JICA海外協力隊の世界日記

アンデスの田舎町から

鶏などのいる風景

私の活動している田舎町のパタテでは、役所や食堂などで働いている人も自分の畑を持っていて、大抵農業との副業生活をしています。仕事の前後や合間に畑の手入れをし、果物などの作物が採れる時期になると、道端で売っていたりします。知り合いだと棚に並べたミカンやアボガドをくれることもあれば、逆に挨拶だけで済ますことが出来なくて一袋買うこともあります。なお畑だけでなく多くの農家が鶏なども飼っていて、町の中心地近くでも鶏や牛の声が聞こえてきます。

私が住んでいる所は市街地のはずれにあり、いつも鶏の鳴き声で起こされます。 しかし朝というよりも深夜の1時や2時頃のこともあり、また一度鳴き始めると1分もたたずに繰り返すので、明るくなる前に鳴き止んでくれることを祈りながら、ベッドの中で寝がえりをうつことになります。以前は朝5時頃に隣の家の鶏の鳴き声が耳に届き、頃合いよく起きていたのですが、一か月ほど前に大家さんが私の部屋の前に囲いを作って鶏を飼い始めたのです。そのうち変わり種が1羽と更に一つがいが追加されて、いずれかの雄鶏によって夜中に起こされるのです。このところの計画停電で街灯がついたり消えたりすることが原因かもしれません。鶏も迷惑していると思えば少しだけ諦めが付きます。昼間は5羽がいつも追っかけっこをしていて、見ているだけではつまらないのでコメをときどき撒いていると、いつの間にか自分の姿を見ただけで近寄ってくるようになりました。 鶏と一緒に、使われていなかった犬小屋の中には、鶉の親子6羽も加わりました。が、つれて来られて2日後ぐらいに1羽が猫に連れ去られてしまったようです。鶉はすぐに大きくなって、親子の見分けがつかない5羽になっています。

私が来る前から家には黒猫がいて、赴任して来たばかりの時に窓を開けっぱなしにしていたら、勝手に部屋に入り込んでいたことがありました。食べ残しなどを与えているうちに、私の姿を見ると足元でひっくりかえってゴロゴロとのどを鳴らすようになりました。しかしこの猫が鶉を一羽かすめ取った犯人に違いありません。囲いから鶏が飛び出している時にはすぐに狙って来るし、囲いの中にも入ったりするので、その都度けたたましい鶏の鳴き声が響いてきます。窓越しに騒ぎが起こっているので、ついつい気になって猫を止めに入ります。こんな時は私の姿を見ると、すぐに逃げて行ってしまいます。

IMG_5582 rs.jpg

猫とともに庭にはリチャードとイッシーという犬がいます。これも私になついてきて、朝暗いうちから玄関ドアをガタガタとさすって餌をねだりにくることがあります。この二匹の他にも、エンリとマウリの兄弟犬が裏庭にいるのですが、元気が良すぎて問題を起こすので隔離されています。それでも私の匂いを嗅ぎつけると遠くからク~ン、ク~ンとしっぽを振って、私が近寄ってくるのを待っているのです。かわいがりたいのですが直ぐに飛びついてくるのとノミにたかられることが気になって、見つからないように気をつけています。

ある日の夕方に大家さんの息子で、JICAボランティアの私のカウンターパートとなっているダニーロが、子供達と一緒に雄雌の子山羊をつれてやってきました。猫を少し大きくしたぐらいで、まだ草がたべられずに哺乳瓶のミルクを飲んでいました。メスの妹?の方は人懐っこく私に纏わりついて、膝の上にのるとそのままじっと離れようとしません。兄?は食欲旺盛で妹に与える哺乳瓶を横取りしたり、元気に動き回って時々けたたましい鳴き声を上げて驚かせます。ダニーロは畑のある郊外の家で、雑草を駆除するために飼い始めたと思われます。しかし飼っている犬との相性が悪いようで、そのうち耳をつんざく声に耐え切れずに山羊のスープにされる姿を、思い浮かべてしまいました。Chivoと呼ばれる種類の山羊なのですが、スープは美味しいそうです。

日本の都会の暮らしでは、動物と触れる機会が少なくなってきましたが、ここにいると私が幼少の頃を思い出します。祖父母と一緒に過ごした東京の山の手の実家のまわりは、今は住宅が建て込んでいますが、当時はいくつもの空き地があって防空壕の穴が残っていたことや、ボンネット型のバスが未舗装道路を土埃をあげてやってくる光景を覚えています。祖父母はそこで養鶏場をやっていたので、当時の私には巨大だった鶏の怖い記憶が頭から離れていません。鶏とともに手漕ぎポンプの井戸と洗濯板のあった当時の景色は、パタテの農家の姿と重なるところがあり、ここにいると60年前にタイムスリップした感覚です。ボランティアとして開発を支援する立場ではありますが、一方で私の幼少の頃の記憶のような、のんびりとした懐かしい生活の風景がこのまま残っていてほしいと思っています。

DSC05760 rs.JPG

後記:9月半ばから続いていたエクアドルの計画停電は、クリスマスの週から一旦行われなくなりました。又、部屋の前にいた鶏の多くが裏庭に移されて、以前の私の生活が戻ってきています。

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ