2019/03/01 Fri
活動
職業訓練センター
私の活動先をご紹介します。
『国民共済事業団 シディカセム県支局』です。
日本のハローワークと社会福祉協議会が行っている事業をイメージしていただくとわかりやすいかと思います。
ただ、ハローワークと聞いて1番に思い浮かぶ、「職業相談」は行っていません。
就職のための「職業訓練」を行っています。
私の活動している「美容コース」の他にも、「理容コース」「服飾コース」「製菓コース」「パソコンコース」等、様々な技術を学ぶことができます。
毎日、多くの生徒が楽しそうにクラスに来る姿を見ると、私まで嬉しくなります。
そして、それが私の活力になります。
「職業訓練」以外にも、「障害」や「女性・子どもの貧困」等の問題に取り組むソーシャルワーカーが活躍しています。
1回目の協力隊(グアテマラ)から帰国した後に、日本で社会福祉を学んだ私にとって、彼女たちの活動は興味深く、今後モロッコの社会福祉についても学んでいけたらと思っています。
「美容コース」のご紹介をします。
上の写真の右側、青い窓のある建物の2階(ちょうどその窓のところ)が「美容コース」の教室です。
「美容コース」は、「美容師クラス」と「エステティッククラス」に分かれています。
モロッコの大多数がイスラム教ということもあり、女性限定のコースです。
基本的には男子禁制の「女性の花園」です。
「美容師クラス」は、9月から始まり、翌年の7月に修了となります。
卒業は、各課題(カーラー・ブラー・カット・ヘアセット等)ごとのテストと最終試験があり、合格すると修了証が授与されます。
その後、美容室でのインターンを1ヶ月行い、就職していきます。
生徒は、10代から40代の20人以上が登録されています。
月曜日から金曜日までクラスがあり、曜日によって「午前と午後」か「午後のみ」となっています。
午前のクラスの出席は少なく、午後のクラスは、ほぼ全員が出席するので、賑やかです。
「毎日ちゃんと出席する生徒」もいれば、「遅刻はするけれど毎日出席する生徒」「週3くらいしか出席しない生徒」「週1のみ出席する生徒」「3週間ぶりくらいに出席する生徒」「半年以上経過しているのに今頃入学してくる生徒」いろんな生徒がいます。
生徒それぞれに、様々な理由があるのだと感じています。
毎日出席している生徒は、それだけでも『働く才能』を持っていると思っています。
たまにしか練習しない生徒でも「体の動き」や「道具の扱い」など『センスがある』と感じることもあります。
生徒ひとりひとりに『良いところ』があり、そこを見つけて伸ばすことや、足りないところをサポートすることができたらと思っています。
クラスには、練習用の4台のヘアーウィッグとシャンプー台、鏡と机と椅子が6セットあります。
2017年に開講された「美容コース」の用具は、他のセンターと比べて、新しく揃っているのではないかと思っています。
技術修得の流れは、ヘアーウィッグで基礎を学び、その後、生徒同士で練習台となり実践していきます。
近所の方や近くの学校の生徒が空き時間に、練習台となってくれることもあります。
少人数となってしまう午前のクラスにも、良いところはあります。
・同僚の先生と私で、1人ずつしっかり技術指導をすることができる。
・穏やかな雰囲気なので生徒の理解も深い。
みんなが出席してくれる午後のクラスは、良い点も多いのですが、課題もあると感じています。
・椅子が足りなくて順番待ちになってしまう。
・一度に4台以上のドライヤーを使用するとブレイカーが落ちる為、順番待ちになってしまう。
・活気はあるが、賑やかで集中しにくい。
午前と午後バランスよく出席してくれると良いのではないかと日本人である私は安易に考えてしまいますが、活気のある午後を変えてしまうのではないかとも思っています。
美容の仕事は技術です。
練習を重ねて技術を修得し、相手を綺麗にし、相手に喜んでもらうことで自らも喜びを得る。
ここで学んでいる生徒全員が、美容をもっと好きになれるように試行錯誤していきたいと思っています。
「エステティッククラス」も「美容師クラス」とほぼ同じ流れになっています。
クラスは、月曜日から金曜日までの「午後のみ」です。
月曜日だけは「午前」もあるのですが、やはり出席は少ないです。
「ネイル」「エステティック(マッサージ等)」「メイク」等の授業が行われています。
午前は「美容師クラス」、午後は「エステティッククラス」と両方を選択している生徒もいれば、
10年くらい前に「美容師クラス」に通い、子育ての落ち着いた今、「エステティッククラス」に通う生徒もいます。
生徒数も15人程度で年齢層が「美容師クラス」よりも若干高めなので、落ち着いた雰囲気があります。
「エステティッククラス」の技術修得は、全てが実践です。
肌に直接触れることばかりなので、子育てを経験しているママさん生徒の方が理解が深いと感じています。
最近は、「美容師クラス」「エステティッククラス」ともに、YouTubeによって多くの技術が紹介されているので、自主的に練習してきたり、新しい技術を修得しようとする生徒の意欲も高いです。
基本的な技術は、日本の技術と変わりありませんが、「モロッコの人の好みや髪質に合わせた技術」や「伝統」「インターネットからの情報」があるので、私の方が知らないことも多いです。
実践中に気になることが瞬間的にあっても、すぐに注意をせずに、全てを見てから、どのように伝えるか考えるようにしています。
日本人である私の「メイク」や「髪型」にも興味を持ってくれていて、毎日みんなが褒めてくれます。
私もそれぞれの良いところを見つけて褒めています。
「褒め合い」は、モロッコの文化です。相手の良いところを見つけて交流していく素敵な文化です。
私は、「興味を持つ」ということも才能の1つだなと感じていますので、この「褒め合い」を通して、その場で実践を行ったり伝えたりと指導に繋げていきます。
美容に興味があり生徒の個性も強いところは、「日本の美容専門学校と同じだな」と感じることが多いです。
ちょっと雑な生徒や、だらしのない生徒がいても、モロッコだからと感じるよりは、日本の専門学校のクラスにも1人か2人いたなと思うことで、その生徒を理解することができます。
「道具の扱いが雑だ。」「不衛生だ。」「仕上がりが良くない。」等と注意をするのではなく、「どうしたら生徒に気付いてもらえるか」「どうしたら美容の仕事を大切に思ってもらえるか」と考える時に、日本の美容専門学校で一緒に2年間切磋琢磨したクラスメイトと重ねることで、伝え方が思い浮かびます。
「訓練センター」は残念ながら、無償ではありません。
モロッコに別に存在する美容学校と比べれば安いですが、月々の授業料が生徒から支払われます。
「美容師クラス」で使うドライヤーやクシ・ブラシ・ヘアクリップ等、「エステティッククラス」で使うマニキュアの道具やクリーム・オイル・メイク道具等、全て生徒が持参します。
持っていない生徒は、クラスのものがあれば借りたり、生徒同士で助けあっていますが、生徒の負担も少なからずあり、家庭の事情で通学困難となってしまう生徒も時々います。
日本とグアテマラとモロッコに住み、旅行で多くの国を訪れた経験から、
『美容は、どんな場所でもどんな状況であっても存在し、誰にとっても美しくなることは喜びである』
と学びました。
今、一緒に学んでいる生徒全員が美容の技術を身につけて仕事をすること、
途中で諦めなくてはいけない生徒にも、修得した技術を人生に役立ててもらうこと、
美容に興味を持ったみんなが、修得した技術を自分の『宝』であると思ってもらえるように「美容の楽しさ」を伝えていきたいと思います。
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