JICA海外協力隊の世界日記

アンデスの田舎町から

プレゼンテーション

パタテ市が市内で作られた製品の販売促進を行うために企画した、ペルチャ・パタテ―ニャ(“パタテの展示棚”)というプロジェクトの初めての会議が8月末に開かれました。ここに至るまで結構な時間を要したので、少し長くなりますが経緯と一緒に紹介します。

今年の初めに市の広報用のフェイスブックでプロジェクトへの参加者募集が行われたものの、全く人が集まらずしばらく手をこまねいているようでしたが、4月になってカウンターパートから私にプロジェクトにかかわるように話が回ってきます。その時点での企画内容としては、ペルチャ・パタテ―ニャという名称とパタテ製品の専用棚を地元のスーパーマーケットに設置するというアイデアがあるだけでした。そこで、“観光を促進するための地元名産品の開発“といった目的をとりあえず設定して、グーグルフォームを使って募集をかけました。これはその構想をしている時にメモしていたスケッチです。

ペルチャパタテ―ニャ初期イメージ.png

再募集を行ったとはいえ放っておいては誰も寄って来ないので、私が担当したジャムコンクールなどで知り合った方々に声をかけて、とりあえず10名前後の企業家を集めることができました。 そしてこの人達にプロジェクトで扱ってほしい製品をサンプルとして提供してもらい、展示モデルを作ります。さらに参加者を集めるためと、すでに申込をした人や関係者に気合?を入れるためです。この展示モデルは、パタテ観光のプロモーションで何度か使われることになりました。

しかし、再び次のステップが見いだせずに、しばらく停滞した状態が続きます。すると6月の初めに、カウンターパートから一週間後に会議を行うと告げられました。ようやく本格的に始まるものと思い、会議にあたり募集要項に載せた企画案を見直してみました。はたして観光土産の開発を目的にして良いものなのか、地元の人も良く知らないような製品は観光名物にならないのではないかと感じたからです。そこで、もう一つ別の企画案を考えました。そこでは、地元の定番製品を開発することに焦点を置き、“ペルチャ・パタテ―ニャ”という地域内のブランドを育てることを活動テーマとして位置づけました。当初の案が観光客という外部の顧客がターゲットでしたが、今回は地元の顧客向けなので、全く中身が変わってきます。地元の顧客向けの戦略としては、スーパーに出回っている大手メーカーや輸入品の大量生産品からの代替えを図ることになりますが、地元の製品を選んでもらう為に、手作りの良さとともに有機栽培による安全性をアピールすることを軸に置きました。ストーリーとして自然な流れだと思うのですが、さらに、安全性にからめて自分の活動テーマに設定しているトレーサビリティの導入と関連付けられないかなと思ったからです。この時の会議はプロジェクトの方向性を検討する目的だったようで、WWFSWISSAIDのメンバーが参加していました。彼らはペルチャ・パタテ―ニャの活動を通じて環境配慮の施策に導こうとしていたようなので、偶然ですが自分の提案と反りの合うものでした。しかし会議はその後続くことが無く、情報収集で終わった感じです。

その10日後には記者会見があり、以前の日記でも書きましたが何故か自分がペルチャ・パタテ―ニャの担当者としてインタビューを受けることになります。しかしそこから先にどう進めて良いのかわからず、再び停滞する状況が続いていたのです。

IMG_3438 rs.jpg

時々カウンターパートに相談しても、お互いに困ったなといった感じで進めようがなかったのですが、ある時また突然、二週間後に会議があるからそこに出るように言われます。それが日記のタイトルのプレゼンテーションの話になります。この会議にはプロジェクトへの応募者を集め、ウニアンデス大学から事業をサポートする学生が来ることになっていました。ウニアンデス大学は、エクアドルではとても高く評価されている大学のようです。例によって会議の具体的な内容や議事予定も分からなかったのですが、プロジェクトについて今まで検討されてきた事と自分が進めているトレーサビリティやジャムコンクールに関わる活動についてプレゼンテーションをするように指示を受けました。6月の会議の資料で私がトレーサビリティを取り上げていたことから、その点は理解してくれているようです。

きっとカウンターパートもまだ何をやるべきなのか迷っている状態だと思い、方針を設定するようなつもりでプレゼンの資料作りをしました。プロジェクトの目的を参加者皆で考えてもらって、しっかりとした目的意識を持つようにし、その上で考えられる活動テーマの候補、考慮すべき要素など、運営方針や進め方を示唆する形で、資料をまとめました。その中には私の活動テーマのうち、まだほとんど着手できていない“地域ブランディング”について、その目的や役割を参加者の頭の中に種をまくようなつもりで織り込みます。

プロジェクトに絡めたブランディングのコンセプトは、日本でおなじみの地産地消と循環型農業にトレーサビリティを組み合わせたものです。地産地消と循環型農業は、パタテでは誰もが意識せずに普段行っていることなので、そこに価値があって自分達にアドバンテージがあることに気が付いてほしいと思いました。そして取り組むべき課題は、このコンセプトをフィロソフィとして身に着け際立たせながら、いかに顧客に伝えていくかです。

(パタテ市の循環型農業のイメージ)

参加者は手作りジャムなどを、フェスティバルなどのイベントがある時に販売しているような小さな事業者が多いいので、これから事業を拡げていく為の起業支援が必要になってきます。 単純な販売企画やプロモーションといった個々の戦術ではなくて、投資計画、経理、会計などファイナンスを含んだ全体的な事業戦略から始める必要があると思われます。エクアドルの商習慣や法令を知らないといけないので、私の知識や経験では無理でしょう。幸いのこの点はウニアンデス大学がついているので、学生さん達と勉強をしながら身に着けることが期待できます。

資料は前日にほぼまとまったので発表の練習をしなければと思ったのですが、夜になってお腹が痛くなってきました。いつもの食あたりとは違う感じです。当日になり午後の会議に備えて、事務所で練習の続きをするつもりでしたが、どんどんひどくなってきます。 どうやらこのプレゼンが原因のようで、この歳になって初めてメンタルな胃の痛みを体験します。 練習がままならない状況になったので、11時頃に気分転換に外に出てみましたがダメでした。そして会議場の準備を始める時にお腹が痛いと同僚に伝えたところ、課内の一人が黙って外に出かけて行くのが見えたのですが、ありがたいことに会議場に二種類の薬を持って来てくれました。2時から始まる会議を前にして、やってきた知り合いの事業者達と握手を交わしたりするうちに、薬が効いたせいか腹痛が治まってきました。その後、会場には学生も集まってきて40名前後になり、会議室からあふれるぐらいになります。

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カウンターパートの開催の挨拶と主旨説明、大学関係者数名の挨拶のあと、自分の番が回ってきます。プレゼンは、参加者への質問を交え、受け狙いの部分もうまくハマり、手ごたえを感じながら順調に進んでいました。しかし、パワーポイントで40ページある資料は内容が盛りだくさんだった為に、30分ほどたった所で大学側から途中で終わりにしてほしいと言われてしまいました。まだ3分の1ぐらいあって結論を残した状態で残念ですが、また、別に機会があれば良いなと思っています。その後会議では、すぐに学生と事業者との間で一対一の面談に入っていきました。会議が終わってから10日ほどたってから、出席していた事業者の一人が発表に興味を持ったので資料が欲しいと、事務所まで訪ねてきてくれたのはうれしかったです。

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