JICA海外協力隊の世界日記

アンデスの田舎町から

学校休暇の課外コース ハイキング

学校が7月の初めから長期の休みに入ったので、子供達向けに休暇中の課外コースが開かれています。去年もいくつかのコースの手伝いをしたのですが、今年はハイキングと水泳に参加しています。多くの子供が両方のコースに参加しているので、皆とすぐに顔なじみになりました。

8月2日のハイキングは三回目で、いつものように6~7人ずつのグループに分かれた後、引率のエドウィンが「今日は6~7キロぐらい歩くよ」と子供達に心構えをさせて山に向かって出発しました。早速自分と同じグループに入った一人の女の子が、“スズキ”と声を掛けて手をつないできました。 その後1時間ぐらいずっと女の子と一緒で、彼女が一人で私に話かけてきます。 私は話を聞くだけで目一杯でところどころ理解できた事に相槌を打っていただけですが、女の子はうれしそうでした。 そして自分の娘の手をひいていた頃を思い出して懐かしくなりました。

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舗装されていない農道に入ってしばらく進むと、80cmぐらいの幅の灌漑用水路があって、30~40cmぐらいの深さで勢いよく水が流れています。山の中を貫いている小さなトンネルから流れてきていたのですが、この下の斜面を覆うアボガドなどの果樹園の水源となっているようです。引率のエドウィンは、そこで持ってきていたサンダルに履き替えて水路の中に入っていきます。良く見ると長靴を持って来て履き替えている子供達がいるので、あらかじめ知らせてあったようです。奥のトンネルの中に入って探検するのが今日のコースだということがわかりました。勢いが強い上に山水で冷たい為に、足を突っ込んだ後、悲鳴を上げて道路に戻る子供達がいます。 それでもエドウィンは子供らを追い立ててトンネルの中に入っていきました。

躊躇している子供達がトンネルの入り口にいたので、自分も意を決してズボンの裾を上げ靴のまま飛び込みます。そしてトンネルに向かうと“スズキ!”と声を上げてついて来てくれました。高さ2m幅1mぐらいの長い一直線のトンネルで、先の方に星のように光が見えるだけです。かなり水の流れが速く深さもあり、時々水の中の大きな石があってつまずいたりします。いくら歩いても先に見える光の大きさが変わらず、振り返ってみても入り口からの光はあまり小さくなっていないのでがっかりしました。水の冷たさも相まって恐怖感が少しずつ高まってくるのが自分でもわかります。子供達はなおさらでしょう。ようやく中間ぐらいまで来た頃でしょうか、後から付いてくる子供達が心配になったので途中で止まり、子供達に先に行かせて後ろの様子を見ていました。だいぶ距離が空いた後方に何人かいるのが分かります。そこでそちらに向かってしばらく戻っていくと、6人ぐらいのグループがようやく追い付いてきました。戻ってきた自分を見た子が“スズキ!”と声を上げ、安心する様子がうかがえます。グループの中に付き添いのルイスがいたのは良かったのですが、小さな女の子を背負っていました。彼女はどうやら水の中で転んだようで上着が濡れており、トンネルの寒さでルイスにしがみついている様子でした。彼が最後だというので、少し安心して一緒に動き出します。

声を上げてすがってきた女の子と手をつなぎながら、人影でわずかに見え隠れする前方の光を目指して進みました。時々“ヤッホー”と叫んで皆を元気づけたり、振り返って女の子をおんぶしているルイスの様子を確認します。やや光が大きくなってきたかなと思っていると、その光の方からエドウィンの掛け声が響いてきて、だんだんと聞き取れるようになりました。外から覗いている子供の姿が見えてくると、気持ちも明るくなります。トンネルの出口部は、水路に土砂の進入を防止するフタがかぶさっていたので、さらに身をかがめながら7~8mぐらい進んでようやく地上に出ることができました。出た所はちょっとした平な所のある山の斜面でとても景色が良く、先に着いた子供達はお菓子を食べながらくつろいでいます。ルイスがおんぶしていた小さな子は震えながらお菓子を食べようとしていたので、自分の持ってたジャケットをかぶせてあげました。

お菓子やミカンを子供達から分けてもらって自分も一息ついてから、これからどうやって戻るのかなと思っていたところ、引率のエドウィンが“出発するよ”と声を掛けました。まさかと思っていたのですが、又トンネルに入るとのこと、帰りは下りで水に押されるので楽だと言うのです。一緒についてきたお母さんを含めて何人かの子供は嫌がって、道路に出て通りがかりの車を拾って帰るようです。再び意を決して水路の中にはいりましたが、帰り途では恐怖感は消えていて、ほとんど記憶に残らないぐらい楽に元の入り口に戻ることができました。

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めちゃくちゃ長く感じたのですが、エドウィンに後で聞くと1kmぐらいだとのことでした。でもよくあんな子供達を連れて行ったなとエドウィンの気楽さと勇気?に感心しました。いつも日本と比較してしまうのですが、今の日本だったらPTAの声が心配でできないでしょう。でも、戦前や戦中だったら安全よりも鍛錬の方を優先して、このような事がむしろ奨励されていたのではないかと思います。このごろの不安な世界情勢で、ついそちらの方に思いが及んでいきました。

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