JICA海外協力隊の世界日記

アンデスの田舎町から

学校休暇の課外コース 水泳教室

学校の長期休暇の課外コースの話題をもう一つ加えます。市役所の自分と同じ部署の同僚が水泳教室の先生を探していました。エクアドルには私と同じ県で水泳隊員として活躍しているJICAボランティアの吉川さんがいます。彼女のことを思い出し、無料で協力できるかもしれないと話すと、送り迎えの車も手配するから来てほしいと言われました。早速吉川さんに問合せをしたところ、最初の週だけなら大丈夫ということで中途半端ですが来てもらうことになりました。学校休暇の間はどこのプールでも水泳の指導員が引っ張りだこで忙しいそうです。ところで呼んだ手前、彼女に子供達を任してほっておくわけにもいかないので、私も水泳教室に参加して手伝うことにしました。こちらの写真は、私の町の市街中心地を背景にした吉川さんと、いつも仲良くしてもらっている同僚のエドウィンです。

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水泳教室が始まった時には、幸い正式な先生が決まり、吉川さんには補助の先生として入ってもらいました。吉川さんはコテコテの関西弁でそれがスペイン語にも混ざってくるのですが、誰とでも堂々と会話ができるのはボランティアの経験を積んでいるからなのでしょう。水泳教室では特に小さな子供達を相手に、幼稚園のお遊戯のようにウサギの真似をして飛び跳ねて見せながら水に慣れさせようとしているを見て、さすがベテランだと感心した次第です。

ところで去年の水泳教室では市内にいくつかある民間のリクリエーション施設のプールを使ったのですが、今年は、いくつかのプールを備えた市の施設を使うことになっていました。この施設は二年ほど前に完成した立派なものなのですが、残念ながら欠陥建築として使用認可が下りずにずっと放置されていました。そのために一時的な利用として給湯設備が使えず、水を温めることができない状態でした。

最初のうち子供達はプールに入れるのがうれしくて吉川さんについて水の中にいましたが、冷たくて途中でプールから上がってしまう子供が増えてきました。特に体の細い子供は耐えられないようで、残ったのは比較的ぽっちゃりとした子供ばかりになりました。吉川さんはグループでの指導は諦めて、二人ずつ子供の体を支えながらバタ足の練習をさせていました。吉川さんが面倒を見きれない子供達がプールの中にいるので、私も手伝うために我慢しながら水に入ることにします。吉川さんに教えてもらって子供達を支えながら泳がせて、プールの中を何度が往復しました。しかし冷たさで自分も長続きできずに、上がることになります。あとで水から出てきた吉川さんも寒さが染みているようで、こんなに冷たいとどうしようもないねと言っていました。

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翌週からは吉川さんがいなくなり私が参加する理由が無くなったのですが、冷たさに負けずに頑張っている子供達がいるのに、顔向けができなくなると思って続けることにします。参加する子供の数は、回を経るごとに少なくなってきました。正式な先生が別のプールで少し大きい子を教えている間、子供を励ましながら吉川さんの教え方で練習をさせていたのですが、一度水から出た子はもう気が失せてなかなか戻ろうとしませんでした。冷えた体を温めなきゃと思って、毛糸のポンチョを家から持って来て震えている子にかけてあげたりもしました。プールの水は少しづつでも自然に温まるかと思ったのですが、昼に温まっても夜に放射してしまうようで一向に変わりません。

そこで水を温める(冷やさない)方法が無いかと思って調べてみました。小さな幼児用プールならば、水を黒いビニール袋に入れて太陽にさらしておけば十分に暖かくすることができるようです。やけどに注意するようにとまで書かれていました。更に調べていくと、東南アジアのタイの大きなプールで黒いシートで覆って温めた事例があり、一条の光が見えた思いです。大きな黒いゴミ袋を切り開いて浮かべたり、いろいろと材料を試してみましたが、結局近くの資材屋で見つけた畑に敷くビニールシートを購入することにしました。小さな子の方のプールの広さは幅6m長さ8mで、シート代は15ドル弱です。市役所の担当者に相談するのも気が引けるし、しかも効果のほどはやってみないとわからないので黙って自前で用意しました。まずは子供達を震えさせずに楽しめるようにしたいこと、自分も震えたくないこと、それから本当に温まるのか興味があったので購入に踏み切った次第です。 冷たい水のせいで風邪をひいて拗らせたら薬代がかかるだろうし、未だ二度しか行ったことがありませんが、町一番の高級レストランのフィレミニオンステーキ(ワインをつけて20ドル)を我慢すれば良いと思えば知れてます。水泳の先生に手伝ってもらって、プールの水の上に敷きました。

敷いて二日後のクラスの時に水に触れると体温より暖かく感じ、最初は“やった”と思いましたが、しかし、さらに指を突っ込むと中は冷たいままです。ほんの少しだけ水温上昇に貢献した感じがありましたが、相変わらず子供達は寄り付いてきませんでした。 再びかぶせ一週間後、これが最後の授業の日になります。あいにく曇りの日が続いており、その日も曇っていたのですが、この間よりも温まった水の層が厚くなっていました。それでもまだ冷たいと子供達に言われましたが、自分で入ってみると我慢できるレベルになったような気がしました。 その日はもう一つの深くて大きいプールの水が汚れてしまっていたため、ここしか使えなかった事もありますが、結局15ドル払って最後の授業にだけ、ほんの少し(おそらく2度ぐらい)暖かいプールを提供できたという結果です。

おまけの話になりますが、町での水泳教室が終わった後に課外コースの絞めとして、昨年と同じく標高の低いオリエンテ(アマゾン)地方のプヨという町のプールに行きました。子供達もこれが楽しみで我慢していたのかもしれません。プヨはバスで2時間半ぐらいで、パタテでは週末に家族で遊びに行く所です。子供は50人以上いて、先生を含めて7名ぐらいの付き添いに私も入れてもらい、たくさんの親が見送る中で出発しました。ここには波のあるプールや、ウォータースライダー(滑り台)などがあります。午前中は、頼まれた監視役に徹して着替えずに、はしゃぐ子供達を見張り写真を撮ったりしていました。

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しばらくすると町のプールでも震えていた6歳ぐらいの女の子が、ここでも水から出て震えていたので、タオルでくるんで乾布摩擦をして温めてあげました。私には娘がいたので親心からの気遣いでしたが、今の日本だとこんなことを他人の子にしたら変態か不信者扱いをされそうで躊躇う所でしょう。

他の付き添いの多くが水着に着替えて一緒に遊んでいたので、途中から自分も仲間に入ります。すると付き添いの一人のエドウィンと子供達からウォータースライダーに行こうと誘われました。私はスリル系のアトラクションで気持ち悪くなってもどしたことがあったので、この類を避けていたのですが仕方無くついて行きます。高さが10m近くあり、ぐるぐる回るタイプと直線で一気に落ちるようなタイプの二種類がありました。結局両方とも皆からはやし立てられ滑ることになります。特に回転系のスライダーは、子供達に言われた通り胸に手をあてて体を真っすぐに伸ばしたフォームにすると、スピードが出て激しく体が振られ頭を左右にぶつけながら下って水に突っ込むので楽しいどころではありませんでした。どうやらそのせいで背中に擦り傷を負っていたようで、あとで子供が心配そうな顔をして大丈夫ですか?と聞いてきました。怖さと興奮の余韻で自分では気が付きませんでしたが、、、(終)

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