JICA海外協力隊の世界日記

アンデスの田舎町から

ジャムコンクール その3

昨年初めてコンクールを開催した時の事から今年の審査経過まで、いままでお伝えしてきました。そして、コンクール全体の中で、市長を始め役員の方に出席して頂く表彰式が、最も大事なイベントになります。この日に行う入賞順位の発表などのプログラムを作ることと、表彰状と記念品、メダルの準備作業がまだ残っています。

入賞記念品として小鳥の彫刻の制作をお願いしたアリリオさんのことですが、昨年は作っている様子を時々写真で知らせてくれていたのに、今年は何も連絡が無くて心配になってきました。そこで表彰式の10日程まえに問合せをしたところ、体調を壊してだいぶ前から寝込んだままだと、いつも以上に気弱な声が返ってきました。すでに70歳半ばを超えているので、この作業のせいで大事に至っては大変です。記念品の方は気にせずに養生に専念してくださいと伝えました。そしてアリリオさんが回復するのをしばらく待ってみようと思いつつも、別の候補が頭に浮かんできました。インディヘナ(原住民)の町として有名なサラサカに、Wさんという親しい手織物の作家がいて、その人にパタテ市の旗を作ってもらえないかと思ったのです。制作時間を見込むと急いだ方が良いと思い、翌日さっそく連絡をして様子を聞いてみました。そして了解の返事をもらったことから、その日のうちに具体的な打ち合わせの為にWさんの家に行き、旗の色柄と大きさを伝えて正式に制作をお願いしました。

こうしたことから、アリリオさんには代替えの物を手配できたので今回は使わないことと、制作途中の作品は来年のイベント向けに検討させてほしいという内容のメールを送りました。そして次の日、同僚のダニエルに電話でも伝えてもらったのですが、予想外に、小鳥を彫る作業は終わっていて後は色を塗るだけになっているとの返事があったのです。体調の方はわかりませんが、仕事をまっとうする気でいるようです。こちらから協力をお願いしていることから、当初の通り彼の作品を採用することにし、引き取りに行く日を決めてそれまでに完成するように頼みました。

サラサカのWさんへ依頼した物について、市役所の同僚は支払いがまだだったのでキャンセルしても問題ないだろうと思っていたようですが、こちらも急いで作るようにお願いしたこともあり注文したままにしておきました。最初は困ったなと思ったのですが、パタテ市の旗だったら必ず欲しがる人がいるはずです。そしてすぐに渡したい人が何人か浮かんできました。Wさんの質素な生活を見ているので、何とか手助けしてあげたいといつも思っていたのですが、かといって特別な理由もなく彼の製品を買うことには抵抗を感じていました。しかし仕方なく引き取った製品ならば、他の人にプレセントしたりしても何も違和感は無いでしょう。手織りの旗の紹介販売にもつながり、彼の役に立ちそうな気がします。このように、注文済の5本の旗の使い途にも目途をつけて、一件落着した気持ちでいました。しかし、アリリオさんの所に小鳥の作品を引き取りに行く前日になって、やっぱり体調が回復せずに完成できないとの連絡を受けます。周りの人が動揺している気配を感じましたが、私は内心ほっとし、皆には旗があるので大丈夫だと伝えました。

コンクールにおけるメダルの授与はエクアドルでは必須事項だと言われ、昨年はパタテ市内で2件のお店を回って決めました。去年頼んだお店の人に通りで出会った時に、今年も開催するのでお願いしますと伝えていたのですが、今年から同じ部署に入ったベテランの同僚が手配することになり、隣町で調達することになりました。前回よりも見栄えのよいものが出来上がったのですが、前のお店の人に出会ったときにどう説明したら良いか少し困っています。

メダルのオリジナル案

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9/27の表彰式にてコンクールの経過と最終結果を発表するために、前回と同様にパワーポイントで資料を準備していました。人気投票の結果の報告から、二次審査の審査員の紹介と審査経過、及び金賞を受賞した人への記念品として用意したパタテ市の旗を紹介したうえで、金銀銅のランキングとその他の二つの賞の受賞者を発表し、メダルなどの贈呈を行う流れです。ところが、エクアドルでは9月半ばから計画停電が行われていて、この日も表彰式の時間は停電でプロジェクターなどが使えず、薄暗い中での開催になることがわかりました。そのため、少しでも会場の雰囲気を盛り上げるために、人気投票の時に票を貼っていた集計用の模造紙を会場内に掲示したり、配布資料を準備したりしていて、プレゼンの練習もままならないままに式の時間になりました。

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会場には、入賞の決まった人達、市長、市役所の理事他、今後の協力を得るために声を掛けたコミュニティの代表者、マスコミ関係者数名が来ています。前回と違って、広報の担当者が司会を務めてくれました。自分が作ったプログラムに従って進んでいきましたが、肝心の自分が準備不足で、さらに疲れのためか普段使っているスペイン語もなかなか口に出てこない状況です。すでに顔見知りになっている入賞者の方々が、自分のランキングのことよりも私の話をはらはらしながら聞いているように思えました。それぞれのランキングを発表した時に、受賞者によっては20分くらい挨拶のスピーチをすることもあって、時間の管理には手が付けられず予定をオーバーします。しかし終わってから、入賞者みんなから一緒に記念写真を撮らせてほしいと頼まれたことで、なんとか今年もこのイベントを終えることができたなと感じました。イベントの経緯と結果はウェブページに記録しておきましたので、来年もこれらを参考にして続けてもらえることを祈っています。

(ウェブページのURL

https://zentousan.my.canva.site/concurso2024

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表彰式の後には入賞者を祝うための食事会があります。賞与の一部として特別な場にしたかったので、昨年は郊外の眺めの良いレストランにしてもらいましたが、今年は市の予算の中で行うこともあって街中の食堂になりました。さらに、相談にのってくれていた同僚の人達の感覚としては、あまり食事の内容は重要ではないようで、普通の定食メニューになります。去年も予算が無く抑えたメニューだったので、少しでも印象的な食事にするために、自分の家から豚の角煮を作って持ってきて、レストランのお皿の隅に少しづつ載せてもらいました。ついでに、フェスティバルの時に資金稼ぎのために売ろうとして作った箸を、各自のナイフとフォークと一緒に並べ、料理が出てくるまでの余興として箸の持ち方を教えて、楽しんでもらうことができました。今年のメニューは昨年以上に普通なので何とかしたいと思い、デザートのチーズケーキを作ることにします。今年の3月にパタテ市に属するEl Sucreというコミュニティのフェスティバルの為に、地域おこしメニュー?として考案して”Sucre de Sucre”と名付けたものです。この世界日記でその時の様子を紹介したことがありますが、ちょうど地元で生産可能な材料の乳製品(ヨーグルト、生クリーム)とキイチゴのジャムを使います。こちらではチーズケーキは珍しく話題性がありそうなことと、火を使わずに簡単にできることから地元の特産銘菓にならないかなと思って提案したものでした。表彰式の前日、家に帰ってから参加者分(28個)のカップ入りのチーズケーキを2時間ほどかけて、夜7時からの停電の中、懐中電灯の下で作りました。これが表彰式のプレゼンの練習がおろそかになった、もう一つ別の要因でもあります。チーズケーキと一緒に名前の由来とレシピを載せたチラシを配り、コンクールに入賞した方から頂いたジャムを載せて食べてもらいました。生憎市長は甘い物が苦手とのことで、少しだけ味見をしてくれましたが、提案内容には興味を持って聞いて頂けたようです。他にも今回のジャムコンクールに際してはいろいろとトラブルがありましたが、同僚を含めた皆さんの協力があって実現できた次第です。(完)

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