JICA海外協力隊の世界日記

ブータン便り

住居公開!ブータン現代アパートの3Dモデルを作成しました [ 前編 ]

(↑私が住んでいるアパート一室の平面パース:細かい部分の不正確さはご容赦ください)

住居公開!ブータン現代アパートの3Dモデルを作成しました [ 前編 ]

BGM

みなさん、こんにちは。建築隊員のyutaです。
最近の活動やそれ以外の諸々で更新が止まっていました。というのも隊員は主となる活動以外にもやろうと思えばいろんな事に着手できますし、逆にやり過ぎると体調を崩したりして、日本とは異なる楽しみ・悩みも多いのです。今回はちょっと無理しすぎました。。。でも後悔はありません、むしろ充実していました。

さて、私の記事ではブータンの文化に関わる様々な事柄について紹介してきました。
前回の記事:みなさんはリレーマラソンに参加したことはありますか? | ブータン便り(ブータン事務所) | JICA海外協力隊の世界日記
活動に関する内容は守秘義務等で発信しにくい部分もありますが、少し建築活動に即した内容もチラホラ紹介できればと思います!

今回は私の住むブータンの現代のアパートについて、写真・図面・3Dモデルを通して解説したいと思います。
*3Dや図面は実際の住居とはやや異なります。あくまでイメージですので、参考としてご理解いただければと思います。

(↑建物外観:ベランダや窓の突出物が上の階につれて大きくなってます)

このアパートは2023年竣工 鉄筋コンクリート造 地下1階地上5階の建築物です。
写真の通り、通りから見える窓には伝統装飾が施されていて、ベランダも煌びやかなペインティング・意匠が目立ちます。
ちなみに窓の突出は「ラブセ(Rabsel)」と呼ばれます。

日本ではなかなか見られない形式ですね、しかしブータンでは当たり前の装飾で、街中、いや、ブータン全土の建物がこのような形に即しています。それは「Bhutanese Architecture Guidelines」というブータンの建築基準法にあたる規制によって、このような意匠が建物に施され、景観が統一されているのです(正確には県のレギュレーションや市のデザインコード、その他条例や規則などに準拠して建築許可がおろされるので、ブータンの建築・景観は幾人もの厳しい審査によって守られているのです)。

これら規則はインターネットで公開されているので、興味がある方は実際に見てみてください。細かい部分に名前が付けられていて、寸法や形状もおおよそ決まっています。非常に面白いです。(リンクは諸事情により省略します)

「ブータンらしい景観を維持する」ことは一般市民の方々にも浸透していて、話を聞いた方からは「平らな建物外観には美しさを感じない」、「必ず伝統装飾をつけてほしい」といった声もありました。これら装飾があることが当たり前となっていて、市民のプライド。国の文化を醸成する一つの要素でもあるように感じます。

(↑アパート側面と虹:なんともブータンらしさが漂っています)

ブータンの写真を見てみると、伝統意匠を施された建物のみで「ブータンだ」と気づくこともありますし、その建物を背景に伝統衣装の「ゴ」や「キラ」を着た方が写っていると、もはや他の国と間違われることはありませんね。

このように、この国“らしさ”というのは様々な条件下で分かるものであって、ひとえに簡単に作られたものではありません。その地域の文化や宗教、人々の意識によって成り立つもので、このブータンではそれに気づいた先人の方々が守り抜き、受け継いだ結果の壮観なブータンの景色が建ち現れているのです。素晴らしいことです。ブータン観光の人気の高さやリピーターが多いのも、こういった影の努力・みんなで景観を維持しようとする心があるからだろうと、私は感じています。

やや長くなってしまったので、アパートの中身の方は次回、紹介したいと思います。

それではまた!

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~ここからはニッチな方向け~

中には版築を想像した方もいるかもしれませんが、現在のブータンではRC造が主流です。特に首都ティンプーではRC造の建設がいたるところで行われ続けています。

ここからは私の意見ではありますが、ル・コルビュジエが唱えた「ドミノ・システム」がブータンの伝統建築にマッチし、特に近代建築の5原則の中の「自由なファサード」が有効でした。というのもブータンはインドと国交が深く、通貨:ニュルタムのレートもインドルピーと一緒です。そんな中、コルビュジエの思考の影響を受けたインドから建築工法も輸入され、近代のRC造とブータンの伝統意匠の融合がなされたのだと思います。建設コストはもちろんのこと、ラブセ(窓装飾)やジャムト(置き屋根)、宗教に関連するペインティングのしやすさ、現代の1階が商業化する都市型のアパート形式、半ピロティ化したGL(グランドレベル)など、そのほか様々な点においてドミノ・システムはブータン建築にとって合理的でした。

この形式が広く採用され続けていますが、問題もあります。施工者がインド、ネパール系の人々が大半なので、建築技術の継承がなされているとは言い難いです。文化は職人の手に宿るといった側面もありますので、ブータンの建築技術がブータン人に継承されていない、ともいえるでしょう。細かい法律や規則で制度化していても実際に手を動かす人の技術が場当たり的であると、一見“らしさ”を保てても、本物のブータンは離散してしまうのではないでしょうか?

文化的側面は私の専門分野から逸れてしまうので、深い言及はできませんが、素晴らしい景観の裏側には、まだまだ解決されていない問題はたくさんありそうです。これはブータンだけでなく、日本もそうですね、職人不足は建築だけでなく、文化にも影響していきますので、専門だけでなく、幅広い視野で物事を見つめないといけないな、と強く感じています。

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