2020/05/26 Tue
文化 生活
任地の生活~家庭・買い物編
私の任地、ホンジュラスのエル・パライソ県グイノペ市にある一般家庭の生活の様子について、お伝えします。ちなみに、スペイン語のエル・パライソ(El Paraíso)とは、パラダイス≒天国という意味です。
写真は各家庭にある薪の釜土です。最近は電気やガスコンロがある家庭も多いのですが、伝統的な釜土は停電のときに大活躍します。私もガスが切れたときに、大家さんの自宅の釜土を急きょ貸してもらい、釜土調理に挑戦しました。火加減が難しいのですが、火を見ていると、とても癒されました。
ホンジュラスは北緯15度位のところに位置していて、フィリピンと同じくらいです。ですので、基本的には暑い国ですが、南北アメリカ大陸を繋ぐ地峡にあり山岳国です。カリブ海側と太平洋側の平野部以外は標高1,000m前後の地域が沢山あります。
私の任地も標高が高い涼しいところですが、ほとんどの家庭に温水シャワーはありません。1年で一番寒い12月、1月の平均気温は15度位ですが、住民はまだ薄暗い朝5時頃に起きて水シャワーを浴びて出勤・通学しています。ヘアドライヤーを使う習慣がなく、冬場は髪が濡れたままだと寒いので、女性はニット帽をよくかぶっています。また、バイクが性別問わず主な交通手段なので、手袋もしますし、男性はゴム長靴を防寒で履いています。
任地には、アメリカからの輸入古着を販売している衣料店がいくつかあります。毛糸の帽子が置いてあったので、ホンジュラス人もかぶるんだな、と少し意外に思っていましたが、帽子の需要の理由が後から分かりました。
私はさすがに水シャワーでは風邪をひきそうだと思ったので、アパートの部屋に温水シャワーの機械を付けてもらいました。ところが、基本的に温水シャワーを設置しない想定の部屋なので、許容電流をすぐに超えて、ある日ブレーカーが燃えてしまいました。その頃は11月でこれから本格的に寒くなる時期に水シャワーになるのか…と心構えましたが、すぐに修理してもらい事なきを得ました。
修理中の様子
途上国の多くで共通しているかと思いますが、電気系、水道系、家そのものの建築など何でもできる技術屋さんがいます。部品が手元にあれば修理してくれるので、日本のようにガス、電気、ネット…とそれぞれに手配するよりも彼らに頼んだ方が対応は早いかも知れません。
任地グイノペにはスーパーマーケットやレストラン、カフェ、銀行がありません。銀行はバスで1時間の隣町か首都に行きます。ホンジュラスはキリスト教の国なのでお酒は飲めますが、任地では売っているところは限られています。農産物は主にお隣のエルサルバドルなどに輸出向けに栽培されていて、トマトや玉ねぎを山盛りに積んだトラックが走っているのをよく見かけます。
グイノペにある農業NGOが市域のコミュニティで農業指導をしてから、質の良い安全な野菜を栽培できるようになり、農家さん自ら市中心部に販売に来るようになって、住民は良い野菜が安く買えるようになったそうです。Mercado Verde(メルカードヴェルデ:緑の市場)といって週2回販売しています(写真)。野菜だけでなく、コミュニティの女性グループの手作り石鹸などもあり、私も毎回楽しみにして買い物していました。
石鹸1個20Lps.(約100円)。シャンプーなどの生活用品が高いホンジュラスでは安くて安心な超オススメの一品です。
野菜以外の食品、洗剤などの生活用品、ガソリンは都心部よりも少し高く販売されています。それでも首都から近いこともあり、不定期に訪問販売のトラックが来て、割安で購入できます。太平洋側で養殖した海老などの海鮮を売るトラックもやってきます。
そんな風に色々と買い物は出来るのですが、私はホンジュラス料理以外の食材や活動に必要なものなどは、首都や隣町に行ったときに買い出しをしていました。日本から持ってきたアウトドア用の丈夫な保冷バッグが役にたちました。今後、隊員が再派遣になったときに新たに派遣される隊員の方には、保冷バッグを持っていくことをお勧めします!
多くのホンジュラスの地方の町の家庭には洗濯機がありません。代わりに「pila(ピラ)」という水場があります。コンクリートで作った大きな浴槽のような水を貯める場所と洗い物をする為のギザギザの台がついています。立って洗い物をするのに丁度良い高さに作られていて、私は結構気に入っていました。手洗いだと洗濯している時間が分からなくなるので、音楽を聴きながら1曲4~5分で計算して、揉み洗いをしていました。シャワーが無い家庭もあり、ピラの水を桶で被る「ピラ浴」をしている隊員もいました。
ホンジュラスの南西部は乾燥して雨が少ない地域です。乾季は断水することも多く、ピラは生活用水を貯めておくのに重要な役割を果たします。一方で、いつも水があるので蚊の温床でもあります。ホンジュラスでは、新型コロナウイルス感染症問題の以前からデング熱の流行も深刻な問題であり、保健所主導でピラを定期的に消毒するなどの対策が実施されています。活動の一環で保健所で公衆衛生啓発を行っていましたが、ピラは地域の生活文化なので無くすことは出来ません。感染症とどのように向き合っていくのか、ピラから考えさせられました。
水源林となる地域
グイノペの住民はよく、山の中の町なので水源林があり水が豊富で、食料もある程度自給できること、そして年間通じた爽やかな気候をいつも自慢げに語ります。大きな町のように、スーパーマーケット、レストラン、カフェ、銀行があることはとても便利ですが、真の豊かな生活は、自然の豊かさを享受できることだと任地に1年間住んで実感するようになりました。雨が降ったら「Qué rico!(ケ・リコ):素晴らしい、嬉しい」と言う任地の人達の気持ちがよく分かり、今、日本にいても雨の日に心の中で「ケ・リコ」と呟いています。
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