JICA海外協力隊の世界日記

アンデスの田舎町から

少し長い一日

私の活動拠点のパタテ市があるトゥングラウア県で、今年は8つの市が参加する男女の都市対抗サッカーが行われました。どこの市も同じだと思いますが、メンバーは役所に勤めている職員達です。4月初めに盛大な開会式があった後、仕事が終わってから各町に移動して試合を行ってきました。私も試合に出るように誘われましたが、とうてい出られるレベルではありません。サッカーはここでは誰もが玄人はだしで、社会生活に必要な標準スキルのように見えます。 

6月14日に、夕方からパタテ市で決勝戦が行われました。 幸いパタテの女子が勝ち進んでいたので、皆が会場の準備とともに応援に行くことになります。が、この日は午前中にパタテ市を紹介する為の記者会見がありました。数日前に私のカウンターパートのダニーロから、私が手伝っているプロジェクトに関係があるので同行するように言われていたのです。後で市のFacebookに掲載されていたポスターに気が付きましたが、この時は行くまでどんなイベントなのかわかりませんでした。

このプロジェクトの会議が10日ほど前にあり、その討議事項について私がまとめた資料を、2部持っていくようにダニーロから指示を受けました。 “ペルチャ・パタテ―ニャ”(パタテの展示棚)という名前のプロジェクトで、市長自身が命名したようです。

いつもの記者会見では、写真や名産品を展示した中で市長と関係者がプレゼンテーションを行い、その後で記者がインタビューを行います。いままでに何度か手伝ったのですが、その時はアンバトの県庁の建物を使って10名ぐらいの記者が来ていました。でも今回は少し様子が違ってパタテ郊外にあるレストラン兼イベント会場で行われました。クリスという司会者が放送局と連絡を取りながら、生放送でインタビューを行ったのです。

最初、市長と公共サービスの部長が、クリスの質問に答える形でパタテの魅力を説明し、ペルチャ・パタテ―ニャのプロジェクトについてもそれぞれが紹介していました。特に市長はこのプロジェクトを、トゥングラウア県全体の発展に寄与する先行事例にしていくつもりだと抱負を述べていました。カウンターパートのダニーロからは詳しい説明が無いままだったので、それを聞いてとてもやりがいを感じた次第です。

画像4.jpg

そのあとは、私の同僚のイベント担当者とReina de Patate(パタテの女王)へのインタビューがあったのですが、ダニーロから次に自分がインタビューを受けるように言われます。急な依頼を頻繁に受けているので、いつもそれなりに用意をするのですが、今回は心構えができていません。少しボーとしたままインタビューの席に座りました。 結果は言うまでも無く悲惨なもので、何度も言葉に詰まり、同じ内容を繰り返すような様です。そしてパタテの魅力を伝えなければならないのに、プロジェクトで取り組もうとする現状の問題を話題に上げてしまいました。クリスが話の方向を変えようとしていることに気がついたのですが、そんなに器用に対応はできません。最後の締めの言葉も出ずにがっくりしながらインタビューを終えた次第です。ダニーロから、”Muy bien, muy bien”(良かった、良かった)と言われましたが、慰めにしか聞こえませんでした。

落ち込んだまま午後を事務所で過ごして家に戻りました。7時からの女子決勝の応援に行くような気分ではありませんでしたが、それでもグラウンドからは開会式と男子決勝の応援の声が家にも響いてくるので、とりあえず顔を出すことにしました。まだ、決勝の後半が始まったばかりのようで、中継のアナウンサーが大音量で実況を伝えていて、応援にきた選手の家族などで観客席は賑わっています。箱を抱えた売り子が行き来し、パタテ市役所の女性職員達も声を張り上げてソーセージの入ったフライドポテトやビールなどを売っていました。すぐに顔見知りから声がかかり、同僚の座っている場所を教えられ観戦の仲間入りをします。自分の町のチームではありませんが、迫力のある試合で周りの熱気が伝わってきます。結構な年齢のはずなのに持久力があって激しく競い合い、接触して足を押さえて転がっていても、又立ち上がって参加する姿には尊敬の念が湧いてきました。しかし、そのうち足をつって倒れる人が増えて、頻繁にタイムになる中で試合が終わります。その後すぐに表彰式が行われ、それぞれのチームにカップと各選手にメダルが渡されていました。そして引き続き女子の試合が始まりました。

IMG_3447 r.JPEG

正直、ここまで勝ち上がったのを不思議に感じていたのですが、この日はとても動きが良くて見直しました。 普段職場で会う人が別人のようで、高く上がってきたボールをうまく足元に落として相手をかわす姿を見ていると期待が高まってきます。前半早々、先に一点を取られてがっかりしたのですがその後2点返し、後半にも1点を追加する展開です。点が入るたびにラッパや笛が鳴り響き、隣や後ろからカップに注いだビールやワインが何度も回ってくる中、皆と一緒になって応援しました。試合が終わった時は、市長も混ざって大勢がグラウンドに下りていき、女子メンバーとハグしながら写真を撮ったりしています。自分は観客席から眺めていたのですが、グラウンドにいたダニーロから手招きされ、下に行き皆の仲間に入ります。身近に優勝カップの授与を見たうえに、メダルが余ったのかサポーターとして私も引っ張り出され、メダルを首にかけてもらいました。少し長い一日になりましたが、午前中からの落ち込みが夜の盛り上がりで解消された次第です。

mancomunidad site s.jpg

20240614 2r.jpg

SHARE

最新記事一覧

JICA海外協力隊サイト関連コンテンツ

  • 協力隊が挑む世界の課題

    隊員の現地での活動をご紹介します

  • JICA 海外協力隊の人とシゴト

    現地の活動・帰国後のキャリアをご紹介します

  • 世界へはばたけ!マンガで知る青年海外協力隊

    マンガで隊員の活動をご紹介します

TOPへ