JICA海外協力隊の世界日記

Dive into Jamaica

外来種?在来種?謎の八放サンゴ

みなさんこんにちは、

最近、コピー用紙にスワイプして、「あれ、おかしい全然文字が大きくならない」と呟いていたのを同僚に見られて、休暇を勧められました。

今回の話は最近自分の中でホットな外来種の話です。前文と全く関係ないですね。写真は上司と展示水槽用の生き物を探している写真です。修学旅行シーズンになると自分たちで、展示水槽用の魚を捕まえにいかなくてはいけません。これも立派な仕事です。

今回もかなーり専門的な話が続くので、面白くないかもしれません。

仕事上、結構な頻度(平均週1、多いときは週4くらい)で海に潜るので、ジャマイカの大半の生き物は同定できるようになりました。慣れると、何処にどういう生き物が住んでいるのか?というのが直感的にわかってきます。その中でも、この写真の生き物はちょっと珍しいです。八放サンゴ(いわゆるハードコーラルではなくソフトコーラルと言われている生き物)でおそらくSnowflake Coral(Carijoa riisei)だと思います。確定ができないのは八放サンゴの形態的可塑性や種内変異のパターンなども存在するためです。(あと八放サンゴは専門ではないので。)

西部大西洋原産で、他のサンゴの上に成長して駆逐したり、橋桁や鉄骨、鉄製のブイなど固い人工物につくことが知られています。このCarijoaも湾内の灯浮標で見つけました。ジャマイカは地理的には原産地に含まれるのですが、おそらく他所からきた外来種(Alien Species)だと考えています。理由として、ブイのような人工物でしか目撃しない。湾内は大型船の出入りが激しいので、バラスト水など侵入経路が存在している。この二点からおそらく他所からきた生物だと考えられます。個体数も少なく特に悪さをしていないので、今の所はAlien Speciesと言われるだけですが、もう少し観測が必要な種であることには間違いありません。

Alien Speciesは日本語にすると外来種(侵入種もしくは移入種)と言われますが、英語ではニュアンスが少々違います。こちらでは、ミノカサゴのような「本来、生息しない生息域に人為的に持ち込まれ、在来種を圧迫する生物」をInvasive species(日本語で侵略的外来種)と呼び、「在来種と競争しないでただ存在している生物」をAlien Speciesと読んでいます。例えばこのCarijoaはハワイでは経済価値のある在来の宝石サンゴの上に成長して、深海域の6割ほど駆逐しているそうです。この場合はInvasive Speciesと呼びますが、ジャマイカは宝石サンゴは取り尽くして半ば絶滅しているので、その心配はいりません。皮肉な話ですね。

ちなみに、日本では沖縄で見つかっています。おそらく米軍船舶から排出されたバラスト水が原因でハワイ経由からきたのではないかと言われています。もしこのまま環境変動で水温が上がり続けて生息域を伸ばし日本を九州四国まで北上すると、日本の宝石サンゴ漁に影響が出ることを個人的に今から懸念しています。

ジャマイカではまだ私がこの個体群を見つけただけで、他に報告例は出ていません。というか誰も知見がなかったので素通りされてました。一応環境省であるNEPAの方へは、大学を通して報告しているのですが、そこまで大きな問題にはならないだろうなと予想しています。というのもこういったマイナーな生き物が及ぼす影響は目に見える形での被害を被らない限り、対策を立てないのが定石です。

もし、研究するとなれば、カリブ全域で見られるCarijoaをサンプリング、その後分子マーカーを用いた集団遺伝解析をして在来種かどうかの考察をまずします。その後は、遺伝的多様性の調査・外来種の分散様式の推定など、CARICOMにおけるそれらの論文は詳しく調べていませんが、ざっと考えるとこのくらいの事はできそうですね。(私はやりません

外見は名前の示す通り雪の結晶(Snowflake)のように白く美しいですが、ジャマイカの水産資源に何か迷惑をかけないか心配です。

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