ジャマイカよ、めざせコミュニティ防災 2016-2018(笹森隊員は帰国しました。)

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笹森 賢一
(愛知県)

ボランティア/職種
青年海外協力隊
防災・災害対策
派遣国
中南米
ジャマイカ セント・アン教区 セント・アンズ・ベイ
一言メッセージ
ジャマイカ北部のセント・アン教区で、コミュニティ防災(Community-Based Disaster Risk Management:CBDRM)に取り組む様子を報告します。

 

災害対応能力強化月間

2018.02.16

人 活動

1月から3月にかけて、セント・アン教区内で、災害対応能力強化のための訓練や研修を実施しています。
11月以降、洪水や地震がジャマイカの国内外で起こったためか、参加者のみなさんの真剣に取り組む姿に、運営側のこちらも勉強させてもらうよい機会をいただくことができました。


ここ数か月、ジャマイカでは災害対応に対する意識が高まっています。
2017年11月にジャマイカ第二の都市であるモンテゴ・ベイで集中豪雨が続いた結果、何回目かの大雨のため都市の排水機能が追いつかなくなり、洪水が起きました。
私の任地であるセント・アン教区でも1月の上旬に断続的に大雨が降り、地滑りが起こって土砂が道路を塞ぎました。
また、1月9日の深夜には、ジャマイカとホンジュラスの間のカリブ海上でマグニチュード7.6の地震が発生しました。
地震の震源地は幸いなことに遠かったのですが、マグニチュードの大きさからか、ジャマイカでも政府機関から津波接近の警告が発令される事態になりました。
後から振り帰ってみれば、想定される津波の高さは30cmから1mまでで、避難の必要性がないのは明らかでした。
しかしながら、地震が起きたのが深夜だったことや津波についての正しい理解が普及していなかったことから、一部の人は過剰に反応し、また別の一部の人たちは朝が来るまで政府からの発令を知らずにいたというような状況が発生しました。


「洪水も、地震も、それに津波も来るんだ。
 私たちは災害をよりよく理解し、しっかり防災に取り組まなくちゃ」


一連の出来事以降、任地の地域住民のみなさんが一斉にそう言い出したのを受けて、<鉄は熱いうちに…>と言わんばかりに、防災・災害対策関連の訓練や研修を実施しています。


直近で言えば、私自身が最も主体的に企画・運営に携わったのは、小学校での地震・津波防災訓練でした。
舞台は先月の記事でも触れた町、ディスカバリー・ベイの小学校。
他のJICAボランティアに実施してもらったプレゼンテーションの延長で、訓練を実施してみようということになりました。


「今回は笹森が小学校の校長先生と話し合って、訓練を計画するように。
 当日は同席はするが、基本的には笹森だけで訓練をやりきること」


私の配属先での上司からこう言われて、嬉しさ半分、驚き半分。
ジャマイカに着てから1年ちょっとが経ち、上司に任せてもらえた初めての訓練。
自然と準備に熱も入り、打ち合わせのために小学校に通うこと複数回。
訓練当日の3日前に準備は整いましたが、初めての事でどことなく不安でした。
そんな私の気持ちを察してくれたのか、訓練実施の前日に、上司が任地の山側にある小学校に連れて行って予行演習がてら地震に対する防災訓練の一部を私に任せてくれました。
一度予行演習をしておくと、何事もスムーズにいくものです。
実施日である1月末日の朝、ディスカバリー・ベイの小学校で上司と合流した時には、すっかり不安は消えていました。

最初から最後まで私だけでやるのだと思っていたので、訓練開始と同時に上司が生徒さんに津波の危険性を詳しく説明し始めて、なかなかマイクを離さない姿に目が点になったのはご愛嬌。
地震と津波の起こるメカニズムのわかりやすい説明や、地震が起きている最中の身の守り方からその後の避難、そして津波がやってくるとわかった後の振る舞い方まで、上司の理解と協力もあり思い描いていたものに近い形で訓練を実施することができました。
個人的には、避難した人数の確認や避難後の誘導といった面で、災害時の対応は先生方に依るところが大きいことを訓練の実施を通して伝えられたのが良かったと感じています。
小学校の校長先生から学校用の防災対応計画を作るのを手伝ってほしいという依頼もいただくことができたのも大きな収穫でした。

ディスカバリー・ベイで地震・津波防災訓練を実施しているのと同じ日、セント・アン教区事務所や関係各機関の職員さん、そして一部の地域住民有志を対象に、無線通信研修が行われました。


地震・津波防災訓練が終わり、会場であるセント・アン教区事務所のあるセント・アンズ・ベイへ急いで移動すると、どうにか午後のプログラムに間に合いました。


上の写真は無線機を持って屋外を移動しながら、適宜屋内にある災害対策本部と連絡する練習を行っているところを撮影したもの。
写っているお二人はMunicipal Policeと呼ばれるセント・アン教区事務所付の警察官の方で、普段は主に教区事務所内での要人の警護と、教区内の行政関連の法務執行を担当しておられます。


Municipal Policeのみなさんは、災害発生時には教区事務所の職員さんと一緒に災害対応に当たることになっており、昨年5月に山間部で床上浸水の被害が出た際にも、私の上司と一緒に状況確認のため現地に出張されています。

普段は笑顔を絶やさず、私を見かけると気遣って声をかけてくれるお二人も、この日は要所要所で真剣な表情を覗かせながら、集中して研修に参加されていたのが印象的でした。

無線通信訓練を実施してからしばらくして、今度はセント・アン教区の教会で救急法の研修を実施しました。


講師役にお迎えしたのは、セント・アンズ・ベイ病院のMichael Barnettさん。
熱意を持って専門的な知識を伝えようとするBarnettさんは受講生の注意をあっさりと引きつけて、重要なポイントを適確に教えていきます。
興味の赴くままに質問をされる参加者のみなさんをさばくのもお手の物。
2日間の救急法研修の後半では三角巾を使った包帯法と心肺蘇生法の実技を勉強したのですが、その雰囲気は終始和やかなものでした。


写真は、講師役のBarnettさんを相手に、セント・アン教区事務所の地域向け広報担当のKaydian Hartyさんが、三角巾を使った包帯法を練習する様子です。
Hartyさんは何年も前に以前の職場で一度救急法を習ったきりということでしたが、器用に三角巾を使って止血や固定をこなしておられました。

また、冒頭で紹介したように、災害に対する取り組み方を考えさせられる出来事が続いたせいか、この研修中にも参加者の方々から「うちの地域・学校でも災害対応訓練を実施したいので知恵を貸してほしい」という依頼を何件か受けました。
私が赴任してから1年4カ月間で、最も災害対応に対する意識が高い状態にあることを肌で実感できた研修となりました。


これらの研修は3月下旬まで継続して行われる予定です。
今後はIncident Command Systemと言われる非常時の指揮命令系統習熟訓練や、地域住民の方を対象とした捜索救難訓練が予定されています。


今年も気が付けば始まってから一月と半分が過ぎています。

そして私の任期もあと8ヶ月で、全体の3分の1を切りました。

いつ来るかわからない地震・津波に対してはもちろんのこと、半年後にはやってくるハリケーンの季節の前に、任地の防災対応能力が向上するのに少しでも貢献すべく、残された時間で精一杯、JICAボランティアとしての活動に取り組むつもりです。

参考:

Jamaica Gleaner -Heavy Rains Lash MoBay Causing Major Flooding

http://jamaica-gleaner.com/article/lead-stories/20171123/heavy-

rains-lash-mobay-causing-major-flooding

(2018年2月15日閲覧)

中米ホンジュラスでM7.6の地震、周辺諸国に津波警報

https://www.cnn.co.jp/world/35112964.html

(2018年2月14日閲覧)