JICA海外協力隊の世界日記

マラウイ湖の魚は大洋の夢を見るか

伝統舞踊、グレワムクルが見たい!

太陽が照り付ける真っ赤な大地、鮮やかな色彩の衣装をまとったダンサーたちが太鼓の音に合わせて踊る。

(写真:exploremalawiより)

マラウイには無形文化財に登録された伝統的な踊りが二つあります。その一つがチェワ族が行うグレワムクルという仮面舞踊です。7月の収穫期や結婚式、葬式の時など、木や藁で作ったマスクを被り踊り手たちが舞います。

その踊りをこの目で見てみたい。それがマラウイに来てからの密かな願いでした。しかし観光が全く盛んではないマラウイ。観光ガイドブックにも、○○地方の村でよく踊られている、との記載しかありません。グレワムクルのお面が展示されていた博物館のガイドさんに聞くと、「この博物館に来て踊ってくれるよ。18000MK(約5000円)で。」と。

(。。。違う。用意された踊りじゃなくて本物の儀式を見たいの。)

他の協力隊員でも実際に見たって人は余りいなかったので、やっぱり見るのは難しいのかなと思いつつも、私が働いている病院の同僚たちに、

「ねぇ。グレワムクルってどこで見れるの?」と聞いてみました。

何故か返って来た反応が爆笑。「何でそんなの知ってるんだ。何でそんなの見たいんだ。」

「伝統的な文化でしょ。見たいのよ。」と力説すると、

「そこらへんの村に行って頼めば見れるよ。」

(。。。アバウト過ぎる。外国人ってだけで目立つしそれは大変やろ。。。)

すると義肢装具を作る同僚が一言。「この近くでいつでもやってるよ。今度連れてってあげるよ。」

(ん?いつでも?この近く?一応首都の市街地よ?)

一週間後。午前中の業務時間、予想もしていなかった時に

よし。グレワムクル見に行くぞ!」

同僚からいきなり声がかかりました。

(いや、いきなり過ぎるし。てゆうか今日カメラ持って来てない。)

他の同僚や上司も、また爆笑しながら「行ってこい。写真見せてな。」と。この緩さはさすがマラウイ。

リハビリ室を離れ、病院の裏庭みたいなところへ向かいます。すると太鼓の音が聞こえて来ました。

(いや、まさか病院内で。。)

いやそのまさか。病院内で踊っていたんです

でも踊っているのは普段着の女性たち。仮面舞踊グレワムクルのイメージと違う。。

(うーん。仮面付けてないし、これはグレワムクルやないんじゃないか?)

疑問が生まれつつもしばらく見ていると、女性たちの踊りが終わり、仮面を被った男性たちが出てきました。

太鼓の奏者も一段と気合をいれて叩き出します。

そして舞手たちが太鼓の音に合わせて全身を使って踊り始めました。

これがグレワムクルだと同僚がささやいてくれました。

今日はお葬式で死者の同郷人が集まって踊っているんだと。

(そっか。それで病院でよくあるんだ。。。)

それにしてもお葬式と言われるまで気づかないくらい、泣いたり悲しんだりという粛々とした雰囲気は全くありませんでした。

グレワムクル。文化遺産と言われるから何かすごく特別なものを想像していましたが、普通に人々の生活の中にあるものなのだなと。それが逆に新鮮でした。

ただ周りで同じように見ていたマラウイ人たちも写真を撮っていたので、やはり都会の人にとっては少し珍しいのかな。私もカメラは持って来ていなかったものの携帯で何とか写真は撮れました。

グレワムクルは村の男性たちの秘密結社のようなコミュニティで代々受け継がれていくそうです。

19世紀にマラウイを統治した宣教師たちはキリスト教の普及とともに伝統的慣習を禁止しました。実際宗教の方は見事に塗り替えられ、今やほとんどのマラウイ国民がキリスト教徒です。

ただその歴史の中でグレワムクルという舞踊は途切れることなく受け継がれてきて、現代に首都の病院で踊られていました。

思いがけない形でしたが、昔から続く慣習の現場をこの目で見れたのはとても良い経験でした。

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