2023/08/02 Wed
人 文化 活動 生活 観光
#13 ホームステイという選択
今回は、JICA海外協力隊隊員の住宅事情についてです。
カンボジアでは一人暮らしをしている隊員がほとんどですが、ホームステイを選んだ隊員がいます。どのような生活をしているのか気になり、実際に現地まで行ってきました。
ホームステイをしている隊員のDさんが住むスバイリエン州は、プノンペン都から南東側に約120㎞に位置し、ベトナムに突き出た形になっていることから「オウムのクチバシ」という別名も持っています。
プノンペンからバスに揺られること約3時間、いよいよホームステイ先に到着です。
1階がカフェになっており、奥には大家さん家族が住んでいます。
2階がDさんの住居となっており、さっそくお邪魔してみました。
部屋の入口には「Hokkaido」の文字。これはDさんが北海道出身ということもあり、大家さんが特別に名付けてくれたのだそう。大家さん家族の愛情が感じられます。今は、Dさん一人しか住んでいませんが、これから居住者を増やしていきたいと考えているようです。
部屋に入ると、思ったよりも広くエアコンもついていてとても快適な空間でした。外の音もほとんど聞こえないので作業にも集中できそうですし、夜は熟睡できそうです。
部屋にはトイレ・シャワーもついているので、気兼ねなく使えそうです。
この日の夕飯は、大家さんの奥さんと彼女のお母さんの自慢の手作り料理でした。今回、夕飯をご一緒しましたが、日本の味にも近くとても美味しかったです。
最後の後片付けはみんなで行います。
Dさんにインタビュー
― どのような経緯でホームステイを選んだのですか?
「JICAカンボジア事務所から提示されたのが、アパートとゲストハウス、ホームステイの3択だったのですが、せっかくなら現地にどっぷりと浸かりたいと思いホームステイに決めました」
― ホームステイと聞くとプライバシーを心配する声がありますが、その点はいかがですか?
「家族同然の関係ではありますが、自分の部屋に誰かが入るということはなく、部屋の掃除も自分で行います。鍵も2つついているので防犯上の心配もいりません。これらの点は、一人暮らしの隊員とほとんど変わらないかもしれませんね」
― 部屋ではどのように過ごされていますか?
「部屋では、ストレッチをしたり、読書をしたり、パソコンで作業したりと比較的自由に過ごしています。一階のカフェに行って気分転換を図ったりもしています」
― ホームステイでよかったことを教えてください。
「楽しいことも辛いこともともに分かち合えるということですかね」
― 具体的なエピソードなどありますか?
「大家さん家族にいろいろな人を紹介してもらったり、いろんなところに連れて行ってくれたりするので、カンボジア特有の大家族・近所づきあいに身を置くことができ、おかげでカンボジア生活にどっぷり浸かれています」
「以前活動でうまくいかなかった時があったんですが、夕飯時に家族といつも通りの何気ない会話をしているだけだったのに、大きな安心感があり気持ち的に救われたことがありました」
― 大家さん家族にはどのような思いでいますか?
「外国人である私を家族同然として迎えいれてくれて、カンボジアにも第二の故郷と思える自分の居場所ができたことは大きな喜びであり、言葉では言い表せないくらい感謝でいっぱいです」
大家さんにインタビュー
― 日本に行ったことはありますか?
「これまで2回行ったことがあります。1回目は2020年2月にツアーに家族で参加しました。2回目は2022年12月に、Dの一時帰国にタイミングに合わせた家族旅行でした。彼が北海道を案内してくれました。また日本に行ってみたいです」
― 日本や日本人の印象を教えてください。
「日本人はカンボジア人と違い静かにしゃべります。これはとてもよいことだと思っています。日本では鞄や財布などを落としたりなくしたりしても、後で自分の手元に戻ることが多いと聞きます。日本のいいところだと思います」
― Dさんの印象はどうですか
「Dは嘘をつかず正直です。まっすぐな性格で誠実さを感じています。いろいろ気にかけてくれ、こちらが大変な仕事をしているところを見かけると、すぐに駆けつけてくれて手伝ってくれてとても助かっています」
― Dさんとのエピソードがあれば教えてください。
「最近はできていませんが、休日を利用して近所を一緒にサイクリングしたりレースをしたりして遊んでいました。ただ毎回Dは手加減しません(笑)(なんだか悔しそうな表情・・)。レース後に食べたお菓子は最高でした」
― スバイリエン州のおすすめのスポットを教えてください。
「バッサク村です。ここには小さなお寺があり、スバイリエンに立ち寄った時にはぜひ訪れてほしいところの1つです」
― スバイリエンのおすすめの料理を教えてください。
「3つあります」
1つ目が野菜スープ「ソムロ―ココ」。(カンボジアの味噌汁と言われています。野菜もたくさん入っているので、健康にもよさそうです)
2つ目が米粉麺の「ノンバンチョック」。(カンボジアの伝統料理「ノンバンチョック」は、「ソムロ―クマエ(魚味)」と「ソムロ―カリー(カレー味)」の2種類が代表的です。大家さんに近所に美味しいノンバンチョックのお店があるということで朝食時に連れていってもらいました。この日は、カレー味のスープがちょうど切れてしまったので、ソムロ―クマエのスープにソムロ―カリーの煮込んだ肉をトッピングした特別メニューでした。肉は味が染みていて柔らかく、麺との相性が絶妙でした)
3つ目が魚の塩漬けを発酵させた調味料「プロホック」(写真左側)です。(生野菜などに付けて食べます。少しクセはありますがお酒のつまみには最高です)
終えてみて
今回、スバイリエンに行ってみて、大家さん家族とDさんはお互いを尊重し、かといって遠慮しすぎず自然体でほどよい距離感で過ごしているのが印象的でした。当初私が想定していたよりも隊員のプライバシーは確保されていることもわかりました。クメール語や現地の文化にどっぷりと浸かるにはホームステイもいいのかもしれません。Dさんが帰国後もこのHokkaidoの部屋はきっと語り継がれることだと思います。
最後は大家さん家族、Dさんとの写真に加わらせてもらいました。
Dさんのスバイリエンでの活動は、JICA北海道(札幌)https://www.jica.go.jp/Resource/sapporo/enterprise/volunteer/report/30.htmlにも掲載中ですので、お時間あればこちらもぜひご覧ください。
大家さんが奥さんと話していた「スバイリエンには、プノンペン、都市にはない、人々のフレンドリーさがある。知っている人には、道端で声を掛け合う。お金持ちでなくても、家に招待して、ご飯をふるまったり、お酒を飲み交わしたり、とみんなで楽しもうという、おもてなしの心がある」という言葉の通り、私も数日間の滞在でしたが、いろんな人を紹介してもらい温かく迎え入れてもらいました。きっとスバイリエンの一番の魅力は人なのかもしれません。
シェムリアップとは違う魅力がここにはありました。
今回も読んでいただきありがとうございました。
SHARE