JICA海外協力隊の世界日記

アンデスの田舎町から

子供絵画展と絵画コンクール

最初に子供達の絵の魅力を伝えるために、幾つか美術評論家風に作品を紹介したいと思います。

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太陽か月かわかりませんが、赤くて少し角張った大きな塊がどっしりと構えていて、描かれているものに命を与え、何かが蠢いている気配を感じます。大人びた暗さと絵具の厚みは子供の絵とは思えないのですが、色や形にとらわれずに対象を自在に配置できるのは、むしろ子供だからなのでしょうか。

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花の形と背景の色彩の組合せや、黄色い背景を縁取る枠にドキッとしました。写実的でない自由に開放された感性を羨ましく感じます。

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7月から8月にかけて行われた学校休暇の課外コースについて、料理や水泳などの授業の様子を世界日記で紹介しましたが、それらに加えて絵画教室も行われていました。子供達が先生のもとで、皆一緒に公共駐車場などの壁にペンキで絵を描いたり、市から与えられたキャンバスや油絵具などの本格的な材料を使って、各自が自由に好きな絵を描いていました。課外コースが終わってからしばらくの間、この油絵は乾かす為に置きっぱなしになっていたのですが、それらを片づける手伝いに行った時に惹きつけられるものがありました。全体的に楽しげな雰囲気が伝わってきたことと、上記のようにとても印象的な絵をいくつか見かけたからです。その時は、課外コースを担当していたエベリンに、どこかで展示できるといいですねとか、コンクールができそうですねと話かけただけでした。しかしそのうち絵のことが頭から離れず、なんとか他の人にも見せられないかなという思いが強くなってきました。展示場所として市役所の1階にある自分達の事務所の前がピロティになっており、町のメイン通りにも面しているのでうまく利用できそうです。そこでカウンターパートのダニーロに、展示会とコンクールの話を相談してみました。ダニーロはすぐに絵画教室を担当したエベリンに、展示会を開くことにしようと伝えます。彼女にとっては仕事が増えてちょっと迷惑だったに違いありません。

翌日8/22、自分が気が付かない間に、エベリンと数名のスタッフが絵を事務所に運んできてくれて展示の準備が始まりました。キャンバスを事務所の窓の面格子にひっかけるのは思った以上に手こずりました。お金をかけずに事務所にある備品で何とかしようとしたので、書類を綴じるクリップを一つ一つ折り曲げてフックを作ったのです。最初運んできた絵画の数は60枚程度だったのですが、未乾燥で残してあった絵が後から加わり100枚近くを飾ることになりました。

展示が始まると、学校帰りに自分の絵を見て喜ぶ子供やお母さんが立ち寄り、結構な賑わいになりました。コンクールは誰でも通りかかった人に、気に入った絵を選んで票を入れてもらうことにしていたので、親子だけでなく市役所の職員や一般の人々にも興味を持って頂き、絵画をながめた後の投票に参加してくれました。

盗難の恐れがあるとのことで屋外通路にかけっぱなしにはできずに、毎日一枚一枚掛けては外しを繰り返さないといけませんでした。するとある朝、事務所に行くとその窓の面が、町の女王選びのイベントのために候補者の大きなポスターでおおわれて、絵をかける場所がなくなっていました。なんの気配も無く、一晩のうちに占拠されてしまった感じです。毎年行われる女王選びは町の重大行事なので、仕方がありません。選ばれた女王はいろいろなイベントに市長などと一緒に参加して、交流の懸け橋の一端を担う役割になっています。コミュニティや団体などが候補者を出し、お店にポスターを貼ったりして盛んに応援活動を行います。イベントの会場設営や審査員の招待の費用なども負担しているかもしれないので、相当に熱が入っていました。8/31の審査会は夜の7時開場で、終わったのはおそらく翌日の朝2時過ぎで、寝ている部屋まで会場から音楽が響いてきました。

このイベントが終わりポスターを外すことができましたが、3週間ほどのブランクのために担当者や関わっていた同僚達の意欲が失せ腰が重くなっていました。うやむやになりそうな雰囲気が漂ってきたことから、率先して絵をかけることにします。手間がかからないように絵の掛け方も工夫し毎日の出し入れを簡単にすることで、7日間ほど展示を続けて340票が集まり、9/29のコンテストの表彰式につなげることができた次第です。

今は展示した絵を子供達に返す目的で、返却のお知らせとともに窓に5~6枚づつ絵を飾っています。通りがかりに気が付いた人が絵を引き取っていくので、一日に数枚づつしか戻せませんが、お母さんと一緒にうれしそうに持って帰る姿を見るとほのぼのとした気持ちになります。又、たかが子供の絵ではありますが、自分には観光客に媚びを売るような手慣れた絵よりも、はるかに味があって気持ちも安らぎます。町の明るい雰囲気づくりにも役立っているに違いありません。残っている絵を毎日交換しながら、なるべく長い間展示が続けられると良いなと思っています。

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