JICA海外協力隊の世界日記

アンデスの田舎町から

私の住んでいるパタテはとても小さな町で、大都市に比べるととても治安が良いです。住んでいる人も穏やかな感じです。初めて会った時の私への質問は、どこから来たのかの問いに加えて、大抵パタテをどう思うかと聞いてきます。自分の町をとても気に入っていて、一緒に共感してくれることを期待しているようです。この質問を日本では聞いたことが無いのが残念ですが・・・ この町が好きで愛着を持って住み続けている人達に見守られていることが、治安を保つのに役立っているに違いないと思います。

そんなパタテですが、住み慣れていないうちに注意が必要なのが犬に対してです。この町ではロープにつながれた犬をほとんど見たことがありません。庭の中で囲われている場合を別にして、大抵は庭先や車道、歩道をうろうろしています。

これらの犬は二種類に分類できると思うのですが、一つは飼い犬でもう一つは野良犬です。大抵すぐに見分けることができて、飼い犬の場合にはいつも飼い主の家の周辺にいて、自分のテリトリーにこだわりを持っています。 野良犬は割と広い範囲を餌を求めてうろうろしています。人間のおこぼれで暮らしていることを自覚していますから、いつも腰を低くして近づく人の様子をちらちら見るだけで危険を感じることはありません。もっとも人間の傍らで生きる権利をもっていると思っているようで、邪険に扱われながらもしたたかに振舞い、時には勝手に事務所の中に入って昼寝をしたりしています。

気をつけなければいけないのは飼い犬の方です。テリトリーを守るという任務に忠実で、見知らぬ人を見かけると遠くから見据え、近寄ってくる様子を見ながら吠え始めます。 そのうち警戒態勢から臨戦態勢に入ります。ただ噛みつくのは自分もやられる可能性があるので、相当の覚悟を持った時です。 そして、嗅覚や視覚、聴覚も?は自分よりもはるかに記憶力が良いようで、早ければ2~3回出会って何も起こらないことがわかると、あまり相手にしなくなります。

しかし急に出くわした時は注意が必要です。こちらの驚いた表情が警戒心を呼び起こすからです。研究記事(飼い主の感情は犬に「伝染」する、どうやって?)からは、飼い主以外にも同様に人間の表情に反応する事を予想させます。まだ吠え始める前の対応としては、ちらっとだけ犬の方を見て犬の存在に気が付いている事を分からせたうえで、意に介していないという態度を見せるのが良いと思います。 歩く方向や歩調をかえずにゆっくりと脇を通ると、犬は視線を合わせないようにしながらすごすごと道を譲ってくれたりします。 それでも仲間がいたりすると、強がって吠えてくる時があります。 1m以上近寄って来て唸り声を上げている時は警戒が必要です。 こちらが何もしないでいると、弱そうだと思ってさらに近寄って来る可能性があります。 あまりに唸りながら寄ってくる場合には“Tranquilo!(おちついて!)”とか“Calla!(静かに!)”“Sale!(あっちへ行け!)“と強く声を出したり、手を叩いて脅したり、持っている鞄などを少し振り回すなどして、一定の距離に遠ざける必要があります。 木の枝を拾って牽制したり、石ころを投げる振りをするのも効果があるようです。 犬の方が速いので走って逃げるのは、止めた方が良さそうです。犬の縄張りから離れれば、そのうち相手にしなくなります。 こちらの人は小さい時から慣れているせいか私のように怖がる人は少なく、吠えてきた犬に餌に見せかけたゴミをポイッと投げて、やり過ごしたりしています。

それでもとうとう避けきれずに噛まれてしまった時には、大声で追っ払いながらその場をしのぎ、救急処置として傷口を流水で時間をかけて丁寧に洗います。狂犬病は発症すると致死率100%と言われていますが、破傷風も相当に危険なので、早めに医者の診察と追加の予防接種を受けるように指導されています。なによりもJICAボランティアの方は事務所へ真っ先に相談をしましょう。ここまでいろいろと書いてきましたが、この見解は私が着任して1か月半後に犬に噛まれた経験から、犬の心理を考察したもので、動物行動学的?な裏付けなどはありません。護身のための参考情報として気に留めて頂ければ幸いです。

ところで、私の大家さんの家には犬が3匹いて、そのうち二匹は半年ほど前に拾われてきたものです。最初はとても可愛く足元をうろうろしていたのですが、今は姿を見ると喜んで飛び掛かってきて倒されそうになります。おかげ様で、私もだいぶ慣れてきたところです。

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