2023/02/12 Sun
文化 生活
羊肉にヨーグルト!? ヨルダンの伝統料理マンサフを作ってみた
これほどまでに生命の尊さを実感した経験はありません。
生きた羊が目の前でその一生を終えて自分たちの体内に取り込まれていく過程。
日々の食事において生き物を頂くことのありがたみを感じました。
今回の記事ではヨルダンの代表的な伝統料理であるマンサフについてご紹介します。
目次
1. 無形文化遺産登録!? ヨルダンの伝統料理マンサフとは
私がペトラに来て一番最初に受けた衝撃体験がマンサフ作りでした。
マンサフとは
ヨルダンの社会・文化的イベントの中心となるお祝い料理。羊や山羊の肉の大きな塊をヨーグルトソースでスパイスと一緒に煮て、薄いパンの層の上にご飯を添えて食べます。
ヨルダンには実は完全なヨルダン料理と呼べるものが少なく周辺の様々なアラブの食文化が混ざっています。
そんな中このマンサフはれっきとしたヨルダンの代表的な料理であり肉や乳製品が簡単に手に入るライフスタイルの中からうまれました。
羊肉 × ヨーグルトという日本ではあまり見られない珍しい組み合わせです。
私も食べる前は一体どんな味がするのかワクワクしていました。
実はこのマンサフ、昨年ユネスコの無形文化遺産に登録されました。
無形文化遺産は不動産を対象にしている世界遺産とは異なるスキームで無形の芸能や社会的慣習などを保護対象にしており日本からは歌舞伎や和食が登録されています。
2. マンサフ作り その驚きの調理方法とは?
2.1 羊の屠殺
大家さんの家に招待いただき軽く挨拶をした後に羊を見せて貰いました。
ビスミッラー(「神の御名において」の意)
それから1分も経たずいきなり生きた羊にナイフが刺さりました。
何の前触れもなくあまりにも突然の出来事だったので私は衝撃を受け、ただ呆然とその様子を眺める事しかできませんでした。
生き物なので当然血が出てきますし周囲にハエもたかってきます。
この日初めていつも食卓で食べている物がどんな経緯で手元に届いているのかを想像することができたかもしれません。
私も1番大事な頭の部分を切らせて貰いました。
触るとまだほんのり温かく数分前までまだ生きてたんだなぁと想像すると胸が締め付けられました。
子供たちも特に怖がったり驚く事なく自然の摂理として受け入れていたのが印象的でした。
私以外はみんな捌き方がとても上手で昔からずっと羊やラクダが彼らと身近な存在だったことが想像できます。
2.2 ヨーグルトを温める
そこからいよいよマンサフ作りが始まります。
まずはルブネ(ヨーグルト)を温めます。
そこに血を綺麗に洗った羊肉を入れてかき混ぜます。
途中、お菓子やお茶、コーヒー、果物など何度ももてなしてくれました。
既にもうお腹いっぱいです(笑)。
羊肉を入れて3時間くらいでしょうか。
ゆっくり丁寧にかき混ぜ、たまに味を確認します。
子どもたちと交代しながら粘り強く作りました。
炊き立てのご飯の上に盛って揚げたナッツなどを載せて完成です!
3. マンサフの美味しさ
マンサフは手で食べるのが基本スタイルです。
小さなパンにご飯と羊肉を挟んで食べます。
はじめはヨーグルトと一緒に食べるなんて信じられませんでしたが、食べてみるとそこまで酸味は強くなく何よりも体験を通して命の重みを感じながら食べたので一口一口味わいながら非常に美味しく頂くことができました。
皆マンサフを食べる事に集中して無言になり、それはまるで儀式の様で少し緊張感がありました。
食後はまた紅茶が運ばれてきてさっきまでの緊迫した空気とは一気に変わって談笑が始まります。
同じ釜の飯を食べることでこの時少しだけペトラのコミュニティに対する帰属意識が芽生えました。
また調理の途中から大家さんの家族が次から次へと集まりました。
最終的には20人くらい集まり家族間の強い結びつきを感じました。
ヨルダンに旅行で来られた際は是非マンサフを食べて欲しいです。
観光客がいきなり家庭で食べるという事はなかなか難しいと思うのでこういった料理体験のツアーも企画してみたいと感じました。
今後も様々なローカル体験を通して地域に対する理解を深めていきたいと思います。
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