JICA海外協力隊の世界日記

アンデスの田舎町から

パレード その3 (インティライミ)

インティライミ(太陽の祭り)は、ペルーやボリビアのものが良く知られていますが、インカ帝国が支配していた広い地域で行われている祭りです。冬至(夏至)と関係があるようです。日本だと6月21日が夏至の日でしたが、インカ帝国は南半球に位置していたので冬至にあたります。インディヘナ(原住民)がたくさん住んでいるサラサカという町では、インティライミは最も重要な年間行事の一つで、今年はその翌日の6月22日土曜日にメインのイベントが行われました。 

私が住んでいるパタテ市がこのイベントのパレードに参加するので、私も又、合気道の道着を着て出ることにしました。同じようなパレードの話を今までに何度も書いて恐縮ですが、今回も少しお付き合いください。

皆はパタテを10時に出発することになっていましたが、サラサカの知り合いのWさんに熱心に勧められていたこともあって、一人で早めにサラサカに出かけました。朝9時前、まだあまり人が集まっていない町の中心の教会前広場で、10人ほどの音楽隊の演奏が始まりました。この日の行事の一部のようで、そのうち演奏をしながら移動していきます。ついて行ってみると20~30人ぐらいの民族衣装や仮装した人達が後を追いかけ、何軒かの家を訪ねては皆でその家の周りをぐるぐると回っています。

一行の中にはお酒を持参していて他の人に勧めたり、ビール瓶を片手に持ってフラフラと踊りながらついて行く人もいます。隣で見ていた人が、最近亡くなった人がいる家を巡っていると教えてくれました。最後に訪れた家では、世帯主らしき人が一行を取り仕切り、ついてきた人達は10~15回ほど周りつづけ、それから音楽隊の演奏でダンスが始まりました。まもなく食事のようなものが振舞われていましたが、そろそろメインのパレードが始まる時間になったので、その場を後にします。

パレードの出発地点に着くと、すでにパタテ市のダンサー達がリハーサルを行っていました。 早速歩道の片隅で持参してきた合気道の道着に着かえ、動き出した列の仲間入りをしました。先月、別の町で道着で参加した時と同じように、道沿いで多くの見物者が手を振ってくれます。教会広場の近くまで来ると、町で唯一の信号機がある交差点の歩道橋から、“セニョール・スズキ”と呼ぶ声が聞こえてきました。見上げると、その中で手を振っているWさん夫婦とその友達が見えました。

今回は3キロ近くの長いコースで、終着点にはパレードに参加している他の町の役員さんなど来賓の為に、仮設ステージが設けられていました。その向かい側は町の共同墓地です。私に話しかけてきた若い人が、サラサカの文化を象徴する場所を見せたいといって向かおうとしたのも墓地の方でした。イベントの為、中に入れなかったのですが、きっとお墓以上に彼らにとって大切な物が見れたのかもしれません。さてこの若い人は顔を黒く塗り黒っぽい服を着て、兵士のような帽子をかぶって、重たい鈴の付いた襷を肩に掛けていました。後でWさんから聞いたのですが、征服者がアフリカから連れて来た人たちを、サラサカの人が(?)奴隷から開放したという言い伝えがあって、その出来事を表現しているとのことでした。そういえば顔を白く塗って鼻や頬を赤く塗り、白い上下の服の人も多く見かけましたが、きっと白人の征服者を表しているのでしょう。インディヘナの町だけに、インカ帝国が滅びた16世紀の出来事を忘れないように今も受け継いでいるように思います。

パレードの各グループは、観覧席の前までたどり着くと来賓に向けたお披露目を行っていたので、30分以上順番を待つことになりました。その間この若い人は私にずっと話かけ、日本がしっかりと自立した国で素晴らしいと繰り返し賞賛し、エクアドルの抱えている問題を吐露するところを、半分想像力で補いながら受け答えを続けました。そして彼の仲間から一緒に写真を撮るように頼まれたりするうちに、今度は飾りがいっぱい付いた王様用の馬に乗るようにせがまれます。断れる雰囲気ではなく言われるがままに差し出された兵士の帽子をかぶり、鈴の襷を掛けて馬にのぼりました。彼らがはしゃぐので周りの注目が集まりますが、居直るしかなく、渡された剣を片手に万歳をしたり手を振ったりしました。きっと遠くからも見えたでしょう。パタテの同僚も近寄ってきて他の人達と一緒に写真を撮ってくれました。この写真は後でパタテ市役所のFacebookに掲載されたので、それを見て別の部署から私の部屋に報告しに来た人がいました。又、時々チョチョスという軽食を買う屋台のおじさんや、公園で風船やおもちゃを売っている人からも見たよと声を掛けられました。

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