2024/10/15 Tue
生活
事務所のトイレ
パタテ市役所の建物では、各事務室にトイレが一つづつついています。昨年JICAの事務所が引っ越してきた新しい高層建築では、廊下に出ると男女それぞれのトイレコーナーがあるおなじみのプランですが、エクアドルの一般的な事務所では部屋ごとに洗面と鏡のついたトイレがあるのが普通のようです。自分のいる部署には今は9名が在籍していて、当初は音が事務室に響かないかと気になりあまり落ち着かなかったのですが、やがて音漏れを気遣う気持ちが失せてしまい、年を取って頻尿気味なので近くにあることを便利に感じています。
このトイレには他にも何かと気になるところがありました。 私が来た時からドアノブが外されていました。従って鍵はかからないしドアノブの穴が開いているので、誰かがトイレットペーパーを詰めてふさいだりしています。ドアは自然に内側に開いてくるので、足で押さえながら用を足さなければなりませんでしたが、これは自分が細工して押さえる必要は無くなりました。 その他、床に時々水たまりができている、トイレの紙やハンドペーパーが切れていることが多い、壁についている液体石鹸の容器はいつも空っぽである、しばしば物置場代わりに使われていてコートが掛かっていたり空のビール瓶の入った段ボールが置きっぱなしになっている、小さな洗面台にコーヒーカップなどが置かれて蛇口が使いにくい、そして窓が無い上に以前は床の水たまりが見えないぐらい天井の蛍光灯が暗かったのです。
トイレの天井高は3m以上あるのですが、この天井灯がある時スイッチを切った瞬間にポッと音がして、それっきりつかなくなりました。トイレから出てすぐに、部屋の人に伝えたのですが、あまり関心を引きませんでした。 使う段になって、改めて電球が切れていることを思い出して、不便を愚痴にするのですが、そのままの状態が二週間近く続きました。女性は携帯電話のライトをつけて使っているようです。 市役所の設備担当の人が部屋に寄る度に伝えるのですが、今度交換しますとか、はしごが無いと届かないなとか、新しい電球はあるの?といった感じでなかなか対処してくれません。 やがて職員の一人が電球を買う為と言って、皆から少しづつお金を集めました。役所の施設ですが交換するための申請手続きが面倒なのかもしれません。しかしはしごが無いと交換できないので、いつ買うのかわからない状況でした。
そこで一つ仕事の区切りが付いた時に、電球交換に取り組むことにしました。頻繁に使う自分が一番不便を感じていることもあります。 天井に手を届かせる為には1m以上は登らないといけないため、最初は足掛かりになるような物を探しましたが見つかりません。ふと頭に浮かんだのはアボガドの実を取るために竹竿の先に針金と籠をつけた道具でした。電球を棒を使って外すことができないかと考えたのです。今ついている蛍光灯の形は丸くなかったので、回転させるのは難しくはないはずだと思いました。そこで、トイレに置いてあった箒の柄にペットボトルの上の方を10cmぐらいカットし、口の方から差し込んでテープで取り付けます。さらにそこに電球をグリップするための雑巾を突っ込んでテープで固定して治具を作りました。
頭で描いた通りに、電球を覆った雑巾が引っかかって電球を捻ることでき、外してそのまま下まで降ろすことができました。外した電球は念のために家の電灯のソケットに差し込んで、本当に切れているのか確認しました。 翌日お金を集めた人が事務所にいないかったので、自分で電球を買いに行きました。1.5ドルで120w相当の白熱球型のLEDランプがあり、一坪も無い空間にはどうかと思いましたが明るすぎて困ることは無いし、中で化粧をするにはありがたいはずです。レジに持っていくとレジ横の壁に備え付けてあるソケットに入れて、点灯の確認を行いました。白熱灯の品質が安定していなかったころの名残なのでしょう。
事務所に持って帰り、箒の柄に取り付けたペットボトルに電球をはめ込もうとすると、小さくて入りません。すると、いままで様子を見ていただけのダニエルが、ペットボトルに切れ目を入れるんだとアドバイスしてきました。ようやく一人の作業ではなく仲間ができたのでうれしく思い、うなずきながら電球がちょうど収まる程度にカッターで切れ目をいれました。 これも奇跡的にうまく電球をグリップしてソケットに収まり、無事に点灯しました。ダニエル以外の皆はいつの間にか点くようになったとしか思っていなので、便利にしてあげたことを密かに満悦している次第です。とにかく以前よりはるかに明るく快適に使うことができるようになりました。
ところで、最近は水不足で水力発電に支障が出ており、9月半ばから全国的に午前中及び午後に5時間づつ停電になる日が続き、今も毎日数時間電気が使えません。そのため再び携帯電話を持ってトイレに入る場合がでてきました。電気の供給制限が来年まで続くようなので、今年はひっそりとしたクリスマスになるかもしれません。
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