JICA海外協力隊の世界日記

わくわく クマエだより

#3 カンボジアに伝わる わくわく 月食伝説

今回は、天体のお話。

皆さんは、2022118日に行われた天体ショーはご覧になりましたか。「皆既月食」と天王星が月に隠れる「惑星食」が同時に起こる442年ぶりの天体ショーだったそうです。前回はなんとあの織田信長や豊臣秀吉がいた安土桃山時代。当時の人々も私たちと同じように天体ショーを見ていたかと思うとわくわくしますね。

東京では19時59分(日本時刻)に食の最大が見られたそうですが、カンボジアのシェムリアップではどうだったのでしょう?皆さんは次のうち、どれだと思いますか。ちなみに当日シェムリアップの月の出は19時31分(日本時刻)です。

①日本時刻19時59分にカンボジアでも食の最大が見られた。

②カンボジアと日本の時差は2時間なので東京で見られた時刻の2時間後(日本時刻21時59分)に食の最大が見られた。

③カンボジアは東京より緯度が低いので皆既月食は起こらなった。

月食の説明.jpg

図:©国立天文台

正解は

当日、シェムリアップでの食の最大は東京と同時刻(19時59分/日本時刻、17時59分/カンボジア時刻)に見られました。

私が住んでいるアパートの屋上で待機し、皆既月食の様子をスマホで撮ったのがこちら。

皆既月食max.png

皆既月食時

皆既月食終了.png

皆既月食終了後

解像度はカメラには敵わないもののなんとか輪郭を捉えることができました。新月のように真っ暗になるかと思いきや赤っぽい色に輝いていてとても神秘的でした。この色は、「赤銅(しゃくどう)色」と呼ばれ、太陽の影になってしまう新月に対し、皆既月食は地球の影に隠れてしまうので、太陽光の中でも遠くまで届きやすい赤い光が月を照らし、このような色に変化するようです。

ところで、月の物語と言えば日本では竹取物語がお馴染みですが、カンボジアにもクマエの人々に親しまれているインド神話があります。

ラーフの物語

むかしむかし、時代は、まだこの世界が神々の世界だったころ。不老不死の薬を求めて、神々とアスラ(悪魔)が協力し海をかき回しました(「乳海攪拌」を参照)。かき回して続けて1000年後、無事に不老不死の薬が手に入り、神々が不老不死の薬を飲もうとしたところ、アスラの「ラーフ」も隠れて薬を飲もうとしていました。その様子を見つけた太陽の神と月の神は、三大神の1人ビシュヌ神に言いつけます。これを聞いたビシュヌ神は、怒ってラーフの首を円盤で切り落としてしまいました。ラーフは、途中まで薬を飲んだところで首を切り落とされてしまったので、不老不死の薬にありつけた首から上だけが残ってしまいました。

写真:アンコールワットの壁面に刻まれたヴィシュヌ神

ラーフは、それからというもの、告げ口されたことを恨み、月や太陽を見つけるとたちまち飲み込むようになります。しかしながら、首の下からがないためしばらくすると月や太陽が再び出てきてしまいます。これが、月食と日食の始まりと言われています。

以上が月食と日食の伝説です。

ラーフ(木彫り).png

月食にこのような話が隠されていたなんて驚きですね。そんなラーフ像を市内のレストランやお寺で見ることができます。

こちらに来た時にはぜひ探してみてください。

ラーフ(お寺).png

当時の人々は、毎晩空に浮かぶ光る丸い物体を見ながら、このような神話を思いだしていたのでしょうか。ロマンがありますね。このような話なら当時も天体に興味を持つ人も多かったことでしょう。

次回、日本で皆既月食と惑星食が同時に見られるのは322年後の2344年7月、皆既月食が見られるのはおよそ3年後の2025年9月だそうです。次の皆既月食と惑星食が同時に見られる時は、どのような世界になっているのでしょうか。。。

まずは、次の皆既月食に向けて全力疾走したいところです。

最後は、同じくシェムリアップに住んでいるカメラ好きなボランティア隊員の「皆既月食とナーガ」の写真で締めくくらせていただきます。

それでは、また次回。

オークン(ありがとうございました)。

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