえたと心の中で大きなガッツポーズをした。まだまだ私だけが細々と5Sをやっている印象は大きいが、少しずつ少しずつでも確実に行い、いつか誰かが自分から始めるようになると良いなと思っている。実際に時々調剤部門に整理整頓の小さな箱が新しく増えていたり、インターンが担当病棟の在庫ルームの整理整頓を始めたりしている(3枚目の写真は病棟の在庫ルームの配置を検討し直すインターン達の様子です)。私がほめるととてもうれしそうにしてくれるが、実際には私のうれしさのほうが大きいに違いない。私は小さな変化に大きな喜びを感じて、毎日頑張ろう!というやる気を彼らにもらいながら活動している。

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