JICA海外協力隊の世界日記

ミクロネシア日記「ことこと」

先生が教えてくれたこと

先日、とても悲しい知らせを聞きました。

大学の研究室でお世話になった先生が、病気で亡くなったという知らせです。

その先生は、算数・数学教育の先生でした。大学の講義では、算数・数学を「教える」ときに、どのようなことに気を付けて先生は指導していくのかを教わりました。わたしは、その先生と出会ったことで、「算数・数学って本当におもしろいなぁ。」と思いました。「もっともっと、算数・数学教育のことを勉強したい」そう思って、その先生の研究室に入りました。

研究生が、いつも言われていたこと。

「あなたは、何がしたいのか。」

例えば、何かの公式を教えるときに、「公式はこれだよ、覚えてね。」と言って、すませてしまうこともできます。けれど、図や言葉など、いろいろな手がかりをもとに、クラスみんなで話し合って、公式をつくっていく、その過程を大事にしたいと考えれば、指導のしかたも変わってきます。

「先生になってからが、本当のスタートだ。」

夢がかなって小学校の先生になってからも、先生のその言葉をいつも思い出して、目の前の子どもたちにどんな力をつけたいか、悩みながら、考えながら、つき進んだ日々でした。「計算能力」など、目に見える力もそうですが、「みんなでねり合って、よりよい答えをみちびく力」など、目には見えにくくても大切な力を、算数・数学を勉強することで育まれるのではないのかなぁと、先生のもとで勉強して思いました。

「算数の先生として、ミクロネシアに行ってきます!」

出国前、先生にそう報告すると、「卒研のミクロネシア支部ができたなぁ。」と言って、よろこんであくしゅをしてくれたのを、今でも覚えています。

そんなお世話になった先生だったので、わたしのもとに届いた先生の死の知らせは、本当に本当に悲しくて、心にぽっかりあなが空きました。

そして、お通夜やおそう式にかけつけたいのに、すぐには帰れないこの距離を、この時にものすごく実感して、くやしい気持ちになりました。離れているって、こういうことなのかと思いました。

そしてむかえた先生のおそう式の時こく。日本より2時間早いポンペイは、ちょうどお昼休み。なんだかいてもたってもいられなくて、でもどうしようもなくて、一人、学校から空をながめていました。

もっともっと先生から教えてもらいたかった。

ミクロネシアでがんばっていることを、もっともっと先生に伝えたかった。

そんなくやまれる気持ちといっしょに、はっきり感じたこと。

でも、先生に教えてもらったことは、わたしの心の中にちゃんと生きている。

先生は、算数・数学の講義のとき、いつも楽しそうに教えていました。それは、先生が、算数・数学を教えることにほこりをもっていて、算数・数学がだれよりも好きだったからだと思います。

先生のそんな熱意、生きた証は、ちゃんとわたしたち教え子の心の中に残っています。文化も言葉もちがう中にとびこんで活動しているわたしは今、一体何がここにいる人たちのためになるのか、わからなくなることばかりです。「何がしたいのか。」をまた考え直す時なのだと思います。けれど、考えることをやめないで、わたしは、今いるミクロネシアで、ここにいる子どもたちや先生たちに、算数・数学を通して、笑顔を広げていこうと思います。そして、先生のいのちを受けついでいこうと思います。

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