JICA海外協力隊の世界日記

マラウイ湖の魚は大洋の夢を見るか

美味しい魚の不都合な真実。

5月初旬、旅行で隣国タンザニアを訪れました。

マラウイとタンザニア、同じ東アフリカの国ですが国の発展度や観光知名度は全くと言っていいほど違います。

タンザニアの経済中心都市ダルエスサラムは高層ビルが建ち並ぶ大都会、

the アフリカという野生動物と広大な景色を見れるセレンゲティなどの国立公園、煌びやかな海辺のリゾート地ザンジバル、さらにアフリカ最高峰のキリマンジャロを有します。

経済でも観光でもマラウイが勝てる要素はないといっても過言ではなく、

「アフリカに行ってみたい!サファリで動物がみたい!」

といってゴールデンウィークにわざわざ日本から高い航空券代を払って来ようとしてくれた友達にマラウイだけを案内するのは忍びなく、今回一緒にタンザニアでサファリツアーを楽しもうということになったのでした。

さて、そのタンザニア旅行が楽しかったかどうかなんてまさに愚問。

もちろんめちゃくちゃ楽しかったですよ!!!

国内第七くらいの地方都市なのにマラウイの首都を凌ぐ規模の観光都市モシでは可愛いサンダルやお土産物をゲットしてホクホク。

サファリへの二泊三日のツアーは同じ地球上とは思えない圧倒的な景色と数メートル先をゾウやライオンが歩く迫力に酔いしれ、泊まったロッジやキャンプ場はお湯が出て料理も美味しく、特にマラウイから来た私は

「タンザニア最高!」

と叫びたい気分でした。

ただタンザニアの魅力を語るのはまた今度にしておきましょう。


前置きが長くなりましたが、実はタンザニアに行ったことで見つけた任国マラウイの良さがあるのです。
治安の良さ、英語が通じるというのは今までにも知っていたマラウイの良さです。

が、そこではなく、話はタンザニアのサファリキャンプ場で出てきた食事に遡ります。

夜ご飯はビュッフェ形式で、肉、魚、米、野菜などバリエーション豊かな品から好きな物を何でも好きなだけ食べれました。
その中で特に美味しかったのが白身魚のフライです。
マラウイでもマラウイ湖で獲れた魚は食べれますが骨が多かったり小さかったりとそれほど何回も食べたくなるものではありません。
でもタンザニアで食べたその魚は白身で身は甘く骨も少なく、思わずおかわりするくらい美味しかったのです。
海があるタンザニアのことだから海で獲れた魚なのかと思って聞いてみるとビクトリア湖で獲れたナイルパーチという名前とのこと。

同じような湖からこんな美味しい魚が穫れるの?
マラウイ湖にナイルパーチなんていないよ。

やっぱタンザニアは…以下略
何でマラウイには…以下略

しかし帰国後たまたま読んでいた本で見つけたナイルパーチの実態。
それは何も知らずに美味しい!マラウイでも獲れたらいいのに!と思っていた私の考えを一瞬で打ちのめす衝撃の事実でした。

ナイルパーチは元々ビクトリア湖にいた魚ではありませんでした。
ビクトリア湖は元々400種を超える固有種が生息し、「ダーウィンの箱庭」と呼ばれるほど豊かな生態系が育まれた湖でした。
主産業は漁業。
産業というよりも自給自足の地元民たちが漁をしていました。
この湖が変貌するのは1954年 、ナイルパ ーチが食用として湖に放流されてから。
肉食のナイルパーチは固有種の小魚を食い尽くし 、ヴィクトリア湖の生態系は壊滅的な打撃を受けました 。
高値で輸出されるナイルパ ーチを求めて多くの漁民が湖に殺到し、水産工場も建設されましたがナイルパーチの切り身は地元の人間には高くて手を出せるものではなく、さらに今まで食べていた固有種はナイルパーチに食い荒らされたため地元漁師の漁獲高は大幅に激減したらしいのです。

そうまでして得たナイルパーチ市場。
国を代表する一大産業になり、ビクトリア湖に富をもたらしたことも確かでしょう。
しかし、最近はナイルパーチの漁獲量も激減しているらしいのです。

原因は水質汚染。
ナイルパーチ捕獲を目的に沿岸や湖内の島に住み着いた漁民たちが増えたことで汚水が垂れ流しになっていること、さらにかつて湖に生息し、藻やプランクトンを食べていた固有種の魚たちがナイルパーチに絶滅させられたことで藻やプランクトンが異常増殖し、湖の環境を悪化させているのです。

アフリカにこんな美味しい魚が!

と感動したナイルパーチでしたが、こんな真実が隠されていたのはショックでした。

とゆうか何も知らずに、

「何でマラウイにこの魚がいないの!」
と思っていた自分がショックでした。

もちろん私はビクトリア湖にいって実際に現場を見た訳ではないので、ナイルパーチが悪役だとか悲劇だけが起きていると言い切ることはできません。

ただ、現金を手に入れることが目的の商業主義的グローバル化が、かけがえのない生態系を壊している現象が起こっているのは確かなのではないでしょうか。

私たち外国人がついつい考えてしまう、儲かれば良い、便利ならば良い、という考えが地元の何かを壊してしまうこともあるのではないでしょうか。

と同時に頭に浮かんだのがマラウイ湖。
地元の漁師が獲った魚を地元で売って地元の人が食べる昔から変わらない日常。
マラウイではそれがまだ続いています。

マラウイ湖について生物多様性が何ちゃらとガイドブックで読んだ時には、
「まぁアフリカだもんね。」
としか思わず、漁の風景を見ていた時には、
「手漕ぎの船と手投げの網をまだ使ってるの?何て非効率な!」

とすら思ってしまっていたマラウイ湖の光景がふいにとても貴重なものに思えて来ました。

ただグローバル化を礼讃するのではなく、自然の多様性を守りながら昔から続けられているものも大切にしたい、マラウイ湖の普通の日常がこれからもずっと続いて欲しいなと願うのでした。

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