JICA海外協力隊の世界日記

Dive into Jamaica

保全のベーシックな考え方

みなさんこんにちは、
前回はフィッシュポットと資源管理について書いたのですが、もう少し資源管理について個人的な見解を書きます。
まず、私たち協力隊で与えられる「2年」はある一定の成果が見込める期間としては最適な長さだと思います。長すぎると人によっては慣れない海外生活でストレスを溜めることもあると思いますし、逆に短すぎるとその国に慣れたところで仕事を終えてしまいます。なので、2年という長さは長すぎず短すぎずちょうど良い長さな気がします。イメージとしては1年で慣れ、1年で活動するといった感じですね。
しかし、2年という長さでは水産資源の回復というのは見えてこないことが多いと思います(特に成熟までに時間がかかる種において)。
というのも私の水産開発という職種上、水産資源管理に関する仕事も業務のうちです。その中で、資源管理指針の策定というのも私の業務では重要になっていきます。今回は前にも出てきたソデボラの一種クイーンコンク(Strombus gigus)の管理計画についての話です。 今回は専門的な話が多いので、サ○リオとかけろけろけ○っぴとか全く出てきません。あしからず。あと、写真は全く関係ないですが、ちょっと前に見かけた2.5mくらいの巨大エイSouthern Stingrayです。

クイーンコンクはCITES(ワシントン条約)対象種に指定されている、乱獲がカリブ全域で危惧されている巻貝です。一応、今年いっぱいは禁漁とされていますがマーケットでは普通に売られています。このクイーンコンクがなぜ、絶滅に瀕しているかというと、主に2点挙げられます。
1点目は「誰でも簡単に捕まえやすい」。非常にシンプルです。貝ですから泳いでいたら目立っていて、簡単に取れます。あと、美味しいです。
2点目は「性成熟までに時間がかかる」。これが非常に厄介な点です。コンクは成熟までに5年から6年かかると言われています。未成熟個体(5歳以下)を漁獲した場合、その成長までにかかったコスト(餌)は全て無駄になってしまいます。
成熟個体ならば、再生産(生殖)して、個体数を増やす過程に寄与していたでしょう。つまりある5年以上の歳月を経て次の世代が生まれるので、4-5歳以下の未成熟個体はそもそも捕獲してはいけないのです。
生態データとして、コンクはまず大きさと年齢が比例関係にあるので、大きな個体以外を捕まえないようにするサイズ制限が資源管理計画上、有効です。また、生殖時期は水温が高い時期と言われているので、その時期を禁漁期にするのも有効な計画だと思います。欠点としてはこのような禁漁期・サイズ制限は漁業者のモラルに拠った計画です。ルールを尊重しないとまず始まりません。

話は変わりますが、このトピックではナマコが資源管理において最も難しい種の一つだと個人的に思います。
理由は「1.コンク同様,、浅い水深に生息して非常に捕まえやすい。2. とある国では高値がつくため世界中で密漁・乱獲が横行している。3. ジャマイカのように国によっては食べる文化が無いため資源管理計画すら存在しないこともある。というかナマコ自体に興味がないから知見が少ない。4. 性成熟まで非常に時間がかかり、サイズ・重量が年齢に比例しないため成熟・未成熟の判別が外見から判別できない。」ざっと考えただけでこれくらい出てきます。沖縄で友人が研究してたので、一緒に勉強していた時期があるのですが彼はナマコの乱獲に嘆いていました。生態学的に考えると沿岸生態系の根底を支える種なので、ナマコの減少による沿岸生態系への影響はもう少し後になってからわかると個人的には睨んでいます。
コンクに話を戻すと、コンクは禁漁区・サイズ制限が資源管理計画上有効であるが、それでも、乱獲・密漁が起る場合どうすればいいか?ということに話は移ります。
そこで有効なのが、禁漁区の設定です。生き物を全て取らせない地域を作ってそこで生殖を行わさせることです。しかし、これも密漁や、そもそもそこを禁漁区と周知されていないと厳しいです。(現に知り合いで、禁漁区と知らずに生き物をとっていたという例をいくつか知っています。)
こういったことから「目の届く範囲でコンクの生殖を促して新規個体を増やす」という結論に至りました。長くなったので、次回にまた書きます。

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