2024/06/20 Thu
文化
羊は天国へ
イスラム教徒にとって非常に重要な宗教的行事「羊犠牲祭」が行われました。犠牲祭の数日前から自宅で羊を飼い始めるので、あちこちからグエエと羊の鳴き声が聞こえてきてしばらく睡眠に悩まされました・・(メエエとは鳴きません。ドスの効いたグエエです。)
羊のお値段は重さによって変わってきますが、おおよそ教員の月給以上になります(!)
ラマダンの頃から羊犠牲祭を楽しみにしている子供たちにレクチャーを受けてきました。
「パパが“ビスミンラー”と言って、首を一気に切るんだ!!」「頭と足が最高に美味しいの♡」「1ヶ月朝昼晩ひたすら羊を食べる日々が続くから飽きちゃうよ~」などなど。
※ビスミンラー:神のもとで何かを始めるときに言う言葉。車の運転をする前に、卵を割る前に、食事をする前に、いろいろな場面でよく聞きます。
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犠牲祭当日。あらかたの準備を終えると、男性陣が羊を横倒しにして、大きなナイフをサクッと首元に入れました。頸動脈を切られたら一瞬でパタリといってしまうものと思っていましたが、ドクドクと血を流しながらもジタバタともがく姿に思わず涙がこぼれました。
「なんで泣いてるの!あなただっていつもこうして犠牲になった肉を食べるでしょう?!これはノーマルなことよ。泣き止みなさい!!!」と怒られたり、「あなたはとても繊細なのね。これ以上見なくていいわ、部屋に戻りなさい。」と慰められたりしながら、「自分の目で見ておきたい!!!」と羊が犠牲になる一連の場面を見届けました。
出血が落ち着いた後は、頭を落として足を折り(ここでは思わず呻き声・・見ているだけで痛い・・)、身体に空気を入れてパンパンに膨らませ、吊り下げて丁寧に皮を剥がし、内臓を取り除き、と慣れた様子でテキパキと工程が進んでいきました。女性陣は回収した内臓を手際よく綺麗にして、すぐに食べる準備が始まります。
普段から町中のあちこちにぶら下がっている生肉を見慣れているつもりではありましたが、動物をいただくまでの過程をここまでくっきりと見たことはなかったので全てが新鮮で刺激強めでした。そして人間は他の生き物の犠牲の上で成り立っていることを実感することができました。
さっきまでグエエと元気に鳴いていた羊を口にするのはなんだか不思議な気持ちです。
体内の血が出せる頸動脈を切るやり方がベストで、首を折ったり絞めたりするやり方では体内に血が残ってしまいよくないそうです。そして犠牲となった羊は天国に行けるそうです。「羊は最期笑っていたでしょう?」と言われ、同じものを見ていても見え方は全然違うことを感じました。
生きること・食べることをなんだかいろいろと考えさせられ、イスラム圏でこうして生活させてもらっているからには、もっともっと知りたいこと・知らないといけないことがあるなあと改めて身が引き締まった1日でした。
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