2018/12/06 Thu
活動 自然
白と黒のマングローブ
みなさん こんにちは。
私の業務の一環で修学旅行に訪れる子供たち相手にプレゼンや、施設の案内、生き物の紹介などを行なっていると多くの子供が「カイメン(Sea sponge)はいるの?」など海綿動物関係にやたら食いつくのでどうしてだろうと思っていました。「どうしてみんなカイメンを見たいの?」と聞くと、口を揃えて「Sponge Bob!」と答えてくれます。
みなさんはスポンジボブ知ってますか?実は結構古くからやっているアニメで20年近く前の作品ですが、今でもジャマイカのキッズを虜にしています。私も虜になりました。実年齢30代のおっさんの精神年齢がジャマイカンキッズとどっこいどっこいな気がしてなりません。
という事で今回はそれと全く関係ない、マングローブの話です。この写真はホワイトマングローブ(Laguncularia racemosa)の種です。前々回紹介したレッドマングローブの種とは大きく異なり、小ぶりの種が鈴なりに付いていますね。マングローブは海からの距離で植生を変えるのですがホワイトが一番海から遠く、レッドが最も海に近い場所に生えることが知られています。ブラックはその中間に生えることが多く、それぞれ地面のぬかるみ具合や、地質、乾燥への適応が影響してこの形態に落ち着いたのではないかなと予想できます。主な特徴は葉柄(葉と茎を繋ぐ箇所)が赤く、2対の蜜を出す器官が存在していることです。この蜜が特定の種のアリを呼び込み、マングローブを食い尽くすシロアリに対する防除を任せているそうです。いわゆる相利共生(Mutualism)ですね。
こちらは、レッド、ホワイトの中間の位置によく生えているブラックマングローブ(Avicennia germinans)の種です。大木は大体親指より一回り大きいくらいの種で、この見えている桃色に見える皮の内側には葉っぱがもうできています。地面に落ちてすぐに観音開き状に皮が開き成長を始めます。
私の活動の半分以上はマングローブ調査に関わった仕事です。特に調査関係は人手がとにかく足りないので、朝6:30に家を出て、8時ごろからマングローブ林のなかで、マングローブの樹高や本数幹の太さ、周辺で見られる生物を記録するなどしています。他にもマングローブの植林なども手伝いますが、とにかくマングローブ林に入って泥と汗と海水にまみれながら昼休憩なしでぶっ続けに調査します。終わるのが大体17時前で、その頃には精根尽き果てて這々の体で家路につきます。
最後の写真はわかりずらいですが、これは地面に生えている呼吸根(Pneumatophore)と呼ばれる特殊な構造の根です。読んで字の如く呼吸(正確にはガス交換)を行うための根で、地中の酸素濃度が薄い泥地でこれを伸ばすことで、窒息状態を防ぐ役割をしています。
ブラックとホワイトマングローブ共にこの呼吸根を持つことが特徴として知られています。慣れると先端の形態でブラックホワイトの違いがわかります。私はわかりません。
これの数の計測をしたことがあるのですが、かなり大変な作業でした。また、河川域でのマングローブ林調査ではワニが生息していたりするので、全員がビビりながら調査していました。海での調査の時にサメを見たこともあるので、私が相手にする仕事は他の隊員とは違う意味でハードです。
マングローブはこの特徴的な形態と植生から防風林や防波堤の役割を多く担い、陸側からでは大雨に伴う土壌の流出や、昆虫や大型の鳥類の食物網の役割を根底から担っています。
次の記事で、このマングローブ林に多く見られる虫や問題について書こうと思います。
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