JICA海外協力隊の世界日記

ミクロネシア日記「ことこと」

わたしたちはネッチ小学校の家族

昨年10月から12月にかけて力を入れて活動したのが、「校内レッスンスタディプロジェクト」です。「レッスンスタディ」は、日本語で「授業研究」のこと。授業研究とは、先生同士で授業を見合いながら、意見を出し合い、よりよい指導について考えるひとつの手法です。

先生は、普段ひとりで教室にいる子どもたちを教えています。これはある意味、ちょっとこわいことでもあります。なぜかというと、教える自分(先生)を評価してくれる大人がいないからです。自分の教え方はどうか、他の教え方はどんなものなのか。それを深く考えることのないまま、自己流で繰り返し何年も教えていたとしたら、授業は変化しません。

だから、教室が「閉じた場所」ではなく、「開かれた場所」になるように、授業が日々変化していくように、授業研究があります。授業のようすをたくさんの先生たちに見てもらい、よりわかりやすい、楽しい、おもしろい授業を切磋琢磨しながら考えていく。この授業研究は、日本で生まれたもので、日本の先生ならだれもが知っていて、経験しています。

 授業を見合う機会がほとんどないポンペイの学校。ネッチ小学校でも、自分の教え方に不安を抱いている先生もいました。この授業研究を取り入れることで、先生たちが指導の新たなアイディアを得て、自信をもって授業に臨めるといいなぁと思いました。

さて、こんな風に授業研究について思いを募らせていたある日、他州の小学校隊員から「レッスンスタディの研修会を開かない?」と提案がありました。授業研究の普及は、世界中に派遣されている多くの学校隊員が考えることです。

こうして広がっていった「校内レッスンスタディプロジェクト」。その全貌を公開します!

ヤップ研修

まず、昨年の10月中旬にヤップ州で「レッスンスタディ」の研修会を行いました。参加メンバーは、ヤップ州の小学校隊員1名、コスラエ州の小学校隊員1名、ポンペイ州の小学校隊員3名。それから、各ボランティアと共に研修後アクションプランを実行する現地の先生たち。

どうしてヤップかというと、ヤップ州が現在ミクロネシアで唯一、授業研究が州規模で定期的に行われている州だからです。その授業研究に参加しながら、各州でどうレッスンスタディを広げていくかについて考える機会をつくりました。見出しにあった一枚目の写真は、ボランティアが企画した、ヤップの先生対象のワークショップです。

 この研修で得たことは本当にたくさん。現地の先生やボランティア、みんなの力が合わさると、ひとりよりも何倍も大きなことができるのだと思いました。

校内プレゼンテーション「レッスンスタディの紹介」

11月中旬。ヤップ研修に参加したケビン先生と一緒に、校内でプレゼンテーションを行いました。ネッチ小学校では、ほとんどの先生がレッスンスタディについて知らないので、まずはレッスンスタディとはどんなものなのかを紹介しました。

校内プレゼンテーション「授業の観察のしかた」

11月下旬。今度は、授業を観察するときのポイントを先生たちに伝えました。

プレレッスン(事前検討会)

12月上旬。カウンターパートのラファイラ先生が授業者になり、プレレッスンを行いました。プレレッスンとは、オープンクラス(授業公開)に向けて、先生たちと授業を練り合うこと。

右端にいるのがラファイラ先生。模擬授業といって、他の先生たちは子ども役になり、ラファイラ先生の授業を受けています。2年生の、数直線を使ったたし算ひき算の学習です。校長先生も子ども役になり、ラファイラ先生に「この問題を解いてください。」と指名されたので、笑いがおきました。和やかな雰囲気で進められてよかったなぁと思います。この後、先生たちで授業について意見を出し合いました。

オープンクラス(公開授業)

12月上旬。プレレッスンの翌日、いよいよ本番のオープンクラスです。

校長先生、教頭先生、各学年の算数の先生、JICA支所員、JICAボランティアたち、たくさんの参観者がどっと教室にやってきたので、授業直前はとても緊張していたラファイラ先生。「がんばれ。大丈夫。」と目で応援の合図を送りました。スタートすると、ラファイラ先生は堂々と授業をしていました。写真の子どもたちの表情を見て下さい。こんな生き生きとした子どもたちの目をつくり出したラファイラ先生、すごいと思います。

ポストレッスン(事後検討会)

オープンクラスのあった日の放課後、ポストレッスンを行いました。ポストレッスンとは、オープンクラスに参加した先生が集まり、授業について振り返ることです。ファシリテータを、ケビン先生に務めてもらいました。

さて、このような流れで行った一大プロジェクト。今回のプロジェクトで、多くのネッチ小学校の先生たちが、レッスンスタディに興味をもってくれました。また、先生たちの授業のアイディアに、わたし自身も学ぶことが多かったです。

こうして去年の暮れは瞬く間に過ぎていきました。プロジェクトがひと段落したころに、わたしの誕生日がやってきました。ポンペイで迎える2回目の誕生日です。とあるクラスで誕生日サプライズパーティーを開いてもらい、先生が一言。

「あゆみは今、ふるさとを離れていて家族が近くにいないでしょう。だから、お祝いしようと思って。だって、わたしたちはネッチ小学校の家族でしょう。」

ネッチ小学校の家族。これは、校内のプレゼンテーションで、学校の先生たちに、以前わたしが投げかけた言葉です。ポンペイの人たちは、本当に家族を大切にします。たくさんの時間を一緒に過ごしながら、喜びや悲しみを分かち合っています。だから、そんな家族のように、学校でも、チームとして、お互いの授業のアイディアを分かち合っていけたらすてきだね、そんな風に呼びかけたのでした。

あの時の言葉を覚えていてくれたんだなぁ。思いがけない言葉のプレゼントにじいんときました。そんな温かいネッチ小学校の先生たちと一緒に仕事ができるのもあと2か月くらいです。感謝の気持ちを忘れずに、できることをひとつひとつやっていきたいと思います。

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