JICA海外協力隊の世界日記

ミクロネシア日記「ことこと」

ポンペイ人とサカオ

道を歩いていると、「コトヤンモンゲ!(こっちきて食べなさい!)」と、よく食事の誘いを受けます。知っている人でも知らない人でも、とにかく近くにいたらいっしょに食べようと声をかける、これがポンペイ流のおもてなしスタイルです。たまに、食べ物ではなく、「サカオ飲むか?」と声をかけられることも。わたしが持っている、コーヒー色の液体が入ったびんがそれです。サカオとは、ポンペイのお酒。夕方になると、道路沿いのあちこちに、びんづめされたサカオがたくさん入ったクーラーボックスが置かれます。ハンバーガーのドライブスルーのように、ドライブスルーでサカオを買うのが日常です。ちなみにひとびんで5ドル。(500円くらい)

何からできているかって?それは、サカオという植物の根っこからできています。

こんな風に大きな石でサカオの根っこをたたきながら、やわらかくして、水を加えます。サカオを作ることができるのは、伝統的に男の人のみと決まっています。細かくすりつぶされたサカオの根っこを、ハイビスカスの皮にくるんで、しぼりとったその液が、街で売られているサカオです。

ホストファミリーは、週5くらい、こんな風に自分たちで手作りして、できたてのサカオを家族みんなで飲んでいます。冠婚葬祭に限らず、日常的に飲まれています。サカオは、家族団らんの場でもあるんです。

さて、このサカオは、ビールなどのお酒とちょっと違います。ビールなどは、飲むと気持ちが高まりますが、サカオは逆です。飲んでいるうちに、どんどん静かになって、みんな眠くなっていきます。平和なお酒だともいわれています。

ポンペイの人は、サカオのことをこう話します。

サカオは、ポンペイ人にとって切りはなせないくらい大切なもの。サカオのおかげで、みんな同じ場所に集まってくる。サカオがあると話し合いが進むので、サカオを囲んで部落のミーティングをすることもある。あと、ポンペイ人は、何か過ちを犯してしまったとき、すぐにその人のお家にかけつけて、サカオをふるまう。そして、「許してください。」と言えば、もう終わりさ。例え家族がだれかの過ちで死んでしまったとしても、相手がサカオを持ってきて許しをこえば、わたしたちはみんな許すのさ。

身内の命を取られても許すというのは、うそかと思いましたが何人かのポンペイ人が口をそろえて言っていたので本当のようです。サカオによって、ポンペイの人は怒りやうらみの気持ちをしずめているのだそうです。わたしは、そんなことは絶対に許せないだろうと思うのですが、そんな気持ちをずっと抱えて生きるのと、手放すのと、どっちが辛いんだろうと考えてしまいました。世界にはいろいろな考え方があるのですね。

さて、ポンペイ人にとってなくてはならないサカオのことを少し知ることができたでしょうか?

どんな味がするか気になるって?

飲むと、こんな顔になります。地元のポンペイ人も、まずそうに飲んでいる…。そうです、味はおいしいとはいえません。サカオはコショウ科の植物なので、サカオをなめると、くちびるがちょっぴりひりひりします。たくさん飲むと、とろんとしてきて、眠くなるそうです。ポンペイ人いわく、「サカオは味でなくフィーリングだ!」

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