JICA海外協力隊の世界日記

ミクロネシア日記「ことこと」

タイミング

先週末、体調をくずし、少しの間、学校をお休みしていました。吐いたり熱を出したりと苦しかったですが、いろんな人に助けられ、今は元気です。ちょうど具合が悪くなる前、学校に行くのがなんとなくおっくうに感じていたので、そんな気持ちの部分も合わさったのかなぁと思いました。なぜおっくうになっていたかというと、1月から始めたいろいろな取り組みが思うように進まず、どんな支援のしかたがいいのか、わからなくなって思いなやんでしまったからです。

8月の新学期からネッチ小学校で活動してきて思ったのは、「現地の先生たちといっしょに授業をつくりたい」ということ。これまで、先生たちの授業をまず見て、「こんなやり方もあるけど、どう?」と後でわたしが提案して、「いいね。」と現地の先生たちが受け入れてくれてやってみる、そんなスタイルでした。けれど、前もって授業の打ち合わせをして、次の日や次の週の授業の計画をいっしょに考えることができたら、もっと現地の先生たちの思いや考えも引き出した授業ができるのではと思いました。そこで、1月からは、毎日の午後に、算数のレッスンプラン(授業の計画書のようなもの)を何人かでいっしょにつくることに最初決まったのですが・・・、この間、取りやめになりました。本来なら、学年で算数担当、社会担当と役割分担を決めて、一人でその教科のレッスンプランをつくってシェアしていたのに、数人で毎日集まって話し合うのは、現地の先生たちにとって、あまり効率的ではなく、負担に感じて、意味のあるものと思えなかったようです。わたしの語学力が言葉足らずで伝えきれていなかった部分もあると思います。そんなことがあったので、落ち込んで学校に行くのがおっくうになっていたのでした。

そんな最中に体調をくずしたので、数日間じっくり休んだ後、何日かぶりに学校へ行くと・・・、2年生では、時計の初めての学習をしていました。先生が問題を出すとき、時計を黒板に何個も書いて大変そうだったので、ニュージーランドから寄付された教材があったのを思い出し、「時計の教材あるよ!」と先生に提案することに。しかも、ありがたいことに、ひとりひとつ分あります。

「9時10分をつくってみましょう。」

と先生が言うと、子どもたちは・・・、

こんな風に、「9時50分」をつくる子がたくさん。みなさん、この子たちはどうしてこう考えたのかわかりますか?子どもたちのようすを見て、先生は「分」を再確認。

「長いはりは、12から始めて、5、10、15・・・と数えるのよ。」

こんな風にして、いくつか問題を出してこの日は終わりました。授業の後の休けい時間、「ありがとう、とってもいい教材ね!今日はどの子も夢中になって授業を受けていたわ。これ、次の時間に算数をするとなりのクラスの先生に教えてくる!」そう言って、すぐさまとなりの教室に教材を持って向かい、「これとってもいいのよ。こんな風に問題を出して、子どもが答えて・・・。」と、教材の使い方まで熱心に伝えていました。

その姿を見て、「あー、先生たちや子どもたちがよろこんでくれてうれしいなぁ。」と心から思いました。そして、タイミングって大切だなぁと思いました。あの時、「もっと見やすく、子どもたちが手を動かして考えられるものがあったらなぁ。」と先生がまさに必要と思っていた教材だったから、とってもよろこんでもらえたのかなぁと思いました。

例えば、「冷たい水」があって、それがどんなにおいしくて健康にいいものでも、寒い寒いとふるえている人に、「おいしい冷たい水だよ!」と渡したところで、ちっともうれしくないだろうし、逆に体がよけい冷えてめいわくに思ってしまうかもしれません。とっても暑い日に、たくさん歩いてのどがかわいている、そんな時こそが、「冷たい水」を渡すタイミングだと思います。わたしたちボランティアは、現地の人たちのようすをよく見て、「今、何を必要としているのか」を見きわめて、タイミングをのがさないことが大切なのかなぁと思いました。

また、こちらで過ごしてきて感じるのは、日本人は「前もって計画立ててすること」が得意だということ。今まで日本の環境でで育ってきたわたしは、正直、現地の人がなんだか無計画で行き当たりばったりに見えてしまうこともしばしば。「のどがかわくことを想定して、出かける前に冷たい水を用意しておけばこまらないのでは・・・。」と考えてしまうのは、わたしが日本人だからなのですかね。今回の、前もって授業の計画を立てることにどのくらいおもむきを置くか意見がくいちがったことも、こんな文化のちがいがあるからなのかなぁと思いました。

けれども、現地の人を見ていて、こちらの人の「臨機応変(りんきおうへん)さ」はすごいなぁと思います。計画通りに行かなかったとき、わたしはとってもこまってどうしようかあたふたしてしまうのですが、こちらの人はけろっとして、その場をあざやかにかたづけることもしばしば。おたがい学ぶところがありそうですね。毎日、いろいろなことを勉強させてもらっています。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ