2016/11/02 Wed
活動
マダガスカルの農村で家計研修
農閑期である5月~8月は主に、JICAの技術協力プロジェクト「コメ生産向上・流域管理プロジェクト(PAPRiz)」(以下PAPRiz)の活動の一つでもある家計研修を行なってきました。
家計研修の目的は、一年を通して収支の変動の大きい農村家庭において、家計管理に関する中長期的な計画を立ててもらうこと、また、収入を向上させることの重要性に気付き、そのためにはどうすれば良いのか家族で話し合ってもらうことにあります。
(写真上:年間を通した収入(グラフ上)と出費(グラフ下)の月毎の推移。支出はほぼ毎月同じようにあるものの、収入がある月は限られており、年間を通じた収支計画が必要なことが分かります)
現在までで、水利組合や生活改善グループなど10か所以上で家計研修を行なってきましたが、収入源にはその地域ごとの特徴が表れており、私も農村部の経済活動について学ぶことが多くありました。
例えば、コメ農家であっても1年を通して自家生産の米を食べられる農家は少なく、多くの農家が収穫から3~6ヵ月後にはコメを購入しているということ。 マダガスカルにおける1人当たりの年間消費量が120キログラムなので、6人家族だとすると月当たり約60kg、年間にして720kgが必要となります。 家計研修を通して、農家にとってPAPRizでコメの生産性を上げることの有意義さを、実感を持って理解することが出来ました。
また、肥料や家畜の餌、ワクチン等の農業・畜産のための投入費は家計の中でも大きな割合を占めていますが、その割に病気や災害などのリスクは避けられず、農家の収入は不確実性が高いということ。このことから、収入の安定には家畜や穀物栽培などの財源多様化が一定の効果を有することを実感しました。牛や豚、鶏を初めとする家畜の飼育や、麦、キャッサバ、豆、サツマイモ等の裏作を行うことはリスク分散、収入向上に貢献しています。
更に収穫月である4月は米の値段は底値となり、多くの農家で米が尽きる時期11~12月には比較的高く買い取ってもらえます。家畜はクリスマスや独立記念日などの行事がある月に需要が高いそうです。家計研修開催時には、こういった販売テクニックも織り交ぜながら販売時期や方法についても考える機会を持ってもらいます。
(写真上:家計研修実施時に作成する年間の収支表。いつ何を販売すべきか、ということも考えながら作成します)
研修を家計の改善に活かすために、PDS(Plan-Do-See)を用いたフォロー・アップを推奨しています。まず家計研修を通して一年の大凡の経済活動を把握し、月毎の大体の予算を決定(Plan)したのちに、毎月家計簿をつけることで実際の収支(Do)と照らし合わせる。そこから「無駄な出費がなかったか」、「残額を増やすにはどうすれば良かったのか」等家庭で分析(See)をし来月以降の収支計画に活かす、という方法です。
また、「どうしたら楽しみながら家計管理について学ぶ機会を提供できるか」と考え、現在「買い物すごろく」を作成中です。
何故ならば、すごろくに買い物の要素を盛り込むことで、物を選択し、お金と交換するという消費活動の模擬体験ができるのではないか、と考えたからです。
マダガスカルの農家の生活習慣も取り入れ、子どもだけでなく大人にも「予算の範囲内で選択し、購入する」という適切な消費活動を学ぶ機会を提供していきたいです。
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